3角に愛を込めて最近のペッシのマイブームはおにぎりを作る事だ。
油で揚げねぇアランチーニみてぇなモンで、片手で食べられるからオレは気に入ってる。
最初こそ形は崩れかけで米もボロボロだったおにぎりだったが、今度こそ綺麗な形のやつを作ると意気込んで幾つも作る内に上達していった。
今じゃペッシのおにぎりは、米の量が多すぎず少なすぎず、適度なふっくらさと硬さがあって、小腹を満たすには丁度いい大きさで、綺麗な三角形に握られた、適度な塩加減のおにぎりだ。
ペッシはその中に色んな具を入れる。
鮭、おかか、ツナマヨネーズ、ちりめんじゃこ……。
ペッシ曰く『魚を食って貰う為』らしい。
健気じゃねぇか、え?「魚」も食っちまいてぇな。
春の陽気の中、オレ達はナポリ郊外の公園へと向かう。車の荷台にはレジャーシートと、おにぎりを沢山詰め込んだバスケット。
「ピクニック、楽しみだなぁ」
カーステレオから流れるビーチ・ボーイズの『Wouldn't It Be Nice(素敵じゃないか)』を歌いながらペッシが笑う。
「年をとるって素敵だよね?もう待たくていいからね?一緒に生きてくって素敵だよね?僕らの生きるこの世界でね」