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    BORA99_

    🦩関連の長い小説を上げます
    @BORA99_

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    POIPOI 57

    BORA99_

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    ドフ鰐
    ドフコラロ海軍if+⑦武海鰐
    人型兵器を巡る一悶着と女々しい若様
    ※捏造過多&オリジナル設定&ご都合主義
    ※風味程度のドフ鰐

    DUSTBOX燃える。熱い空気が肺を焼いた。
    燻る煙の嫌な臭いが鼻の奥に残る。
    蔓延した黒い煙に遮られ、視界は最悪だ。
    "何も"残ってはいない、街があった筈の地面の上で無数に積み上がる"生命"の入れ物。

    「……なんだよ、これ」

    千切れた腕の残骸と、地面に転がるぬいぐるみに、ロシナンテの口元からまだ長い煙草が落ちる。
    視線の先で、長い刀を鞘に納めたローの足元に、まるで、人間を真似たような"出来損ない"が、バチバチと目に見える電流を纏って崩れた。
    (……"PX")
    ローはその、人間の形をした鉄の塊に掘られた文字を見下ろして、思わず瞳を細める。
    その2文字は、よく"知っていた"。
    だからこそ、拭えぬ不信感に眉をひそめたのである。
    突然の出動。軍艦の中で聞いた状況の概要は、"人型兵器がグランドラインのとある島で破壊行為を行っている"などという、理解できない内容だけだった。
    「……こんなの、どっから、」
    燃えていく、少女の髪を眺めたロシナンテが、揺れる瞳のまま呟く。
    それを振り返ったローは、消火活動に走る海兵達へと視線を戻した。
    (……そんなの、)
    "平和主義者"の名を持つ兵器が、どこから来るのかなど、答えは"一つ"。
    その脳裏によぎるのは、"身から出た錆"だ。
    また、何か良くない事が起きるような、不吉な予感を飲み込むように、ローは破壊した"人型兵器"を軍艦にある空樽と入れ替える。

