特別でないただの一日「……男二人でホールケーキとかふざけてます?」
玄関を開けると唐次が白い箱を抱えていた。
世にいうクリスマスイブ。もうプレゼントを心待ちにする歳でもなくなった。
「一人でホールケーキよりはマシだと思わないか」
なるほど、確かにと納得しそうになった。だが、一人でクリスマスを過ごすことと、男二人でケーキをつつく絵面と、どちらが一体マシだろうか。
いわく、仕事の取引先の関係上、ケーキを購入しなければならなかったらしい。
初めて見る大きな白い箱に興味がないわけじゃない。
毎年、父と二人では持て余すからと、ホールケーキではなくカットケーキを一つずつだった。
「……な、ほら、チキンもあるから」
ビニール袋を持ち上げて、ガザガサと中身を取り出す。派手な紙袋に包まれた大手コンビニの有名な鶏肉だった。
942