∞【Day.1】
AM2:00
──外は暗く、街灯だけが道を照らしている。
夜目が利くこの身体は、独りで外を歩くのに都合がいい。
俺の事を知るヤツらは寝ているか家の中。
何も偽る必要のないこの時間帯は、眠れぬ夜を過ごすのにうってつけだ。
騒がしい声は無い。
虫の声と、自分の足音、そして小さく聞こえる風の音だけ。
中にいるアイツは既に寝ている。
自分だけ眠るに眠れず、この時間を無意味に過ごしている。
眠れない理由が分からない。
寝ようと目を瞑っても、言葉にし難い気持ちが溢れ出てくる。
それは、過去の自分……忘れてしまった記憶のせいなのか、この身体を使う寄生生物の分泌する成分によるものなのか……分からない。
ただ1つ分かるのは、今日も陽が昇るまで眠れぬのだろうということ。
今日も陽が昇れば眠りにつけるのだろうということ。
それ故に、明日も夜に目を覚ますのだろう。
【Day.2】
記憶が薄れてきた頃に必ずある夢を見る。
あの時と同じ情景の夢を。
銃を持った手を撃たれ、慌てて口にした言葉は銃声によって掻き消される。あの時の事を夢に見る。
夢を見ている時は夢だと気付かず、あの時と同じことを繰り返す。
何度見ていても夢だと気付かない。
起きて夢だったと知る。
だが、あれは夢ではない。
現実だ。
実際に起きたことが夢の中で再現されているだけ。
夢だけど、夢じゃない。
起きたとて夢だったと安堵は出来ない。
見る度に、そのせいでこうなったのだと痛感する。
日に日にアイツへの復讐心は膨れ上がってゆく。
何年も前の出来事でも、昨日あった事のように感じる。
俺の復讐が色褪せる事など無い。
だが、何年も毎日この思いを続けるのは疲弊する。
そろそろ楽になりたいと、考えるのをやめようと思う度に、
また、あの夢を見る。