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    しらたき

    @shiroguno

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    しらたき

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    この前のやつのレムナン視点
    前のやつを読んでからの方がいい気がするけどこっちだけでも多分読めると思います多分
    レム→ラキみたいな感じになりました… レムナンの想いが重いです

    何でも許せる人向け
    暴力表現あり

    一目見た瞬間、今までにない胸のざわめきを覚えた。こんなに心惹かれる人間がこの世にいたなんて。堂々と振る舞う姿。臆することなく自分の意見を貫き通そうとするその姿勢。僕には眩しすぎる人。自分にはないものを沢山持っていた。
    この人は消したくない。理屈なんて知らない。ずっとそばに置いておきたい。だから嘘をついた。2人で生き残るために。

    「船の次元振動センサーを集中させれば、固有の次元波を…… 。うん。グノーシアの個人検知、できますね。あ、僕はその……エンジニア、です」


    次の日、議論が始まってすぐに、ラキオさんは人間だったと報告した。少しでも他の人から疑いの目を向けられないように。エンジニアを騙っていることがバレないように次元波の測定結果だなんてそれらしく適当なことを言ってしまったけど、機械に関しては人一倍詳しい自信は…ある。間違ってはいないはず。大丈夫、バレてなさそうだ。
    そう思った矢先、奇妙な視線を感じた。その方向をチラリと見やる。ラキオさんだ…
    どうして?僕は貴方が人間であるという証言をしただけなのに。嘘だけど、いや、僕がグノーシアなんだからラキオさんが人間であるということは元から知っている。だから嘘ではない。じゃあなんで。なんでそんな目で僕のことを見るんだ。嫌だ…嫌だ…そんな、異物を見るような目で、僕を見ないで……



    グノーシアを排除するための議論中、僕は一切嘘をつかないことにした。偽物のエンジニアだとバレないよう、仲間を裏切るような真似もした。幸い本物は3日目に投票で選ばれ、コールドスリープすることになった。最後にラキオさんは人間だった報告してくれたお陰でラキオさんが凍らされる心配はなくなった。
    それからというもの、僕はラキオさん以外の人から疑われることはなくなった。特にあの人は、最初からずっと僕のことを庇ってくれていた。そのおかげか、僕の報告を中心にして議論が進んでいくことになった。全てが上手くいきすぎて、胸の鼓動の高まりが抑えられなかった。
    でも、あの視線だけはずっと付き纏って消えなかった。お前のことなんて一切信用していない。お前が紛い物なんだろう。正体を現せ。そんな目でじっと見つめてくる。僕の全てを見透かそうとしてくるその目。気分が悪くなってくる。僕が何かを話すたび、僕が何か行動を起こすたび、疑わしいと訴えかけてくる。ああ嫌だ。不快だ。僕は貴方のことを思って、貴方だけは生かしたいと思って、こんなに頑張っているのに。酷い。嫌だ。やめてくれ。やめろ……やめろやめろやめろ…っ!



    ようやく、この船の中で2人きりになることができた。やっと、あの人を僕のものにできる。その前に謝ってもらわないと。だって僕の方がここでは上なんだから。どれだけあの人が凄く素晴らしい人でも、グノーシアである僕の方がここでは優れているんだから。あんな態度をとったこと、あんな目線を向けてきたこと、全部謝ってもらわないと気が済まない。感情が昂ってくるのを感じる。喜びと怒りが入り混じって、ふつふつと湧いてくる。早く、会いたい。

    ラキオさんを探すため、廊下を歩く。はやる気持ちを抑えるためにあえてゆっくり、ゆっくりと歩を進める。しばらく歩くとシャワールームの方へ向かおうとしているラキオさんの姿が見えた。やっとちゃんと話ができる。心臓の鼓動が早まる。気持ちを落ち着かせないと。あの人と目が合いそうになった瞬間、思わず下を向いてしまった。今の感情を、悟られたくなかったから。