    「今度は何を……仕出かしやがった」

    ******

    「島はほぼ壊滅。生存者は未だ0……。まったく、頭が痛いよ」
    「フフフフッ……!頭が痛いで済めばいいがな、おつるさん。あの島で暴れまわった"人型兵器"にゃァ、"PX"の文字があったそうじゃねェか。科学班のスノッブ共……今度ァ一体何しやがった」
    中将数名の率いる軍艦が、偉大なる航路後半に位置する平凡な島へ出動してから、丸一日。
    突然平和な島に現れた"人型兵器"を破壊、回収する任務に就いている。
    その件で僅かに騒々しくなった本部内では、残っている将校達に招集が掛かり、"中将"ドンキホーテ・ドフラミンゴも例に洩れず、自分の執務室を出た。
    その途中、ばったりと出会ったつるの隣で、大層面白そうに、今朝聞き齧った話を口にする。
    「島に現れた"人型兵器"は……海軍本部で管理していた機体じゃないんだ。そうやって、簡単に仲間を疑うのはおやめ」
    「そうだったな。ウチにあるのは"人間兵器"。島に現れたのは"人型兵器"だ。雲泥の差だな」
    嫌味たらしいその台詞に、辟易としてため息を吐いたつるは、よく晴れた空を窓から眺めた。
    その下では、何も知らない若い海兵達が元気に鍛錬に励んでいる。
    あまりにも、現状と乖離した光景を、思わず美しく感じた。
    「人間を兵器にするなんて、わたしには理解できない領域だよ」
    「フフフフッ……!どんなに優秀な狙撃手でも、実戦になりゃァ命中率は下がる。兵器を人間に近付けるのは、割と合理的な判断だ」
    「……だからお前は、中将止まりなんだ。ドフラミンゴ」
    「オーオー、手厳しいな」
    畳張りの会議室の決められた席に座るブリキの兵隊達を見回して、ドフラミンゴもその中に混じる。
    毎度、会議の議長を務めるブランニューは、ドフラミンゴとつるが座ったことを確かめてから、黒板に大きな海図を広げた。
    「既に耳に入っているとは思いますが……」
    酷く、困惑したように、ゆっくりと口を開いたブランニューは、海図の一箇所を指し示す。
    カームベルトの丁度上に、見覚えのない島が一つ。
    それを囲むように赤いインクで付けられた丸印を指して、困り果てたように、集まった将校たちを眺めた。
    「"とある島"から持ち出された"人型兵器"が、偉大なる航路後半の島を壊滅させました」
    ゆっくりと降ろされたロールスクリーンの白に、這い出した映像電伝虫の瞳が数枚の写真データを映し出す。
    広まる火の手と、おびただしい数の死体。その中心に佇む鉄の塊は、一応、人の形をしていた。
    「この人型兵器は、かつて存在した"無法"の研究チーム……"MADS"時代にベガパンクが開発したものです。謂わば、パシフィスタの前身となります」
    「フフフフッ……!それで、"PX"か!そりゃァ世論が傾くなァ……!」
    「黙って聞くんだよ、ドフラミンゴ」
    すぐに茶々を入れる、困った中将をたしなめてからつるはゆっくりと視線を上げる。
    その"人型兵器"の確保は既に、終わっている筈だ。
    それでもこうして集められたということは、何か処理しなければならない事が未だ残っているということか。
    「その"人型兵器"はどこから持ち出されたんだい」
    「はい、この兵器はかつてMADSが保有し、"廃棄場"として使用していたとある島から持ち出された模様です」
    ブランニューが手際良くロールスクリーンを元に戻し、再び現れた海図の赤い丸印を指した。
    全員の視線が海図に集まり、その丸印を一様に眺める。
    「数々の倫理を超越した兵器の類を開発していたMADSは、失敗作をこの島に廃棄してきた。今回の人型兵器のように、未だ作動しているものも多数ある模様です。」
    「オイオイ、そんな島があるなんざ初耳だぜ。ベガパンクを買収した時から今まで放置していたのか」
    「島は高い壁に覆われ、ベガパンクの作った強固な鍵が掛けられていた為、当時海軍本部はこの島を"監視対象"に指定するにとどめたそうです」
    「……強固な鍵が掛かっているのに、中から兵器が盗まれたのか」
    明らかな、海軍本部の失態よりも、聞き捨てられない台詞が一つ。
    ドフラミンゴは訝しげに細めた瞳をブランニューに向けた。
    「鍵は……ベガパンクを買収した時からこの海軍本部に保管されていました。その鍵は盗まれてはいない。つまり、鍵の複製が存在し、誰かがそれを保持している可能性が高い」
    世界を揺るがしかねない、"出来損ない"の兵器を、どうこうできる人間がいるという事実に、将校たちは呆れたように顔を顰める。
    その集団の中で、ドフラミンゴはゆっくりと顎を擦った。
    「"失敗作"とは何も、"威力が低い"ということでは無い。早急に対応しなければ、世界を滅ぼしかねない兵器が島から流出する可能性があります。どこの誰が鍵を持っているのか、闇雲に探し回る事はしません。今回の任務は……」
    ブランニューが一度言葉を切って、任務の概要が書かれた書類を回していく。
    その紙切れに、見知った名前を見つけた。
    (……"鰐野郎")

    「今回の任務は、今使用している鍵の"無効化"及び、新たな鍵の"構築"です」

    ******

    『このカードキーの刻印を書き換え、新たな鍵を作り直す。実行するのは、お前だ』

    かつて存在した無法の研究チーム。
    その馬鹿共がゴミ捨て場として使用し、数々の失敗作を遺棄してきた島の鍵だと見せられた物は、樹脂のような、硬いカードだった。
    表に刻印された謎の模様が鍵穴と一致し、鍵が開く仕様だそうだ。

    「"サー"・クロコダイル様!出港の準備が整いました!」

    軍艦の下で海を眺めていた王下七武海"サー"・クロコダイルの元に、顔も知らない海兵が走りより、求めてもいない敬礼を見せる。
    今回招集が掛かったのは、王下七武海の中でもクロコダイルだけだった。
    (……何故、おれなのか)
    破壊の限りを尽くす兵器類の目を掻い潜るには、大人数は都合が悪いというのは分かるが、海兵達は島の外で待機というのも胸糞が悪い。
    それでも、クロコダイルがこの任務に乗ったのには訳があった。
    (……ベガパンクの研究成果の軌跡)
    一瞬で、英雄面を捨てたその口元に、鋭い犬歯が覗く。
    あの枯れ果てた王国に軍事国家を築く為、探し求めている"古代兵器"が、現代の頭脳と進歩に劣る可能性が無いとは言えないのだ。

