キスとキスの合間に　いつも手品みたいだ、って感心してしまう。
　口唇同士を合わせた始めの方は、私の頬を指先で撫でたり耳殻をなぞってくすぐったり、髪の毛をぐしゃぐしゃに綯い交ぜにしたりしていろんな悪戯をしているくせに、何度も角度を変えて重ねる度に気づけばするりと上着が奪われ、ボタンが外され、ああ、今ブラのホックが外された。
「…………っ、」
　思わずきゅっ、と口唇を引き結んでしまったことで未だに慣れない緊張が伝わったのか、ほんの少し離れた閃光が小さく笑った気配がした。
「ミツキ」
　普段よりも甘くて、掠れた声が密やかに私の名前を呼ぶ。吐き出された熱い吐息が触れるほどの、
「こっち集中しろ」
　柔く食まれて、吸われて、濡れた舌が私を見つけて誘い出す。するりと絡められた指が熱を帯びた掌をなぞり、焦れったいくらいの仕草で素肌に触れた。
「ん、」
　ゆっくり、私の気持ちいい場所を知り尽くした閃光は、私が下手くそに呼吸するのに合わせてキスをくれる。初めはヘビースモーカーで苦いばかりだったのに、嫌がられるとでも思ったのか、最近一緒にいる時閃光は滅多に煙草を吸わない。
　そのせいか、艶っぽい雰囲気のものだけじゃなくてキスが増えた気がする。
　子供みたいに触れるだけのキスから、キスと言うより甘噛みみたいなじゃれるものまで、ベッドでも好きだとか愛してるなんて殆んど言わない閃光の言葉より、雄弁な声でその想いを届けてくれる。
　構って。こっち向いて。触れたい。大好き。褒めて。求めて。傍にいて。
　勿論外では恥ずかしいからしないで、と私に言われるまでもなく、照れが勝るからと腕を組むのも躊躇する閃光が、いろんなところにくれるその意味を私なりに考えて受け止める。わざと痕を刻んで、満足そうに熱を持った眼差しが蕩ける理由を。
「ひかり……」
　合間を縫ってくたくたになった舌を懸命に動かして名前を呼ぶと、多分無自覚なのだろうけれど、これ以上幸せなことはないとでも言うような顔をするのが愛おしい。
　本当は、見えてるよりもずっと緊張しているのを私は知っている。
　本当は、傷つけないように目いっぱいブレーキをかけながら触れてくれているのを知っている。
　だから、この燃えるような体温がじわりと重なる度に、何度だって焦がされてしまうのだ。