酒の勢いでうっかり一線超える月鯉*
10月も後半になれば北海道の気温は徐々に冬に近づく。昼は太陽のある日はまだ過ごしやすい気温であるが、夕刻を過ぎれば冷える。
汗をかいた素肌の上を夜風が撫でていくのにひどい肌寒さを感じ、鯉登は眉を顰めて目を覚ました。
日は昇っていないが、外はうっすらと白みつつある、明け方のようだった。
素肌、とは。
はたと気付いて寝惚けた意識のまま自分の胸元や肩に手を這わせる。確かに裸である。
潔癖のきらいがある鯉登はよほどのことがない限り寝間着も着ずに床に入ったりはしないので、まず裸であることに困惑した。次にどうやらそもそも自分が寝ている場所が布団の上ではないのにも気付く。どう考えても体の下にあるのは布団の綿の心地よい柔らかさではなく、いぐさの香りだった。畳の上で眠ってしまったというのか。
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