    「鰐野郎……」
    「……何かね、"中将殿"」
    突然、明るい太陽の日差しが遮られ、クロコダイルの顔に影が掛かる。
    面倒臭そうに振り向いたその顔の前に翻ったのは、白いコートだった。
    「お前、何を企んでやがる」
    開口一番、ナンセンスな台詞を吐いた"中将"ドンキホーテ・ドフラミンゴに、クロコダイルはうんざりとため息を吐いて見せる。
    この男は、出会った時からずっと、センスが無いのだ。
    「それはこっちの台詞だぜ、フラミンゴ野郎。何故、海兵を島に入れない」
    クロコダイルに課せられた任務は"二つ"。一つは、島内中央に位置する"管制塔"へ入り、そこにしか無い機械で鍵の刻印を"書き換える"事。
    もう一つは、島の入口に作られた門の脇にある監視塔内で、鍵穴を新しい刻印に適応させる事だ。
    それぞれのやり方は、ベガパンク自ら作成したマニュアルで理解はしている。
    難しいとは思えないその任務を、外部に委託したその真意を、クロコダイルは計りかねていた。
    「おれも知らねェんだよ。なァ、鰐野郎。お前この任務を何故受けた……?明らかに、海軍本部は懐の兵力を減らさないよう、七武海に対処を押し付けているじゃねェか。テメェ、そういうの嫌いだろ」
    「クハハハ!テメェがそれを言うか、中将殿。別に、報酬も悪くねェし……何より、暇だったのさ。アラバスタは平和でね」
    ゆっくりと踵を返して歩き出したその腕を、ドフラミンゴの大きな手のひらが掴む。
    駄々を捏ねる子どものように、固く口を結んだその表情を、クロコダイルは嫌そうに見上げた。
    (……その"顔"が、一番、"嫌い"だ)
    思っても言わないその心中を、目の前の男が悟ることはない。
    それを"悟らない"から、その顔が嫌いなのだ。
    「……島を壊滅させた"自走式"人型兵器は、体温を感知して破壊行為を行うらしい。体温がある限り、その破壊を止める装置は無い。だから、捨てたそうだ」
    "抗えない"、一種の"抗力"とも呼べる顔で言うドフラミンゴの言葉を、クロコダイルは辟易と聞く。
    その顔色に負けて、甘やかした事実が無いとも言えないのだ。
    「奴ら、ただ兵器の残骸が積み重なったゴミ捨て場を想像しているが、あの島はそう軟弱なモンじゃねェんだよ。一体流出しただけであのザマだ。なァ、鰐野郎。あの島には、世界の存続すら揺るがす兵器がゴマンと放置されている。しかも、それをコントロールする者はいねェ。あの"頭でっかち"すら、その手綱を握れなかった。お前、今からそこに、放り込まれるんだぞ」
    その"抗力"に、気色の悪い名前を付けると、"何も"出来なくなる。
    それを理解しているクロコダイルの腕が、ゆっくりと崩れ、ドフラミンゴの手のひらの中には僅かな砂が残った。

    「"人間嫌い"はどうした。なァ、フラミンゴ野郎」

    だから、いつも、この男のその可能性に縋る。
    奴は、結局、人間を憎んでいる筈なのだ。
    葉巻の煙越しに、サングラスの奥で揺れる瞳を見た気がして、クロコダイルは今度こそ足を踏み出した。
    それを見送るドフラミンゴは、乾いた手のひらで額を撫でる。

