モブがジャクレオを知る話(仮)夜というには早く、夕方というには少し遅い時間帯だというのに、店内には「いらっしゃいませー!!」と活気溢れる声が何度も飛び交っていた。
にもかかわらず賑わっているはずの店内にはざわめきが少ない。というのもこの店は完全個室制であり、プライベートを確保するためにその部屋同士も間隔をあけて作られているからだ。
だからこそ、エリオット達のように顔が知られている者達にとっては気楽に食事を楽しめる店として重宝されている。
そして今日も今日とて集まったいつもの三人は、テーブルいっぱいに並んだ料理を前にキンと冷えたジョッキを掲げてカツンと澄んだ音を響かせた。
「今日もお疲れさーーん!乾杯!」
「かんぱーい!!」
「お疲れ様です!」
乾杯の音頭と同時に一気にジョッキを呷る。シュワシュワとした炭酸が喉を過ぎると、口に広がった苦味がふわりと鼻を抜けていく。けれど苦すぎない。エリオットはこの薔薇の王国発祥のビールが一番好きだった。
「あ~~、最高~~~~」
ビールの苦みが残ったままの口に、揚げたてのタコのから揚げを放り込む。
プリプリとした弾力。一噛みごとに広がる旨味。油を吸った香ばしい衣の香り。
触覚、味覚、嗅覚で十二分に楽しんだそれを最後にビールでキュッと流しこむと、エリオットはまさにこの世の幸せと言わんばかりに満面の笑みを浮かべた。
そして二つ目、三つ目と続けて箸を伸ばしていると、今度は隣に座っていたライズが頭付きの船盛りから刺身を一切れ摘まみ、口に運ぶ。
目を閉じ、しっかりと噛みしめながら刺身を味わうライズは、その後ライオットと同じように一気にビールを呷った。
「くは~~~~!」
豪快な声と同時にジョッキを離せば、そこには見事な白髭が出来上がっていた。
ビールが美味けりゃ飯も美味い。
久方ぶりに設けられた飲み会だ。盛大に話に花を咲かせてやろうと思っていたのだが、どうにも腹ペコの胃袋が箸を動かすのを止めてくれない。
から揚げ、シーザーサラダ、串焼きの盛り合わせ、チヂミ、卵焼き、枝豆、フライドポテト。所狭しと並んだ料理は早く食べてくれと言わんばかりに、作り立てのかぐわしい匂いを漂わせている。
その中でも一際存在を放っているのは熱々の鉄板で未だにジュワジュワと音をたてているサイコロステーキだ。
さて次はそれを食べようか、とエリオットが咀嚼していた卵焼きを飲みこむと、エリオットが取るよりも先に正面から伸びてきた別の箸がそれを攫って行く。
そしてステーキは真っすぐにその箸の持ち主──ジャックの口の中へと消えていった。
美味そうに顔を綻ばせるジャックに、自然とエリオットの表情も緩む。
明日は休み。食事を楽しむ時間も、会話を楽しむ時間もたっぷりとある。
ちびりとグラスに口をつけたジャックを視界の端に捉え、エリオットは今度こそステーキに箸を伸ばした。
***
人間族のエリオットとライズ、そして獣人属のジャック。種族も年齢も違うこの三人にはある共通点があった。
それは皆が皆、輝石の国出身であり、また同じマジフトチームに所属していることだ。
といっても所属チームは輝石の国のものではない。それは母国から遠く離れた海の向こうの国──夕焼けの草原のものであった。
夕焼けの草原が国としてプロのマジフトチームを設立したのは三年前。その頃はまだ、エリオットとライズは輝石の国のチームに所属していた。
エリオットは輝石の国のプロチームの二軍に。
ライズは国お抱えのチームではなく、社会人のアマチュアチームに。
それがどうしたことやら、ある日突然夕焼けの草原から引き抜きの誘いがあったのだ。
正直なところ、二人は自チームから抜けようと考えていたところだった。
プロとしてチームに入れたところで上手く活躍できない実力の無さ。どれだけ研鑽を積んでもなかなか成績を残せないアマチュアチーム。
三十代半ばに届かない今ならば、まだ新たな人生を歩むことができる。
そんな中での他国からの引き抜き。
当然二人はその誘いを断った。自軍でもたいして活躍できなかった自分が、他国の──それも国お抱えのチームで役に立つとは到底思わなかったからだ。
(文ができているのはここまでですー!ここから先はプロットです。それでも宜しければ
お進みください)
★エリオットAの人。人属。
A(名前)→輝石の国お抱えチームの二軍だった。実は磨けば光るタイプだった。輝石の国じゃ、Aを育てることができないのでうちでもらった。
★ライズBの人。人属。
B(名前)→輝石の国のアマチュア(?プロではない人達)チームから引き抜き。同上で、そのチームには宝の持ち腐れだったのでレさんがもらった。
先輩二人は輝石の国からの引き抜き。見抜いたのはレさん(レさんが夕焼けの草原のマジフトチームを作った)
で、互いに輝石の国出身ということでAとBがジャク君と親しくなる。(チームの先輩はジャク君だけど、マジフト歴だと二人のほうが先輩)
「結婚祝い」予定だったけど、むしろ「出会いが欲しい〜!」「今度合コンしようぜ!」「あの、すいません。俺はちょっとパスで……」「おっ、なんだジャック……さてはお前もしかして?」「えっと、あの、その……はい」「な、なにーー!お前だけずるいぞぉ!」「ずるいってなんスか!?」
