髪切るなら付き合うよ「キスが、できないの」
姉 禰󠄀豆子の神妙な面持ちは茶化せない深刻さがあった。妹としては「やっぱりな」という気持ちでいっぱいになる。
コップに注いだソーダの気泡がぷちぷちと弾けている。夕方のリビングには私たち姉妹だけ。珍しく静かな夜だ。秋めいてきたからエアコンは消して、窓を開けている。
「手も繋げないんでしょ?」
なんでわかるのとも言いたげなお姉ちゃんの顔を、思わずじっとりした目で見てしまう。
お姉ちゃんが断りきれなくて付き合い出した彼氏だは、シュッとしていて爽やかな見た目とは裏腹に、お姉ちゃんが「うん」と言うまで引かなかったしつこいヤツだ。家族みんなうっすら嫌っている。
おしゃべり以上のことができないだろうことは初めからわかっていた。この彼氏はお姉ちゃんの好きなタイプとは違う。
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