    「……馬鹿言え。殺す順番ぐらい、おれにも有るんだ」

    ******

    『ジョオオカァアア!!聞いてくれよォオオオオ!!ビッグ・マムの奴がはやく"巨人化薬"を寄越せとうるせェんだ!!でもよ、子どもの検体もそう簡単には手に入らねェだろう?もう何人かそっちで都合が付けてくれよ!!』
    「フフフフッ……!"シーザー"、そういうのは"G5"に言ってくれ。優秀な"基地長"が居るだろう。おれからも連絡を入れておく」
    電伝虫で呼び出したナンバーは、すぐに呼び出し音が途切れ、大きな泣き言に変わった。
    その"癒着"が海軍本部にバレれば事だが、それがバレるような組織ならば、最初からこんなところには居ないのである。
    「シーザー、今日は聞きたい事がある。テメェがかつて所属していた"MADS"のことだ」
    ドフラミンゴが手っ取り早く、あの島の情報を手に入れるのにうってつけな"元"同僚を真似た電伝虫は、あからさまに嫌そうに口元を歪める。
    「"MADS"がかつて所持していたカームベルト上の島だが……お前、そこの鍵を持っているか?」
    『鍵ィ?持ってるぞ!というかこの前も行ったばかりだ!ベガパンクの奴がこっそり捨てやがった、おれの傑作があの島には沢山あるからな!!』
    「……」
    何となく、嫌な予感がして、ドフラミンゴは一度押し黙った。
    この男はたまに、ドフラミンゴの範疇を超えたところで動いている事がある。
    「……その時、何か変わった事はなかったか」
    『変わった事……?いや?一体人型兵器の出来損ないが外に出たが……海に落ちたからそのまま放っておいた!どうせ沈むだけだ!特に問題はねェさ!!』
    「……没収だ」
    『あァ?』
    嫌な予感は見事に当たった。
    しかし、海に落ちた兵器が海を渡ったのならば、あの島の危険度は格段に上がる。
    ドフラミンゴは"諸悪の根源"に低い声で宣告をし、未だ何も理解していないシーザーは、間抜けな声を上げた。
    「鍵は没収だ……!テメェが逃したその兵器が島を壊滅させたんだぞ!お陰でこっちはいい迷惑だ……!鍵は没収。使いたい時はおれに許可を求めろ」
    『ま……待ってくれよジョーカー!!あの島には……』
    「口答えをするなよ……シーザー!科学班をクビになり、脱獄までしたテメェをパンクハザードに匿ってやったのは誰だ?!テメェを海軍本部に売ってもいいんだぞ……!」
    『……ハイ』
    「すぐに鍵を受け取りに行く。準備しておけ。鍵さえあれば、あんな島に危険を冒してまで入る必要はねェんだからな」
    『……あんたもあの島に入るのか?!やめといた方がいいぜ……!』
    「あァ?こうなったのはそもそも……」
    まただ。また、よく当たる"嫌な予感"。
    そもそも何故、海軍本部はあの危険な島を放置したのか。
    狂気の科学者はその奇妙な虫の先で、言いようのない顔をしていた。
    『あの島は……』

    ******

    「ロシー!!ロシー居るか?!」
    「……ドフィ?!どうした?!」
    人型兵器の回収を終え、本部に戻ってきていたロシナンテは、自室でテイクアウトしてきた弁当を食べている最中だった。
    一緒に戻ってきたローの目の前には大きなおにぎりが並んでいる。
    あまり見覚えのない、焦ったような表情で飛び込んできた"兄"の姿に、弁当の中身がテーブルに全て落ちた。
    「……おれの昼飯が!!!!」
    「落ち着けコラさん!!3秒ルールだ!!!」
    「……楽しそうでいいな、お前ら」
    平和過ぎる騒動に、些か冷静さを取り戻したドフラミンゴは、ふらりと空いていたソファに腰掛ける。
    深くため息を吐いて、ゆっくりと額を撫でた。
    「……緊急事態だ。"MADS"の所有するあの島は……」

