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    heartyou_irir

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    heartyou_irir

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    ラギーに頼まれて初めてジャックがレオナを起こしに行く話。無自覚ジャク(→)(←)レオなジャクレオ。たぶん二人はまだ付き合ってないし、自覚もないと思う。
    ※レオナさんの下着事情は私の趣味です。

    冬の訪れを感じさせる冷たい風が肌を撫でる。空に輝く太陽の光も、夜に冷やされた大地を温めるにはもうしばらく時間がかかるだろう。

    日差しを受けて光を反射する吊り橋をジャックはどこか緊張した面持ちで歩いていた。足を踏み出すたびに、吊り橋がキシキシと揺れる。向かう場所は寮長室だ。

    どうしてこんな時間に寮長室へ向かっているのかというと、尊敬するラギーから直々にある仕事を頼まれたからだ。

    それは、寮長であるレオナを起こすことだった。

    自分で起きるのを待っていてはダメなのかと聞いたところ、レオナは起こさなければずっと眠りこけたままなのだそうだ。

    現にどうしても起こしに行けなかった時は、昼休みが終わるまで自室のベッドで眠っていたこともあるらしい。

    それが二度寝や三度寝ではなく、前日の夜からずっと眠ったままだということが驚きだ。

    日々、規則正しい生活を心がけているジャックには到底信じられないことだった。

    そうしてなんやかんやと頼まれてしまったジャックは己の役目を果たすため、寮長室へと足を進めていた。

    レオナの部屋は寮の一番奥のサバナクローを見渡せるところにある。

    登校時間までまだ十分に余裕がある現時刻では誰ともすれ違うことなく、あっという間に寮長室へ辿り着いてしまった。

    ジャックは目の前に立ちはだかる閉ざされた扉の前で大きく息を吐き出した。

    レオナの部屋には今までにも何度か足を踏み入れたことはある。
    がしかし、それはいつもラギーが一緒に居たり、部屋の外から声をかけてレオナから入室の許可をもらってからのでの訪問だ。

    たった一人で、それこそ寝ているレオナの部屋に勝手に入るなんて初めてのことだ。緊張しない方が無理な話である。

    ジャックは目を閉じて何度か深呼吸を繰り返し、やがて覚悟を決めたようにキリリと鋭い視線を扉に向かって投げる。

    そしてゆっくりと手を上げ、やけに力が入ってしまった拳で扉をノックした。コン、コン。返ってきたのは、重々しい扉からは想像ができないほど軽い音だった。そして、それ以外の音はない。

    一縷の望みをかけてしばらくその場で耳を澄ませるが、部屋の中からはやはりレオナの声どころか物音一つ聞こえない。

    これは本当に覚悟を決めねばならぬようだ。

    ジャックはもう一度肺いっぱいに空気を吸い込み長い時間をかけて吐き出し、ゆっくりとした動作で寮長室の扉に手をかけた。

    「し、失礼します……」

    少しだけ作った隙間から中を覗きこむと、部屋はいつものように散らかっていた。暗い室内を探るように視線を動かすと、ベッド上に大きな塊を見つけた。あれがレオナだろう。

    扉を引いて更に隙間を広げようとしたら、木製の扉はキィと軋むような音を立て、ジャックは慌てた様子で無理矢理体を隙間からねじ込み、中に入る。

    心臓がバクバクとうるさく騒ぎ立てる。無断で部屋に侵入したといっても、今日はジャックが朝から起こしに来るとは事前に伝えている。

    だから何も悪いことはしていないはずなのに、どうしてこうも緊張してしまうのか。
    耳の奥でうるさく鳴り響く心臓の音の合間に、すうすう、と小さな息遣いが耳に届いた。

    「ぐ、うぅぅ」

    健やかな寝息は小さいはずなのに、しだいに鼓動をかき消すほど大きくはっきりと聞こえてくるようになった。

    思わずジャックはその声に謎の呻き声をあげる。ベッドの上の塊が寝息に合わせてゆっくりと上下に動いている。

    ジャックはここから逃げ出したい心境に駆られたが、「よろしくねー」と自分を信頼し頼ってくれたラギーの姿を思い起こし、どうにか自身を奮い立たせる。

    一歩、二歩、ジャックはベッドに近づいていく。どうせなら近づくジャックの気配を察知して自力で起きてくれれば、それ以上に嬉しいことはない。

    しかし現実はそう甘くはなく、結局ジャックは眠るレオナのすぐ側まで来てしまった。視線を下ろせば、頭部以外をすっぽりと毛布で覆ったレオナが綺麗な寝顔を晒している。

    寒いのか、レオナは想像していた豪快な寝姿とは反対に、小さく丸まって寝ている。
    ジャックは恐る恐る手を伸ばし、レオナを包む毛布に手を当てた。そして名前を呼びながらゆっくりと揺さぶる。

