ピリリリリ……と鳴り響いた高い電子音で目が覚めた。俺より先に起き出した先生が電話を取る。何度となく聞いた、病院からの緊急コール。
ラップバトルが必要ない世界になっても、神宮寺寂雷の闘いは続いている。
「はい、はい……分かりました、すぐに」
先生は電話を切りあっという間に服を着て、申し訳無さそうな顔でこちらを振り向いた。
「すまない、左馬刻くん」
「いつもの事じゃねぇか。早く行ってやれよ」
「いつも……君の優しさに、甘えてしまっているね」
「帰ってくるだろ。それだけでいい」
先生の瞳に光が灯る。マイクを構えて向かい合ったあの時と同じ、闘志の光。
「ありがとう左馬刻くん。行ってきます」
「おう」
バタン、と寝室のドアが閉まる。俺はベッドを抜け出して、いつもの煙草に火をつけた。
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