    『"人間嫌い"はどうした。なァ、フラミンゴ野郎』

    (ああ、そうだ)
    嫌いだ。奴ら、いつだって、まるで神のように、尊重する生命を勝手に選ぶ。

    『あの島は、悪魔の実の能力が使えない……!』

    シーザーの助言、海軍本部が買収したベガパンク。この場所で、保管されてきた鍵。
    ここの人間が、それを、知らないとは思えない事実。
    「……それじゃあ、ワニ屋は、どうなる」
    「そもそも……奴らに鰐野郎をあそこから出すつもりは無ェんだ。鍵さえ書き換え、あの島に入れる者が居なくなれば、それで体面は保てるからな……。おかしいと思ったぜ。海軍の失態とも呼べる事件の後始末に、何故部外者を入れる?あの島の存在自体、世に出すのは得策じゃァねェ筈だ。あの島に、海賊なんざを関わらせる理由は一つだ」
    「鍵を書き換えさせて、そのままクロコダイルさんを切るつもりか……」
    「まずいな。ドフラミンゴの友達が0になるぞ」
    「確かにな。それはまずい」
    「お前らおれを傷つけて楽しいか」
    ああ、ままならない世の中だ。
    尊重する生命を、選べる側に、早く、早く行かなければならないのに。
    その前に、滑り落ちてしまった、汚いベッドの中で死んだ"あの人"。
    歩みを止めれば、また、意図しない誰かが死ぬのだ。
    「……ロシー、ロー。お前ら、例の島に向かえ」
    「お前はどうするんだ、ドフラミンゴ」
    「おれは、"もう一つ"の鍵を回収する。それがあれば、鰐野郎が鍵を書き換える必要は無くなるだろう。現場はセンゴクが仕切っているから、おれが鍵を入手すると伝え、作戦を中止させろ」
    「ドフィ……!お前またそうやって……!!」
    中将の権限を超越し、"兄"は本来見る事ができないモノを見てしまう。
    もう一つの鍵の在処がどこなのか、それを知る術は、きっと大きな声では言えないのだろう。
    「ロシー……。もし、」
    それなのに、たまに、まるで"人間"のような顔をするのだ。
    その可能性に全てを懸けて、ロシナンテは"あの時"の銃声に目を瞑り続けている。

    「もし、鰐野郎が既に島に入っていたら……お前に、頼みたい事がある」

    ******

    「ハァ……ハァ……!クソっ!」
    足場が悪い。
    統率も無ければ、意志も無い。ただ破壊行為のみを植え付けられた鉄の塊。
    見上げる程高い壁に覆われたその島の中に、生物は居なかった。
    時折吹き荒れる風や、力尽きて落ちた鳥に反応し作動する、兵器にすらなれなかった鉄の塊達が跋扈している、まるで、地獄のような島。
    地図通りに管制塔を目指してはいたが、クロコダイルの動きを感知し、いちいち作動する兵器の山に思うようには進めなかった。
    (……それに)
    島の中心地に近付くにつれ、体が砂に変わる速度が遅くなっているように感じる。
    しかし、その原因を探るには、この島には脅威が多すぎた。
    (まさか、簡単に生きて返してくれるとは思っても居なかったが……これは想定外だ)
    いつだって、無法者の生命の価値は低い。
    それを理解した上で、掴みにいかなければならない物があることも知っていた。
    「……ッ!」
    張り詰めた神経に、がなる、危機を知らせる本能の類。
    視界の端で光る何かを知る前に、クロコダイルの体を砂が巻く。
    (……駄目だ、)
    その時、明らかな"異変"が首を擡げ、クロコダイルの意思に反して、砂と化すのを止める半身。
    それでもその体を動かしたのは、ただの"意地"だ。
    「……グゥ、」
    横に転がったクロコダイルの左手で、鉤爪が砕ける音がする。
    鉤爪を砕いた"張本人"、骨組みだけの鉄の体は、人間の真似事をしているようにしか思えなかった。
    ゆっくりと、地面から這い出て立ち上がる、巨大な人型兵器の口元に、妙に光が集まっていく。
    「……どいつも、こいつも、」
    低い声で呟くと、肩に掛けていたコートを脱ぎ去り、締めていたタイを外した。
    "生きようと"しなければ、この海ではいともたやすく命を落とす。

    『殺す順番ぐらい、おれにも有るんだ』

    何よりも、あの馬鹿の"恨み"の一つに成るのだけは、死んでも御免なのだ。
    クロコダイルは地面に落ちた鉤爪の残骸を拾い上げ、パッと明るく光を上げた眼球に、その"出来損ない"を映す。

