いつかフェイ視点で書くかもしれない人が1人死んでいる。
死体の傍にはライが立っている。手には硝煙が細々と立ち上る拳銃が握られているのを見るに、彼が射殺したと見て間違いはないだろう。
「フェイ、遅いぞ」
大柄な男は小走りでライの側へ駆け寄る。
下水道のむせかえりそうな悪臭に火薬の匂いと微かな血の匂いが混じっていた。
鼻先に手をあてがい、眉間に皺を寄せたフェイは転がった死体を視界に入れる。
途端、フェイはライの胸ぐらを掴んだ。
「やったのか」
「ああ。」
目には感情の一切が途絶えている。興味が無い、さえもない何かに、彼と初めて顔を合わせた時と同じだとフェイは悟る。
「重要機密を持ち逃げされちゃあな。」
ライが人を殺したのはこれが初めてだ。人を殺すことに対してここまで無感情になれるなんて、人としてあっていいことなのだろうか。
フェイは不甲斐なさと似た感情に支配され、胸ぐらを掴んでいた手をゆっくりおろし、「すまん」と呟いた。
理解ができない、と言いたげにライは小首を傾げる。
「早く処理済ませようぜ、警察も時期に来るだろう」
「分かっている」