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    heartyou_irir

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    heartyou_irir

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    雑土webオンリー合わせで書いている新作。
    土井先生と雑渡さんの膝枕の話。※まだ書いてる途中です!全部書き終わったらpixivに投稿します!

    は組の授業を終え、教員長屋にて回収したばかりの問題用紙の採点を始めてからおよそ半刻。
    土井は最後の一枚に赤い数字を記し、手に持っていた筆を置いた。

    「ふぅ……」

    これでひとまず急ぎの仕事は終わりだ。半刻とはいえ、ずっと同じ姿勢で文机に向かっていた体は、まるで重い荷物を背負った後かのように固くこわばっていた。

    ふぅ、と再び小さく息を吐き出した土井は、まず首をゆっくりと左右に倒しながら筋を伸ばし、次に肩を回して固くなった筋肉を少しずつほぐしていく。

    それから両手を高く上げてグググと大きく背中を伸ばせば、曲がっていた背骨が上へ伸びるにつれてポキポキポキと小気味いい音を奏でた。

    「ん、んん〜〜〜〜!」

    腰から上を目一杯伸ばしたのちに、ふっと力を抜けば、体は重力に従って一気にカクンと落ちる。

    それがまたなんとも気持ちよく、土井は伸ばした腕をもう片方の腕で掴んで横に伸ばす動作を間に挟みながら、一連の流れを何度も繰り返した。

    「はぁ~~。……ん?」

    だいぶ軽くなった体に、ほっと息を漏らしていると、障子の向こうから聞き慣れない足音が近づいてきていることに気がついた。

    こんなとこを歩いているなんて珍しいな、と全く隠されていない気配に思わず障子へ顔を向けていると、その気配はちょうど土井のいる部屋の前で止まった。
    そして障子に映った影は高い影から小さい影に変わり、一拍ほどの間をおいて声をかけてきた。

    「土井殿、今少しお時間よろしいですか?」
    「はい、大丈夫ですよ」
    「失礼します」

    スッと障子が開く。すると、そこには思い浮かべていた通りの人物が膝をついてこちらを見ていた。

    「珍しいですね、雑渡さんが私に用事だなんて。さぁ、中へどうぞ」
    「かたじけない」

    土井に促されるまま、今度は音もなく部屋に入り障子を閉めた男は、本来ならばこうして教員長屋を歩いていることすらおかしい立場の者であった。
    タソガレドキ忍軍組頭──雑渡昆奈門。それがこの男の正体だ。

    ひょんなことから学園──というよりは一部の生徒に恩義を感じ、それからこのなんとも言えない不思議な関係が続いている。

    更には先日、土井のとある不手際で、山田と土井の代わりに一年は組の先生を務めてもらっていたこともあった。
    その一件があったからこそ、こうして気軽に話ができる関係になれたのは間違いないだろうが、これを喜んで良いかは難しいところだ。

    「今日はどうされました?」

    雑渡を招き入れた土井はすぐさま要件を促す。
    雑渡が土井個人に話しかける用事といえば、そのほとんどが雑渡の部下である諸泉尊奈門についてだ。

    きっと今日もそうであろうと思っていると、雑渡は真剣な面持ちで懐から何かを取り出した。

    「実は土井殿にこれを、と思いまして」
    「こっ、これは!!」

    懐から取り出されたのは一冊の本であった。
    特別な装丁も施されていないそれは、一見して何の本か分からなかったが、表紙が見えるようにこちらに差し出されるとそれは一目瞭然だった。

    「こ、これっ、え、いったいどうしたんですか!?」

    土井が目を輝かせながら上擦った声をあげる。目は表紙に書かれた文字に釘付けだ。
    すると雑土はいつもと変わらぬ調子で口を開いた。

    「先日、うちの書庫を整理していたら出てきまして。たぶん本物ではなく写しでしょうが、私の祖父かそれよりも前の先祖が書き残したものだと思います」
    「こんな貴重なものを。はぁ……すごい」

    白い表紙に簡素に書かれた文字は有名な兵法書の一つと同じものが書かれていた。
    あの雑渡がわざわざ書庫から持ってきたというのだ。『写し』とは言っていたが、内容が本物と同じものであれば土井にとってそれは本物と大差ない。

    とても貴重なもので、土井も昔にどこかの城かどこかの古巣で読んだことがある気がするが、昔のことすぎてそれがいつのことだったのかはっきりとは覚えていない。
    それを雑渡が土井にと持ってきた。それはつまり──土井の目の輝きはいっそう増す。

    「わ、私が読んで良い……ということでしょうか?」

    土井は口の中に溜まった唾液をごくりと飲みこむ。
    そしてすぐさま本を受け取ろうと前に出ようとする手を押さえながら、そっと窺うように雑渡の顔を見上げれば、雑渡は片方しか見えない目でニコリと笑った。

    「もちろんです。土井殿ならきっと喜んでくれると思っていましたよ」
    「っ、嬉しいです!すごく!とても!!」

    まるで世界に光が満ちたように、室内がパッと明るくなったような気がした。
    脳内はもう兵法書一色だ。未熟な頃に一度読んだだけでも十分実りのある内容だった。それを今の自分が読めばどれほどのものになるだろうか。

    「では、あの、さっそくお借りします」

    雑渡が来たのが仕事を終えた後で良かった。これならば本に没頭できる。
    土井は今まで我慢していた手をそっと前に出してその本を受け取ろうとした。──が。

    「えっ!?」

    目の前にあった兵法書が一瞬のうちに視界から消えた。その衝撃に土井が慌てて顔を上げると、本は笑みを浮かべたままの雑渡の頭上に高々と掲げられていた。

    「え?」
    「え?」
    「えっ!?あれっ!?」
    「土井殿、まさかなんの見返りもなしに私がこれを貴方に見せるとでも?」
    「ええっ!?」



    ***
    ひとまずここまでです!続きはまた明日頑張ります~!!

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