喜怒哀楽はない方が生きやすい楽しい事があればその分落ち込んだ時の落差が激しい。
常に心を静かに保つには、無駄な事は考えず、むやみに物事を口にしない事が原則。
これが、含光君が生きてきた中で学んだ教訓である。
回廊で藍忘機は足を止めた。
遠目から、一点を見つめる。夜狩から帰ったばかりなのか、多少汚れた衣服の弟子達と魏無羨がいた。先頭にいた魏無羨は後ろを振り向き、子ども達に先に着替えて身を綺麗にしてから指定した部屋に来るようにと指示をする。
皆が去ったのを確認した彼はくるりと身を翻し、藍忘機の所へ向かって走り、飛んだ。スタッ、と華麗にちょうど藍忘機の目の前に着地した彼は、ツイと人差し指で含光君のあごをなぞる。
「そんなに熱い視線を投げられると、いたずらしたくなるな」
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