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    heartyou_irir

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    heartyou_irir

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    記憶喪失ジャクレオ。仮3話ー4(タイトル未定)。四度目の再会。マジフトについて話す二人。

    篝火を見上げる後ろ姿。周りには誰もいないことを確認し、ジャックはその背中に声をかける。

    「レオナさん」

    ジャックの声に反応し小さな耳がピルルと動いた。ゆっくりと振り返るレオナに、ジャックは小走りで駆け寄る。

    「少しお話でもどうですか?」

    すっかり二人にとって馴染み深くなった誘い文句に、レオナはわざと考える素振りを見せ、やがて小さく頷いた。

    「少しだけならいいだろう」
    「ありがとうございます」

    仕方がないという素振りを見せながらも浮かべられた笑みに、ジャックは同じように笑い返す。そして火に照らされたレオナの横に並び立ち、燃える炎を見上げた。

    「レオナさんはマジフトやったことはありますか?」
    「……少しだけな。でもお前と違ってただのお遊びレベルだ。たいした腕じゃない」
    「へぇー、王宮でやったんですか?」
    「いや、……昔通っていた学校でだ」
    「そうなんですね」

    王族といえば、王宮直属の教育係がいて全て王宮内で済ませてしまうものだと思っていたが、どうやらそうではないらしい。平民と同じように学校に通うなんて意外だった。ジャックは明かりで色づいたレオナの顔を覗き込む。

    「ちなみにどこの学校か聞いてもいいですか?」

    レオナな目線だけでジャックを見返し、そしてすぐ元に戻した。

    「機密事項だ。だいいち、そんなもん知ってどうする」

    王族が通っていた学校だ。そう簡単に教えてもらえるとは思っていなかったが、やはり駄目だった。ジャックは再び篝火を見つめなおし口を開く。

    「探せばあなたが出ている試合の映像が見つかるかと思って」

    そしてジャックはへらりと笑った。

    「……」

    パチッと音が鳴り、炎からは赤い火の粉が舞った。

    「探したところで俺が試合に出ているとは限らねぇだろうが。選手だったとは一言も言ってねぇぞ」

    それを聞いてジャックは驚いた表情で目をぱちぱちとまばたかせた。

    「確かに、言われてみればそうですね。あなたなら試合に出てるだろうって勝手に思いこんでました」

    ジャックはレオナの返事を聞いて顎に手をかけながら考えた。何故自分がレオナが試合に出ていたという考えに至ったのかは分からない。ただ、マジフトをやったことがあると聞いて、ふと箒に乗って空を支配するレオナが頭に浮かんだのだ。
    まるでチェスのように、選手達を操りチームを勝利に導く先導者。まだ会って間もないというのに、レオナにはそんな姿がよく似合うと思った。

    「じゃあ今はもう興味はないですか?」

    そう言うと、レオナは口を閉じ、黙ってしまった。初めて会った時、レオナはジャックが自ら名乗る前に、自分がどこの誰であるかを把握していた。そう考えると、全く興味がないというわけではないのだろう。

    「試合を見に来てくれたことはありますか?」

    ジャック自身が試合に出たのはここ最近のことだが、夕焼けの草原のチームは昔から存在していた。国王陛下も自国での開催の時は公務を休み、観戦されている。
    レオナが宴に参加しているのは見たことがないが、もしかしたら試合にだけは足を運んできてくれているかもしれない。そう思った。

    「ねぇな」

    けれどそんな疑問はバッサリと切り捨てられ、ジャックはレオナの横顔に目を向ける。

    「こうみえて忙しい身でな。特に国王不在の時は俺のところにそのしわ寄せが来る」

    表情はいつもと変わらない。炎を瞳に写した顔は嘘を吐いているようには見えないし、実際に陛下が観戦にくるということは、その分の仕事が別の者にあてがわれるというのもよく分かる。

    「そうなんですね」

    もしかしたら、と淡い期待を抱いていたことも嘘ではないが、来ていないというのも予想通りの答えではあった。けれど。

    「いつか、俺の試合をあなたに観に来て欲しいです」

    紛れもない本心が口から出る。いつかこの人に、自分が出ている試合を観てほしい。レオナは真っすぐに見つめてくるジャックを正面に見据え、唇に弧を描く。

    「気が向いたらな」

    ただの口約束。それでもジャックにはたまらなく嬉しかった。

    「はい」

    いつか来るであろうその日のために、ジャックはより一層鍛錬を重ねることを決意する。
    時間が許す限り、二人はただ静かに隣に並び立ち、火の粉が舞う篝火を眺めていた。
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