砂塵の先、あるいは矜持の果て。 彼らの気配が変わった。
気が付いたのは刹那のことだ。戦いの最中、旅のはじまりから彼らを見守ってきたクレスの目にはそれはひどく鮮明に、そして鮮やかに写る。
攻勢を仕掛ける一呼吸の音、最古参であり決め手の役割を双方担ってきた二人……セルテトとヨルンが視線を交わすことなく動きを合わせた。セルテトの気配が砂のように解け、そして砂一粒が矢のようになったかのように鋭く纏う。それと対になるようにヨルンの闘牙は一気に冷え込み起伏が失われ、ただ遠くを見据えて祈っていた。
ユークスの祝詞に合わせクレスは敵に向けて妨害を放つ、普段通りの流れのはずが今日ばかりは少しだけ違っていた。違う、というべきではないか。
彼らは、以前よりも進んだのだ。
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