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    陽炎@ポイピク

    ジョジョ5部プロペシメインです。パソコンもペンタブもないので携帯撮り&アナログ絵しかうpしません。
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    陽炎@ポイピク

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    二人がご飯作って食べるだけの現代AU左右なし全年齢ラーマとビーム

    炊き込みご飯ドスティ秋は様々な食材が旬を迎える。
    ラーマは日本の秋が好きだった。暑過ぎず寒すぎず、湿度も丁度良く、近所の公園の紅葉が色付き、スーパーに行けばビームの好きな茸が並んでいるからだ。
    ビームは日本に来て初めて食べたのが野菜と茸の炒め物らしい。最初はその見た目に食べられるかと危惧したそうだが、一口食べて大層気に入って、秋の間は定食屋でずっとそればかり頼んでいたようだ。
    ラーマは籠の中に様々な茸を入れていく。エリンギはなるべく大きさが同じものを手に取って、私とビームみたいだなと微笑んだ。すっかり顔馴染みになった店員がにこやかに会計を済ませていく。ラーマは漸く使い方に慣れてきたエコバックに食材を詰め込んでから携帯でビームへメッセージを送った。
    ”もうすぐ家に着くよ”
    ビームはバイク工場で働いてる為すぐに返信が返って来る事はない。それでも夕方頃にメッセージ通知音を聞くとラーマは嬉しさで口角が上がってしまう。
    ”今仕事終わった 腹減ったよ”
    ビームは食べる事が好きだ。それでも最近は真っ直ぐ家に帰る事が多い。いつもの定食屋も悪くないが、ラーマもまた家で他の客を気にする事もなく語らい合いながらビームと食を共にするのが楽しみだった。
    二人で決めたシェアハウス。互いの職場から近いが、都会の喧騒とは打って変わって閑静な住宅街の一角にあった。
    ラーマは帰宅するなりキッチンへと直行する。
    エリンギ、舞茸、ぶなしめじ、形も特徴も違う茸を前にシャツの袖を捲った。
    エリンギは包丁で短冊のように切っていく。
    これはシンプルなバター炒めにしよう。エリンギの旨みにバターの香りがとても合う。
    舞茸は、オイスターソース炒めにしようか。彩りを加える為に、青梗菜と細切りの人参も加えよう。石づきを取って手で丁寧に割いていく。
    ぶなしめじは……折角だ、炊き込みご飯にしよう。
    ラーマは炊き込みご飯がお気に入りの料理だった。
    ビリヤニと作る方法は殆ど同じだ。茸でビリヤニ作るのも悪くないが、おかずと合わせる為にはやはり炊き込みご飯だろう。炊き込みご飯の元の配合は意外と難しい。濃くし過ぎるとシメジの香りと旨みが消えてしまうし、薄くし過ぎると味がボケてしまう。
    ビームの帰宅時間に炊飯器のタイマーを合わせながら、ラーマはおかずを作っていく。折角だ、えのき茸のナムルも足そう。
    ラーマはこんな風に誰かの為にレシピを考える事に楽しみを見出している自分にすっかり変わったなと苦笑した。
    母の作る魚カレーは好きだったけれど、姉が家に居た頃は末の子の運命なのかいつも最後で、殆ど煮崩れた魚しか入っていなかった。ひもじさと惨めさな苛まれるラーマを父だけが気に掛けて蒸しパンを食べさせてくれたが、忙しい人だったので殆ど家におらず実質女に支配されている家庭だった苦い記憶がある。姉達はまだいい。嫁として誰かに貰われれば、それで安泰なのだから。だが、ラーマは良い大学を目指して努力した。家の為ではない。早くこんな環境から抜け出したかったのだ。だが成功し会社で出世を納めてもラーマに待っていた運命は日本への転勤であった。それだけ優秀な人材だと上司からは太鼓判を押されたが、ラーマにとって日本という国はインドから遠く離れた東方の地でしかなかった。
    正直、日本での生活は疎外感が強かった。
    彼等は肌の色で差別したりはしないが、他人への関心のなさは辟易する時もあった。仕事上の付き合いはあるが、踏み込んで来ようとはしない。両親の過干渉にうんざりしていたラーマにとって始めこそそれが居心地良かったものの、次第に淡白な同僚達と距離を置くようになった。
    だからこそ、ビームと会ってすぐに気が合ったのは幸運だったと感じる。以前住んでいた社宅に半ば同居のような形で彼が入り浸るのを受け入れていたのも、相当気を許していたからだ。