    「……このおれを、誰だと思っている」









    「センゴクさん……!もう一つの鍵はドフィが手に入れる!!作戦は中止だ!!クロコダイルさんは?!」
    「ロシナンテ……?!ロー!!何故お前達がここにいる?!」
    一方、高い壁の外に張られた陣営を見つけ、その簡易テントの中に飛び込んだロシナンテとローは、島の地図を広げたセンゴクに飛び付いた。
    突然現れた意図せぬ二人に、思わず言ったセンゴクも無視してクロコダイルを探す。
    「奴はもう、島の中だ」
    「……遅かったか!行くぞ!コラさん!」
    「ああ……!」
    「バカモン!!そんな事を許可できるか!!島の中に入るのはクロコダイル一人だ!!」
    「それどころじゃないんですよ!センゴクさん!!あの島の中は悪魔の実の能力が使えないんだ!」
    「何だと……?!一体どこでそんな情報を……」
    狼狽えたセンゴクの、揺れた瞳を見据え、ローは簡易テーブルに手のひらを付いた。
    簡単に軋む安いスチールが、耳障りな音を立てる。
    「あんたもそれを知らねェのか。……じゃあ、この作戦を指揮しているのは一体誰だ」
    "誰か"譲りの獰猛が、センゴクの目の前で牙を剥いた。
    年々、思考の行き場があの男に似てきた青年を眺めて、センゴクは一度、瞳を閉じる。
    「ベガパンクを買収した時……わたしはこの島に信頼できる部下十名を、調査に向かわせた」
    閉じた瞳を手のひらで覆い、低い声で紡がれる台詞を、ロシナンテ達は黙って聞いていた。
    「十名中八名は壁の中で死んだ。戻ってきた二人は、わたしに報告をする前に、別の部隊へ異動となり、そのまま殉職したよ。……この島には、何か、我々が見てはいけないものがあるらしい」
    その時悟ったのは、自分の手のひらに力など無いという事と、見えないものは、見ない方が良いという事実。
    こんな事が起きなければ、この島に関わって、誰かが死ぬことはもう、無いと思っていた。
    「……だから、クロコダイルさんに全部押し付けたのか」
    「ああ、そうだ。奴はロギアの能力者だ。門を開けずとも中に入れる。そうなれば、わたしの部下がこの壁の中を見ることは100%あり得ない」
    「それでワニ屋はどうするんだ……!このまま見殺しか?!」
    「あいつは"海賊"だ……!海兵よりも、"上"のしがらみは少ない!戻ってきても、或いは……逃げ切れるかも知れん!」
    「だからって、」
    「"おれ"は……!!!」
    突然、振り下ろされたセンゴクの拳に打たれ、簡素なテーブルが大きく軋む。
    覚束ない視線を隠すように、大きな手のひらがその瞳を隠した。

    「何も捨てずに……語れる"正義"を、おれは持ってはいない……!!」

    仏の名も泣く、鋭い視線を受けて、ローとロシナンテは一度口を噤む。
    ふらりと、チェアに体を預けたセンゴクは、未だ覆われた瞳の奥で燻る明かりを遮った。
    「……だったら、」
    ゆっくりと、ロシナンテの唇が開いて、低く小さな声が漏れる。
    ロシナンテの長い腕が、ローの襟首を掴んでテントの外へと駆け出した。
    「……だったら!あんたが今日捨てるのはその"枷"の方だ!!……頼むよ、センゴクさん」
    酷い事を言っている自覚はある。
    それでも、捨てたくないのはいつだって、たった"一つ"の願望だ。

    「ドフィに……教えてやりたいんだ。……人間は、優しいと」

    ******

    「ウゥ……!く、っそ……!」
    咄嗟に、右手を出してしまうのは"悪癖"だ。
    完全に停止したと思っていた人型兵器に掴まれた右腕が、ボキリと嫌な音を立てる。
    砂利だらけの地面に転がったクロコダイルは、動かない右腕に思わず吐き捨てた。
    "こんなところで"とは、思わないようにしている。
    長生きする為に、海へ出た訳では無いのだ。
    ただ、一つ、"気掛かり"なのは、

    (……また、"夜泣き"が増えるだろうか)

    あの、大嫌いな男は、この日を夢に見て人間を恨むのだろうか。
    その女々しい思考回路が、死ぬほど、嫌いだ。
    殆ど爪先しか残っていない鉤爪の残骸を口に咥え、ゆっくりと立ち上がる。
    朦朧とする瞳の底で、悪党らしい光が宿った。
    慄くように、大きく腕を振り被った鉄屑が、クロコダイルの頭を食い千切る瞬間。

    「"サイレント"」

    何かがクロコダイルと兵器の間に割って入り、小気味良い音がした瞬間、島を覆うように半透明のドームが広がり音が消えた。
    その一瞬後、大きな岩が鉄の塊を押し潰す。