    「レオナ先輩、朝っスよ。起きてください」
    「……んっ、んん」

    声は漏らすが、レオナに起きる気配はない。ジャックは少しだけ遠慮する気持ちを取っ払い、先ほどよりも強くレオナを揺さぶってみる。

    「レオナ先輩。朝ですよ」
    「んん~~~~~」

    むずかるレオナは、唯一出ていた顔さえも毛布の中に隠して唸り声を上げた。もうジャックから見えるのはシーツに広がるブラウンの髪とピンッと立った耳だけだ。

    なるほどこれはなかなか手ごわいかもしれない。ジャックは一筋縄ではいかないレオナの姿に、寮生活になり離れて暮らしている弟のことを思い出した。

    けれどこれはジャックの予想の範囲内でもあった。というのも、ラギーから事前にレオナは相当に寝ぎたないと聞かされていたからだ。

    それと同時にとある解決策も伝授してもらっていた。

    「……レオナ先輩、すいませんっ!」

    ジャックは縮こまるレオナを包む毛布をむんずと掴み、ラギーの言葉を思い起こした。

    『今の時期なら、レオナさんを簡単に起こせる方法があるんスよ……』

    脳内のラギーがにこやかに笑う。ありがとうございます、ラギー先輩。
    ジャックは掴んだ手をそのまま勢いよく上へと引き上げた。

    「せいやっ!!」

    バサッ、と毛布が大きく広がる。いかにレオナが体を包むように丸まって寝ていようとも、これだけの勢いで引っ張ってしまえば簡単に毛布は剥ぎ取ることができる。

    それに、これだけの衝撃を受ければ、レオナであろうともさすがに寝たままでなんていられないだろう。

    広がる毛布が大人しくへたりとベッドに落ちると同時に、眠るレオナの全貌が視界に入り、ジャックはビャッと全身の毛を逆立たせながら固まった。

    「なっ!はあっ!?」

    わなわなと毛布を掴んだ手が震える。そんなジャックをよそに、レオナはグルグルと唸り声を上げながらようやく体を起こした。

    「て、めっ、ラギー……それやめろって、言っただろうが……」

    よほど不快な目覚めだったのか、レオナはドスをきかせた声で文句を言いながら伏せた顔を片手で覆う。

    その間もジャックはわなわなと、今度は体全体を震わせながらその様子を見ていた。

    「な、な、なっ……」
    「……ん?なんだ、ジャックじゃねぇか」

    ようやく意識がはっきりとしてきたのか、レオナは伏せていた顔を上げ、ジャックの姿を視認する。しかしその顔は何故か真っ赤に染まっており、レオナは不思議そうに首を傾げた。

    「おい、どうした」
    「な、な、なっ」
    「あ?」

    耳の内側まで赤く染めたジャックは、はくはくと口を震わせた後、寝起きでいつもより険が少ないレオナを前に、ついに大きく声を荒げた。

    「なんで服着てなんすかっ!?」
    「服だァ?」

    だるそうにそう返すレオナの髪が褐色の肌に流れる。落ちた毛先は胸の頂をかろうじて隠してくれているが、それ以外は全てが剥き出しだ。

    綺麗に割れた腹筋に、ツンと窪んだ臍。引き締まった腰はいっそ括れと呼んでしまった方が正しく思えるほどなだらかで、そこから繋がる太ももには張りがある。そして臍から下へ視線を下ろしていけば、そこにあるのは。

    「うわあっ!」
    「ぶっ!」

    これ以上はいけないと、ジャックは手に持っていた毛布をレオナに向けて投げつけた。そしてそれを見事に顔で受け止めたレオナは、すぐにそれを顔からはたき落とし、ジャックを鋭く睨みつける。

    「なにすんだよ」
    「レ、レオナ先輩が悪いんすよ!」

    くしゃりと垂れた毛布が上手い具合にレオナの体を隠してくれたが、それでもまだジャックの熱は収まることを知らない。

    一度見てしまったものはなかなか記憶から消えてくれない。ジャックはなんとなく直視するのが気まずくて、少しだけ視線を横にずらしながら口を開いた。

    「なんで全裸なんすか。せめて下着くらい履いててくださいよ……」
    「あァ?俺の部屋なんだから、俺がどんな格好して寝てようがお前には関係ないだろう」
    「ぐっ、それは、そうっすけど……」

    確かにここはレオナの部屋で他にルームメイトがいるわけでもなく、レオナが裸で寝てようと誰にも迷惑をかけることもない。

    分かっている。頭では分かっているのだが、どうしてか心は追いついてくれなかった。
    と、そこであることが引っかかった。

    「待ってください。もしかして、いつも裸で寝ているんですか?」
    「そうだが、それがなんだってんだよ。寝るだけなんだ。服なんていらねぇだろう?」
    「……」

    全裸のレオナ。そして、『今の時期なら』と簡単にレオナを起こす方法を教えてくれたラギー。そこから導き出される答えはとても簡単なものだった。

    「……やっぱ、下着くらいは履いててくださいよ」
    「なんだ、ラギーが迷惑してるとでも言いたいのか?残念だが、あいつはそんなことを気にしたことなんざ一度もねぇよ」
    「……」

    レオナは面倒くさそうにジャックのお願いをひらひらと手を動かしながら一蹴する。

    ジャックは自分でもどうしてそんなことを口にしているのか分からなかった。ただ、なんとなく、裸で寝ているレオナを起こす誰かがいるということに、心の奥がもやもやとした。

    「……」

    けれどそれを上手く言語化することができず、ジャックは肩を落としながらただただ口を閉ざす。

    レオナはそんなジャックをねめつけるように見据え、やがて肩をすくめながらため息を吐いた。

    「……分かった。下を履いてればいいんだろう?」
    「えっ……」
    「言っとくが上までは着ねぇぞ。めんどくせぇ」
    「あ、ありがとうございますっ」

    どうしてレオナが下着の件を了承してくれたのかは分からないが、ジャックはとりあえず急いで頭を下げる。
    何故だか、胸の奥が少しだけ軽くなったような気がした。

    レオナは髪をガシガシと掻きながら、くわりと大きな欠伸をし、立ち呆けているジャックに指示を出す。

    「クローゼットの下段に下着がある。取れ」
    「あっ、はい!」

    有無を言わさないその言葉にジャックは素早く是と答え、服が挟まって綺麗に締まり切っていないクローゼットを開けた。

    ぐしゃぐしゃになった服の奥に、下着用の収納スペースらしい仕切りつきのボックスを見つけた。その中から適当に一つ手に取る。

    取り出した拍子に広がった下着は、紐がついた黒い布切れのようなもので、ジャックはそれにまた大声を出すはめになった。


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