Recent Search
    You can send more Emoji when you create an account.
    Sign Up, Sign In

    ran_1z

    @ran_1z

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 21

    ran_1z

    ☆quiet follow

    冠者様と正宗おじ
    正宗おじの独白😉
    #春霞に酔ふ_ギャラリー

    #刀神
    knifeGod
    #冠雪小話
    crownSnow

    敵の急所である核を突き、力で圧し斬る。
    山の頂上に近づくにつれ増えてくるのは、ガンキンにササヤキ…、どうやら人を惑わし落とし込む類の妖魔が主体の様だが、今回の件とどう関係しているのか。現在地は鷹尾山山頂付近。無所属として他部署のサポートに回るのが今の任務ではあるが、正直に言うと今、一寸した私情で動いてる。次いでで任務してるって訳でもないんだが。それに私情と言っても俺自身の事情でもない。全ての元凶は…、

    「萬鬼、どうだ。久しぶりの“本来の感覚”は」

    この無表情でヒトを見下ろしながら無神経に話しかけてくる刀神、冠者。…とそれから、何回か臨時でバディ組んだだけで何故か我が物顔で俺ん家に入り浸る刀神、雪鶴。何故俺がこいつら2人に付き合ってやらなきゃならんのか納得いかねぇが、元はといえば雪鶴が居なくなったから共に探せ(とまでは言われてない)とこの無機質な大男に言われたのが始まり。本当に面倒臭ェ…。
    そうして丁度同時期に起きていた、行方不明者が相次ぐこの事件が怪しいと踏んでこいつと臨時バディを組み探しに来た訳だが。…どうにも俺は、あの雪女は今回の事件には関係していない気がしている。口を開けば「冠者様が〜」と聞いてもいないことを話す奴が、何でもかんでも“冠者様“に真っ先に報告する奴が、任務に出る前に報告していかない訳がないだろうに。

    「───どうした、萬鬼」
    「…なんでもねェよ。それと、アンタの力だが…まぁ、悪くはない。」
    そう、悪くは無い。寧ろ俺自身には、この妖刀の異能は都合が良かった。
    負傷により自由が利かなくなった筈の左手を握りしめ、感覚を確かめる。この刀神の異能は、“斬りつけたモノを傀儡の様に操ることが出来る”らしいが、それを逆手に取り遣い手自身に発動すれば、こいつ(妖刀)を通し己が思う儘に自分自身を操れるっつーことだった。つまりこの麻痺が残っていた利き手も、視野が制限されていた左眼も思うが儘に動かせるし、更には都合の良い事に“死を恐れぬ刀”と呼ばれる所以か、戦闘への抵抗感も取り払われるような感覚さえあった。
    だから確かに、この妖刀の力は俺にとっては好都合だった。

    かしゃん、と軽く利き手で弄び、軽く刀を振り上げたら、気配を消して近づいて居た妖魔を両断する。核を破壊し黒い霧として霧散する妖魔を横目に見ながらひとつ、息を吐く。

    「だが、こいつァ…よくねぇな」

    自由に動き本来の力を発揮出来る左手も、クリアな視界も、畏れなど何も無くなるような、この錯覚も。

    「良薬も過ぎれば、毒となる。」
    加減の分からない初心者がこの刀を振るえば、自分自身の限度を見誤り自滅に向かうだろう。
    既に一度、己の身体の限界を迎えている俺にとっては見知った感覚だ。見誤りはしない。ただ…、この懐かしい感覚が、俺自身の未熟さ故に永遠に失ってしまったはずのこの自由が、もう既に手放し難いとすら感じてしまう。これはこのいけ好かない刀神の力を借りてでしか得られない見せかけの感覚なのに。俺自身の力では、無いのに。

    「…はぁ…己の弱さを、見せつけられてるようだ。」
    「………。何故そう思う。」
    無表情を崩さず、声のトーンも何一つ変わらないのに、どこか興味深そうに聞いてくる。こいつは本来、ヒトへの関心が強いようだ。
    「お前の異能は、簡単に俺がずっと焦がれた力を寄越してくる。俺の未熟さ故に失ったこの感覚を。
    だがそれももう失ったものだ、これが本来の力だと縋りたくはない。縋りたくなる気分にさせられるのも、不快だ。…それなら代償が目に見えて自分に返ってくるアイツの異能の方が、気は楽だ。」

    アイツ、とはもう1人の刀神、雪鶴の事だ。アイツの異能は、遣い手の体温と引き換えに異能を授ける即応的代償がある。故にリスクは大きいが限度も分かりやすいし、扱いやすい。

    「……あれは、傷付けたくて人に力を貸している訳では無いぞ」
    「分かってる、怒んな。」
    表情も変わってないし分かりづらいが、…多分、あからさまに不機嫌な色が混じったような声色で訴えられた。…いやアイツ(雪鶴)に対して過保護すぎるだろ。

    「もう良いだろ。オラ、早く見つけてとっとと帰るぞ。」

    うっかりペースに乗せられてしまったが、俺は本来、面倒臭がりだったんだった。
    急に何もかもが面倒臭く感じて、早く帰りてぇ……と足取りは重くなるばかりだった。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    😭🙏✨✨✨🇱🇴🇻🇪🍌
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    related works

    recommended works