    「僕も他の奴らと同じように消すつもりなンだろう?さっさとしなよ」

    不意に声をかけられ、ふと顔を上げる。ラキオさんは深くため息をついた後、腕を組んだ姿勢のまま僕を睨みつけてきた。消される覚悟を決め切ったような、堂々とした態度。どうして、もうここで終わるかもしれないのにそんな態度が取れるんだ。どうして、グノーシアの僕を目の前にしても怯えを一切見せないんだ。羨ましい。腹立たしい。

    「いいえ、ラキオさんは、消しません。だって…まだ謝ってもらってない、ですから」

    そう言い放つと、ラキオさんはいかにもその返答が不服だという顔で僕を見つめてきた。どうして?消さないって言っているのに。僕に今までのこと全部詫びてくれさえすれば、全部許そうとしているのに。
    理解できないという顔のまま、目の前の口が開かれる。

    「は?謝るってなンのこと?君の方こそ僕に謝るべきじゃない?だいたい…」

    言葉を待つより先に、手が出ていた。乾いた音が廊下に響く。何を言っているんだ?僕の方が謝るべきだって?冗談じゃない。床にへたり込んでしまったラキオさんと目が合う。殴られた頬を手で抑えながら、まだ何か言い返してやろうという意思を感じる顔をしている。不快な目。胸の内がざわめく。よくこの状況で僕に逆らえるな。

    「誰が口答えしていい…なんて、言いましたか……?次にやったら…その前歯、一本ずつ折りますからね」

    ギリ、と歯軋りする音が聞こえた。やっぱりこの人は賢い人だ。冗談でこんなことを言うわけがないと一瞬でわかってくれたんだ。本当に一本折って反応を見てみてもよかったかな、とも思ったが、少しだけ気分が良くなったのでそのまま本題に入ることにした。

    「…貴方、議論中ずっと僕のこと…見てましたよね。心の底から…信用できないって目で、ずっと……ずっと!僕、凄く嫌だったんですよ…?だから謝ってほしいんです」

    あの不信感溢れる視線も、全てを否定してくるかのような態度も。全部謝ってもらえれば、全部許すことができる。

    けれど、僕の言葉を聞いてもラキオさんの態度は変わらない。むしろ、より一層不愉快極まりないという顔で睨みつけてくる。どうしてまだそんな目で見てくるんだ…?もしかして、僕のことを馬鹿にしているのか…?ずっと心の中で、僕のことを蔑んでいたのか……?だからあの時も、あの時も…ずっとずっとずっと…!

    「謝ってください。全部、不快だったんです。貴方のその態度も…その目も…っ!ずっと僕を侮ってきたことも!全部…全部全部ッ!さあ謝れッ!」

    感情が抑えられない。負の感情がどろどろと溢れてくる。気づけば目の前で立ち上がれずにいるそれを足蹴りにしていた。苦痛で顔が歪んでいる。いい気味だ。僕を侮ってきた罰だ。思わず笑みが溢れる。

    ここまでしても、それはまだ身体をこちらに向けて何か言いたげな目を向けてくる。どうせその態度から謝罪の言葉なんてものは出てこない。その口を開くな。今度は顔面を思い切り殴りつける。鼻から血が垂れている。それを拭うこともせず、反抗的な目で僕を見下してくる。気分が悪くなる。やめろ…嫌だ嫌だ…嫌だ…っ

    ………そうか、この人はまだ自分の立場をわかってないんだ。こんなに賢くて凄い人なのに。ああ、哀れだなぁ。それなら僕が、ちゃんと教えてあげないと。

    なんとか起きあがろうと惨めに足掻いているラキオさんを押さえつけ、馬乗りになる。そして何度も殴りつける。何度も、何度も。

    「や、やめ…… 、い"っ、…うぁ…… 、っ…」

    「ふふ…… 、あははは…っ、どうですか?わかりますよね?僕の方が上なんです!だって僕はグノーシアで!貴方の命は既に僕のものなんですから!さあ謝れ…っ早く謝れよ!!っはははっ!」

    殴りつける度に感情がぐちゃぐちゃになっていく。僕の下で弱々しく呻く声を聞くたび、嗜虐心がくすぐられる。もっとその声を聞きたい。拳に力がこもる。酷く興奮する。綺麗だった身体が、顔が、僕の手によって酷く、赤く、歪められていく。それでもまだ、その顔は美しく綺麗なままだった。

