宝箱を守る理由「なあディルック」
「なんだい?」
決して大きいとは言えないベッドで同じ布団にくるまり、大事そうに抱き締められながらガイアは口を開いた。
「小さい頃の話を掘り返すようであれなんだが…お前さんの宝物って、結局なんなんだ?」
頭を撫でる手が止まる。宝石よりも美しく澄んだ星がディルックをじっと見つめて、予想はついてるんだぜ、と目を細めた。
「モンド全てが宝物、とかだろう?昔から何かと規模がデカいもんな」
何処か寂しそうに、けれどそれで良いとでも言うように笑うガイアの両頬を手で包んで優しく口付けを落とす。唇を離すとガイアは困ったように眉尻を下げた。
「おいおい、今そんな雰囲気だったか?」
「大事な宝物にキスをしただけだが」
暫くの無言。ガイアは混乱しながら首を傾げてディルックを見つめる。
「僕はモンド全てが宝物な訳じゃない。ガイアが宝物なんだ。……宝物がいるから、宝箱であるモンドを守ってるんだよ」
「む、昔から…変わらずに…俺が?宝物?」
「そうだ。僕たちが決別したあの後も変わらず、君が宝物だよ」
暫く見ていなかったディルックの優しい微笑みに、ガイアは胸が高鳴る。義兄弟から恋人へなっても尚見なかったその笑みが、初めて蟠りを解いた気がして嬉しくなった。
「改めていうと何だか気恥ずかしいな…」
「はは、もっと恥ずかしい事しているのに?」
ガイアの腕がディルックの脇の下を通って背中に回される。ぴったりと素肌同士が密着して、炎元素の体温と氷元素の体温が穏やかに馴染んでいく。
「そうだね…うん、僕たちはいつも言葉足らずだったのかもしれない」
「今更だな…特にディルックは言葉より先に体が動いてる上に言葉を省きすぎだ」
「君は口が達者すぎるのに、大事なことが抜けてる」
お互いの短所を挙げてくすくすと笑い合い、明日から改善していこう、と約束して幸せな眠りについた。