で、恋人のことを尋ねる流れに。
まだ結婚はしてない。同棲中。学生の頃から付き合っていた。相手は詳しく言えない。的な。
モブは最近輝石の国から引き抜かれてやってきた選手。一人は国お抱えのプロチームの二軍から。もう一人は国代表ではないけれどそこそこ名の知れたチームの選手。夕焼けの国から名指しでスカウトがあった。
(スカウトしたのはレさん。輝石の国では持て余しているが、自分が磨けば光ると判断。)
で二人は互いに認識はある(チームは違えど同じ国でマジフト選手をやっていたため)
で、この度夕焼けに移籍後、新人二年目のジャックと同郷ということもあり仲良くなる。
ジャックは新人戦などでは何度か大会で出ていて良い成績を残している。&人一倍真面目で頑張り屋なのでモブ達にしてみればチームの先輩ではあるが可愛い年下で事あるごとに構っている。
で、この度飲み会をしていたところでジャックが既婚だと知り、「えーーーー!?」なモブ。(ここらへんはちょっと変更)
お相手さんのことを根掘り葉掘り聞いてやろう!なところでスタート。
結婚祝いとしてモブ先輩A、Bに飲みに連れていかれるジャク。
「まさか俺たちよりも先に八ウルの方が結婚しちまうなんてな~」
「くぅ~~、羨ましいかぎりだぜ!」
「今日はありがとうございます」
そして話は結婚相手のことに……。
「料理とか得意な感じ?」
→
「いや、料理とかはあんまりしてきてないんで基本俺が作ってます。けどたまに本とかテレビで見たやつ作ってくれますよ。やればできる人なんで」
「へぇ~、料理してきてないとかお前もしかして良いとこのお嬢様捕まえたのか~?」
「お嬢様ではないですけど、そうですね……ちょっと位は高いです」
→
「くぅ~~~!!!で?で?美人系?それとも可愛い系?」
「一般的には美人の部類だと思います。けど俺的には結構かわいいとこもあると思いますよ」
「おいおいおい!美人を可愛いって言えるのは恋人だけの特権だぞ、羨ましいやつだな!」
「具体的にどういうとこが可愛いんだ?」
→
「う~ん、スキンシップが多いというか、けっこうくっついてきてくれるとこ……っすかね?」
「美人なのに甘えたさんかよ!!」
「年は?甘えてくるってことは、やっぱ年下か?」
「いや、年上です」
「はぁ~~~~!!!年上の美人な奥さんで甘えん坊とか!!!お前どんな人生歩んでたら
→
そんな人と出逢えんだよ!!!」
「ははは」
「今日はやけ酒だ!!!八ウル!お前も飲め飲め!!!」
そして数時間後。ジャクは酔ってそのまま寝てしまう。
「お~い、八ウル~?起きれるか~?」
「ん、うぅん……」
「ダメだ。完全に寝てる」
そこでモブ先輩達はあわよくば嫁さんを見れるかもと→
ジャクを家に送り届けることに。
タクシーでジャクの家に向かうと、そこは新婚とは思えないくらいの立派な家があった。
「こ、ここが八ウルの家か」
「けっこうデカイとこに住んでるんだな……」
家の中には明かりが見え、モブ先輩は緊張した面持ちでブザーを鳴らす。
「…………あれ?」
→
しかし誰も出てこない。先輩はもう一度ブザーを鳴らす。
「……いねぇのかな」
「明かりはあるけど。もしかしたら出てんのかもな」
「仕方ねぇ。八ウル!鍵持ってるか~?」
「ん……か、ぎ?」
「そうそう。鍵。お前ん家着いたから部屋まで運んでやるよ」
「……バックの、そとがわの、ポケットに」
→
それを聞いてごそごそバックを漁っていると、突然ジャクの家のドアが開いた。
「あっ」
そこにはジャクとは違う耳が生えた獣人の男がいた。玄関から入った風で、背中まで覆う長い髪がゆらりと揺れる。
「誰だ」
「え、あっ、その俺たちは……」
そこで獣人の男は先輩に寄りかかっているジャクに
→
気がついた。
「シ"ャック」
「ん……」
するとそれまでずっと半分寝ていたジャクが顔を上げる。
「レ才ナ、さん」
そして腕を伸ばしてジャクは獣人の男を抱き締める。
「ん、ただいま……」
「……おかえり」(セリフはたぶん変更)
しがみついたジャクの背に男の手が回される。それだけで男はこの状況を理解した
→
ようである。
「うちのが世話をかけたみたいだな」
「あっ、いや、俺たちも飲ませすぎちやったんで」
「こちらこそ、八ウルをそんな風にしちまって、すんません」
先輩達は慌てて男に頭を下げる。
「レ才ナさん……」
ジャクが抱きつく腕に力を込める。男はよろけることなくそれを受け止めていた。
→
「じゃあ、俺らはこのへんで」
「お邪魔しました」
「あぁ……」
そしてジャク達は扉の向こうに消えていった。先輩達は玄関から待たせてタクシーへ歩きだす。
「男……だったな」
「だな」
「けどすんげぇ美人だな」
「めちゃくちゃ美人だった」
そして二人の間に一瞬の沈黙が流れる。
→
「あの顔で、あのクールさで……」
「八ウルに甘えてくんだよなぁ……」
先輩同士で互いに目配せをし、片や空を仰ぎ、片や顔を地面に伏した。
「「羨ましいなぁ~~~~!!!!!」」
二人の長い長い羨望がこもったため息は夜風に流れて空に消えていった。