    一緒に暮らすようになってからは、生活リズムが違くても、なるべく夕飯は一緒に食べるようにしようと決めた。
    ――炊飯器からは茸の匂いと麺つゆの美味しそうな香りが蒸気と共に鼻を擽る。そろそろ炊き上がりの時間だろう。
    丁度その時、バイクのエンジン音が外から聞こえてきた。
    「悪い兄貴!ちょっと道が渋滞してた!」
    「いいんだ。少し蒸らした方がより美味しくなるからな」
    ラーマの言葉にビームは目を輝かせる。
    「この匂い、茸の炊き込みご飯か?」
    「正解だ。さぁ、早くこっちに」
    ラーマはビームの手を取りキッチンへと連れて行く。
    ビームはまずは手を洗わねぇと!と台所の水道で手を清めていた。手袋をしてるとは言え秋風ですっかり冷たくなっているというのに。ラーマは内心でいつか水道をリフォームして暖かい湯も出るようにしようと決意したものだ。
    「わっ!すげぇ豪勢なおかずだな!」
    テーブルに並べられた料理の品々にビームは声を上げる。
    「そうか?ただのキノコ尽くしのおかずだろ?」
    もう少し統一感を持たせた方が良かっただろうか、とラーマは鍋の卵スープをコンロの火で温め直す。勿論このスープにも椎茸が入ってる。
    「でも俺、すげぇ嬉しい」
    満面の笑顔にラーマの表情も綻ぶ。この笑みを見れるのならば作った甲斐があるというものだ。
    「ほら、炊き込みご飯も丁度いい感じになったぞ」
    ラーマはビームへ茶碗を渡す。ビームのご飯は共同生活を始めたばかりの頃は加減も分からずラーマが盛り過ぎてしまったものだから、今はこうして自分でよそるようにした。
    一緒に暮らすというのはそういう事だ。どんなに仲の良い親友同士でも、お互いの為にルールを加えたり、工夫をしたりする所は、料理にも似ている。
    「なぁなぁ兄貴、おこげも貰っていいか?」
    そわそわとした口調のビームにラーマは目を細める。
    ビームは甘えるのが上手い。無自覚なのだろうが、こうやってお伺いを立てる所は別に処世術などではなく自然の振る舞いなのだろう。
    「私の分もちゃんと取っておいてくれよ?」
    そんな風に釘を刺さなくてもビームはラーマの分を残してくれるだろうが、ついラーマは男の兄弟がいたらそうしたであろう振る舞いをしてしまう。
    「やっぱりおこげって最高だよなぁ。最初は焦げ付いてちょっと硬いご飯なんて、って思ったけど」
    ビームはコンロの火を止めて椎茸と卵のスープを取る。
    統一感はないが、見事に茸を使った料理ばかりが食卓へ並んだ。本当なら松茸の天麩羅もあれば最高なのだが、ビームはこんなささやかな馳走でも美味そうに食べてくれる。
    ラーマも炊き込みご飯を頬張った。
    しめじは噛めば噛む程食感と味わいが出る。
    おこげの部分はちょっと味が濃い目でそれがまたスープやおかずに箸を伸ばさせる。ラーマはビームと他愛のない会話をしながらもあっという間に料理を食べ終えたのだった。
    いつものように二人並んで片付けとシンクで皿洗いをする。
    「君がゴム手袋使ってくれ」
    「えっ、でも」
    ビームはラーマの手とゴム手袋を交互に見遣った。
    これからの季節の為に買い足す必要があるのについ忘れたままなのは失敗だった。
    「私は皿を拭いたり乾燥機に入れたりするだけだから」
    ラーマの言葉にビームが小さく頷き返す。
    時折ずっと一緒に居て喧嘩しないのかとお節介なご近所さんから聞かれたりもするが、こうやって折り合いをつけているから上手くやれているのもあるのだろう。
    「兄貴、次どっちも休みの日にはキャンプ行かねぇか?」
    ビームは食器用洗剤をスポンジに染み込ませながら徐に切り出した。
    「ふふっ、紅葉狩りか?悪くないな」
    「それもあるけど――」
    ビームはラーマに肩をほんの少しだけ凭れさせる。
    「……焚き火を囲んで、焼き芋とか、焼きマシュマロとかさ、やってみてぇんだ」
    そんな可愛らしいおねだりをされてしまったら、断る訳にもいかないだろう。
    「ああ、行こう。君とならどこにでも」
    預けられた肩に手を置いてビームを引き寄せる。
    ラーマはきっと最高の旅になると次の休日の楽しみに思いを馳せるのだった。
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