14歳 あるいは地方都市のメメント・モリ 下りのホームで電車を待ちながら、松井はぼんやりと向かいのホーム越しに見える変わり映えのしない駅前の風景を眺めた。
全国どこにでもある、地方の各停駅の光景だ。駅ビルもない駅舎の横のコンビニ、ロータリーを囲むようにチェーン店の居酒屋、マクドナルド、学習塾と不動産屋のテナントがあって、その向こうにはもう何もない。国道に出ればあとはロードサイドお決まりのテンプレートをなぞるようなラインナップが点々と並ぶだけ。
それでも、向かいのホームに滑り込んでくる車両に乗れば、今すぐにでも東京に行ける。
最低のラッシュで名高い、都心へ続くこの路線は、朝は痴漢が、夜は酔っ払いが、そして今くらいの黄昏時には長い長い通勤時間のストレスでおかしくなってしまった人間が、狙いすましたように集まっている。
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