    どうしたらその口から謝罪の言葉を聞けるだろうか。こうやって立場の差を見せ続ければ、いつかは認めてくれるだろうか。苦しそうに呻く声を聞きながら、その中に許しを乞う言葉が表れるのをただただ待つ。ごめんなさい。悪かった。もう何でもいい…… 自分の否を認めてくれさえすれば、この胸につかえた不快な思いも消え去ってくれる…筈だ。
    その時、明確に意味を持つ言葉がその口から発せられたのを僕は聞き逃さなかった。


    「僕が謝る必要なンて、ない」


    掠れて聞き取りにくかったが、確かにそう言った。一瞬言葉の意味を理解することができなかった。言葉を脳内で反芻する。謝る必要なんてない…?どうして認められないんだ?貴方が全部悪いのに。こうなったのは全部貴方のせいなのに!…ああそうか、まだこの人は僕のことを…!許せない…許せない許せない許せない……っ 頭に血が上っていくのを感じる。感情の赴くまま、白く細い首に手を伸ばし、そのままギチギチと締め上げる。ラキオさんの体温が、温もりが、じんわりと掌に伝わってくる。

    「ぁ、…ぐ、るし…っ… 、は、……っ」

    ラキオさんは必死に僕の手を押しのけようともがいている。これで抵抗しているつもりなんだろうか。爪すら立ててこないなんて。
    下から聞こえる呻き声が小さくなっていく度、段々と頭が冷えてくる。そうだ、今無理矢理謝らせる必要はないんだ。時間ならたっぷりあるじゃないか。

    「はは… 強情、ですね。まだそんな目を僕に向けられる余裕があるなんて。本当に……謝る気がないんですね」

    未だ輝きの消えないその目を見つめながら、自分でも驚くほど冷ややかな声で言い放つ。今はその気がなくても、いつかはきっと。二度とその目を僕に向けられないように。二度とあんな態度をとらせないように。そしてその時は2人で一緒に…… 。そのために次はどうするべきかな。一旦黙らせた後にでもゆっくり考えよう。
    更に手に力を込める。力加減を間違えればせっかく苦労して手に入れた命を無駄にしてしまう。気をつけないと。次第に涙や涎でぐしゃぐしゃになった顔面が青白くなっていく。抵抗を示していた腕がぱたりと床に落ちる。


    「楽に消えられると…思わないで、くださいね……」


    元々消すつもりなんて、ないけれど。貴方の希望は奪わない方がいいと思って。まあ、もう、聞こえてないだろうけど。





    これからはずっと、一緒です。
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    Replies from the creator

    しらたき

    TRAINING直感なんてものが働いてしまったせいで過剰にレムナンの方に注意を向けてしまい、目をつけられてしまって最後まで残されて鬱憤を晴らされるラキオ…みたいなのを書きたかったけど思ったより可愛そうなことになってしまったしレムナンがすごいヤバい奴になってしまった…

    なんでも許せる人向け
    暴力表現あり
    「次元波の測定結果……です。ログを見る限り、ラキオさんはグノーシアではありません」

    初日にエンジニアだと名乗り出たうちの1人の何気ない報告。僕を調べて人間だったという報告。それが何故か酷く違和感のあるものに思えた。もう一方のエンジニアからは感じられなかった不自然な感覚。昨日の報告では感じなかった違和感。なんだこの感覚は。確かに僕はただの乗員だ。ルゥアンでグノーシア騒ぎに巻き込まれてこんな船に乗る羽目になった哀れな乗員。この報告は間違ってはいない、真実だ。なのに…この感覚はなんだ?何故この報告は嘘だと、このエンジニアはまがいものだと脳が警報を鳴らしている?まさか、これが直感というやつなのか?ありえない。そんなものは信用に値しない。もっと論理的に、現実的に説明できなければ僕自身が納得できない。こんなものに頼って推理しても何にもならない。信じられるのは、己の頭脳だけ。ただ、レムナンが本物のエンジニアであるという線を追う気持ちは、どうしても湧いてこなかった。
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