ポッキーの日、とはご存知だろうか。
それはプリッツにチョコレートをかけたお菓子の語呂合わせの日である。
日本人なら誰だって知っている。誰だって好きであろうお菓子。私はそのお菓子のようなものをお皿にのせて恋人の部屋の前で立ち尽くしていた。
細いクッキー生地のプリッツにつやつやのチョコレートがかけられた一品。これは以前ネロに話したのを覚えていてくれて、作ってくれたお菓子だ。名付けてほぼポッキー。限りなくポッキーに近くて私はとても喜んで、ネロに感謝を告げた。
そして意気揚々と恋人のもとへ共有しに部屋の前まで来たのだけれど。
「晶?」
カチャリ、と音を立てて目の前の扉が開かれる。そこにはオリーブブラウンのふわふわの髪の恋人、ファウストが寝巻きを見に纏って顔を出した。
私は彼の寝巻き姿が好きなのだ。なんだか心を開いてくれているような気がして。心の内側に入る許可をもらえているような気がするのは私の気のせいなのだろうか。
こんばんは、とだけ口にして黙る私にファウストは首を傾げながら自室へ入るように促してくる。さりげなく私の腰に手を回したりして。ずるい、恋人。
「あ、あの。ネロが私の国のお菓子を作ってくれて、一緒にどうですか。」
もう、夜ですけど……なんて逃げ道を作りながら問いかける。私の顔はきっと不自然なぐらい赤く染まっているのだろう。ただ食べるのだけならこんな反応はしない。
……思い出してしまったのだ。私の国である日本には『ポッキーゲーム』というなかなかに恥ずかしい遊びがあることを。
謎に憧れがあるそのゲームをせっかく恋人ができたのだから、と誘おうとしたけれど気恥ずかしい。
そんな私の下心を知らずにファウストは「ネロの手作り?」と言ってポッキーを口に運んだ。
「うん、美味しい。」
「良かったです……」
「きみはよく食べていたの?」
「はい。どこでも売っているお菓子で……」
「ふぅん。」
なんて会話をしながらベッドの上に横並びになってポッキーを食べる姿はシュールだろう。
「それで、きみはどうしてそんなに緊張してるの?」
「え!?」
紫水晶の瞳が心配事をとりのぞくように私を捉える。
大人の男性らしい節くれだった指先が私の頬をなぞって、包み込む。赤くなってるけど、なんて瞳を細められて余計に私の体温が上昇した気がした。
私が言うまで解放しないぞ、というような雰囲気に負けて小さく口を開く。
「あの、私の世界にはポッキーゲームってあそひがあって。」
「ポッキーゲーム?」
「はい。両端から食べ進めるってやつなんですけど。」
「……」
「やってみませんか?」
ほぼやけくそでゲームの説明をする。正直これだけじゃ意味がわからないだろう。ま
「……この短い棒で?」
「……はい。」
「きみはこのゲームをしたことある?」
「……ないですね。ファウストが初めてです。」
「そう、ならいい。……しよう。」
「いいんですか?」