喜怒哀楽彼は悲しかった。
悪友との下らない喧嘩に夢中になっていたせいで、彼女からの誘いに気づかなかった。
「声をかけたのだが…」
もらったという珍しい菓子を食いそびれたことよりも、彼女との時間もふいにしてしまったことが、何よりも、自分で思っていた以上にショックだった。
彼は嬉しかった。
「せっかくだから貴方の分も置いておいたのだ」
と、いそいそと彼女はお茶の用意をする。
誘いを無下にした自分のことなど、放っておけばいいのに。一緒の時間を過ごせることよりも、彼女が自分のことを考えてくれたことが、予想外に胸を温かくした。
彼は怒った。
先ほど口に入れた菓子は彼女のことを好いているらしい男からの差し入れだそうだ。
「応援してくれるというのは嬉しいものだな」
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