ジャスティティア・オーバーグロウ「ロンド」
「はい」
それはさながら罪状を読み上げる執行官がごとき気迫だった、と実はこっそり様子見をしていたヒューゴは語る。
聖火守指長となったロンドと、とある屈折した来歴を持つ”選ばれし者”ヨルン。聖火を信仰対象にするものたちにとって、二人は聖火がもたらした未来への炎そのものだ。信徒の中には彼らをホルンブルグの双璧に準えて、聖火の双剣と呼ぶものもいる。彼らはそれぞれ決して隣立つことはない立場だったが、二人は年頃も近いこともあって仲が良く友人と呼べる間柄だというのも聖火教会の中では周知の事実だった。
だったのだが。
フレイムグレース大聖堂、大聖火の前でそれは起こった。
……全てを授けしものとの戦いから数か月、エドラス女王と他でもないガ・ロハの女帝の意向で西方本国へ和平交渉の旅に出ていた選ばれし者がようやく任務を終えオルステラに戻った。大陸の期待を一身に背負い紆余曲折もあったが、無事に和平協定を結ぶ場に立ち会うというひときわ大きな土産をもって帰還した旅団と選ばれし者を、英雄と呼ばずしてなんと言おう。
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