にょた宮の攻防二宮匡貴(まさき) 20歳 女
可愛がっていた妹枠・鳩原未来をかどわかした男・雨取麟児を絶対殺す女。
鳩原に対して若干百合気味。
弓場拓磨 19歳(現時点18) 男
匡貴の彼氏。鳩原に嫉妬する自分を男らしくないと思っている。
雨取麟児 20歳 男
匡貴の天敵。本人は突っかかってくる匡貴を蚊のようにしか思ってない。
鳩原未来の彼氏。
鳩原未来 18歳 女
雨取麟児を勝ち取った女。抜けてそうに見えて、匡貴の世話を焼く。
雨取麟児には恋人がいる。誰かと言えば、ボーダー屈指の技巧派狙撃手、鳩原未来である。彼女の噂はすごい。言わずもがなその射撃センス、自隊長のお世話をピンポイントでしてみたり、ツッコミは適格……と言うより辛辣、終いには『優秀すぎる程優秀にも程がある大学生』“雨取麟児”を勝ち取ってみせた女子校生と。
正直、『優秀すぎる程優秀にも程がある大学生』のレッテルはいったい何なのか問いただしたいが、そこは雨取麟児。自分でも「仕方ない」と思っている。
閑話休題。
そんな雨取麟児にも天敵(と全く思ってもいないが、相手がそう認識している。)と言う人物が存在する。――その名は。
「今日こそ、決着をつけるぞ、雨取麟児」
「そこは素直にノートを見せてくれじゃないのか? 二宮匡貴」
二宮匡貴(まさき)、二十歳、女。雨取麟児の恋人・鳩原未来のボーダー部隊隊長を務めるその人である。
「うるさい。貸すならさっさと貸せ」
「未来にも頼まれてるからな」
「ふんっ! 私の為に動くとは流石は私の鳩原だ。あと、鳩原を呼び捨てにするな。」
周囲の人間はこう思う。何故、借りる側がこんなに偉そうなのか、と。何故、鳩原を巡って対立してるのか、と。
「いいか、雨取麟児」
「はいはい、そうか、よかったな」
雨取麟児は自分を指さす二宮匡貴を無視してカバンからノートを取り出す。
「ほら、後ろで彼氏が待ってるぞ」
「ふん、文句も言わずさっさと貸せばいいんだ、そう思うだろ? 弓場」
二宮の言葉などどうでもいいと思っている節がある雨取麟児と自分が絶対と思っている節がある二宮匡貴。圧の強い二人に話を振られたのは二人の一個下、今年大学に入学したばかりの弓場拓磨、十八歳、高校卒業同時に二宮匡貴の彼氏になった男である。問われた弓場拓磨の返答は「ッス」の一言に抑えられた。それだけなのに、気を良くした二人は来週控える雨取麟児誕生祭の際に鳩原が着る服について話始めた。
周囲の人間は思う。何故鳩原の当日の服を二人が決めるのか、と。
「お前は話が分からん奴だな」
「未来は何着ても可愛いだろう?」
「当たり前だろう。あと、鳩原を呼び捨てするな」
仲が良いのか悪いのか。周囲の人間の目は、何故あんな二人に付き合ってられるのか、と弓場拓磨を見るが、生憎とそんな事でひよる弓場拓磨ではない。何て言ったって『傲慢冷鉄ちょっと抜けてる』が有名の“二宮匡貴”の彼氏である。余談だが、理想の男性像は何しても揺るがない“雨取麟児”なのは周囲の暗黙の了解だ。二宮以外。
「ちょっと、何してんですか! 二宮さん!」
そんな困惑する周囲を差し置いて、更なる登場人物がやってくる。――『優秀すぎる程優秀にも程がある大学生』と『傲慢冷鉄ちょっと抜けてる』の話題の中心人物、鳩原未来だ。
「どうした鳩原」
二宮匡貴は嬉々として後ろを振り返る。だが、高校の制服を着た(かわいい)鳩原未来(かわいい)は焦った表情だ。
「何がどうしたですか! 防衛任務入ってるのに来ないから皆心配してますよ!」
「あ、もうそんな時間か」
「あ、じゃないですよ! 忍田本部長困ってましたよ!」
そりゃ誰だって、困るだろう。交代部隊の隊長がなかなか来ないのだから。
「やぁ、未来」
「あ、麟児さん」
雨取麟児はそのやり取りを見ながら、鳩原未来に優しく手を振る。鳩原未来は軽く手を振り返すと、「私の鳩原をかどわかしやがって!」と息巻く二宮匡貴を連れ……「ほらさっさと行きますよ! 何、人の彼氏にメンチ切ってんですか! ほら自分で歩く!」……引き連れてその場を離れていく。それには弓場拓磨もついてく。
ここは大学内、午後のカフェテラス。在校生の目線を雨取麟児は独占した。