遅効性ラブレター お屋敷に飾るための花を受け取りに、朝一番に庭師のエランのところに行く。それがメイドであるスレッタの日課だった。
玄関、食堂、ご主人様の執務室。それぞれの部屋に似合った花々を選んで手渡したエランは、最後に一輪。そっとスレッタの髪に花を差してくれる。お屋敷用のものとは異なる種類の、スレッタだけに選んでくれた花。
いつだったか、「こんな綺麗な花をエランさんに毎日選んでもらえるお屋敷がちょっと羨ましいです!」と言うスレッタを見て、その次の日から彼が渡してくれるようになったのだ。
最初はわがままに付き合ってくれたことに申し訳ない気持ちがあったけれど。自分が渡したいのだから気にしないで欲しい、というエランの言葉についつい甘えてしまって、今では毎朝の楽しみになっている。
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