沈黙の贖罪。「ヨルン、もう帰るぞ」
「……、」
「ヨルン」
返事のない様子にため息をつき、クレスはヨルンの腕を引っ張り上げる。掠れた吐息と嗚咽をヨルンは吐く、そのため息に沈まぬようにクレスは一層強く彼の腕を掴んだ。
「(今日はひどいな)」
一向に歩き出せそうにないヨルンの背を撫でる。普段ならば嫌がるその仕草も今は反応する気力もないのだろうされるがまま。ぐったりとしたヨルンを見かねて寄りかかるように促せば、彼はクレスの大柄な体にそのまま寄り縋った。
足元には黒く澱みはじめた血の泥が広がっている。普段であれば必ず銭を供え祈っているだろうに、今は立つだけで精一杯のようだった。
クレスはヨルンが動くのを待つことにした。
彼は時折こうなることがあった。ぴたりと静止して動かなくなる。それは大抵根深い部分で痛みを堪えている時だということを、クレスはこれまでの付き合いで理解しつつあった。
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