    「悪い、クロコダイルさん。……今日は、"弟"の方だ」

    振り向いて、ニヤリと笑ったその顔は、割と"兄貴"に似ているなどと、どうでも良いことを思った。
    突然現れたロシナンテが煙草に火を着けたところで、岩の陰から"弟2号"も顔を出す。
    「間に合ったか……!ワニ屋!大丈夫か?!」
    「……何しに来やがった」
    「この島、悪魔の実の能力が使えないって聞いて……!助けに来たんだ!一旦戻るぞ!ドフィがもう一つの鍵の在り処を知ってるらしいんだ。もう鍵の書き換えは必要ない」
    ロシナンテがクロコダイルの肩を支え、やっと半身を起こす。
    ローが右腕の処置を始めたところで、クロコダイルは訝しげに顔を顰めた。
    「テメェらは何故、能力が使えるんだ」
    「……"音"だ」
    添え木を当てながら言ったローの言葉に、クロコダイルは意図が掴めず思わずその白い帽子に視線を向ける。
    「ベガパンクが作り出した装置の一つだ。人間には感知する事が出来ない音域で鳴るその音は、悪魔の実の能力のコントロールを乱す効果があるらしい。その音を出す装置を開発したは良いものの、鳴り止まないという故障を起こした為、この島に捨てたそうだ。どこにあるかは知らないが……どうやら管制塔付近にあるみたいだな」
    あまりにも迷惑過ぎるその装置に、クロコダイルは疲れ果てたようにため息を吐き出した。
    そして、思い出したようにコートから飛び出たシガレットケースをロシナンテの方に蹴る。
    「火を着けてくれたまえ」
    「……ハーイ」
    口元に寄せられた葉巻にパクリと食い付き、ロシナンテの擦ったマッチで火を着けたクロコダイルは、一度大きく吸い込んで、器用にそのまま煙を吐く。
    座り込んだ男を見下ろして、ロシナンテは自分も煙草に火を着けた。
    「……とりあえずは動けるか?門までもどるぞ、ワニ屋」
    「……いや、」
    この世の終わりのような島に、たった一人、放り込まれたにしては、消えていない、瞳の中の凶暴な光。
    その赤い光を放つ瞳が、ロシナンテを向いた。
    「……鍵は書き換える。テメェの兄貴に、こんな危ない玩具を渡すのは気が引けるからな」
    相変わらず、計り知れない愛憎模様である。
    この男とドフラミンゴの関係を、そろそろ分かりやすく教えて欲しいと、ロシナンテは心底思った。

    「管制塔はすぐそこだ。テメェらも来い」

    ******

    「ロー!ロー!!お前、こんなとこで何してんだよ!!」

    鍵の書き換えは呆気なく終わった。
    管制塔内の機械はちゃんと生きていて、ベガパンクに持たされたマニュアル通りに動かすと、全く違う模様がカードに刻まれ、以前の模様は跡すら残らず消えている。
    見張りとして外に残したローの姿が見えず、大いに焦ったロシナンテと、少し焦ったクロコダイルが探し回り、やっと、その背中を見つけた。
    積み重なった瓦礫に登り、ぼんやりと立ち尽くすローに、下から声を掛けても、その視線は、聳え立つ壁に向いたまま動かない。

    「……何だ、これは」

    ローの隣に砂の塊が現れ、徐々に人の形を作り、やがて、クロコダイルが現れた。
    必死に瓦礫を登り、転びそうになったロシナンテを、ローが自分の隣に移動させる。

    落ちかけた夕日に照らされた、この島を囲む石の壁に描かれていたのは、見たことも無い巨大な王国だった。
    聳え立つ王宮と、その下に栄える街が大きな壁に彫られている。
    「あいつが描いているみたいだ」
    ローの指差す地面には、一体の"人型兵器"が攻撃対象である筈のロー達には目もくれず、一心不乱に壁に絵を彫っていた。
    今まで遭遇してきた人型の兵器より、最も人間に近いように感じるその"出来損ない"が、一体何から出来ているのか、考えるのは躊躇われる。
    実際に、この世界の"正義"の中枢は、人間を使って兵器を作り出したのだ。

    『この島には、何か、我々が見てはいけないものがあるらしい』

    "それ"が、"これ"なら、"彼"の意志をどう繋げば良いのだろうか。
    兵器としての役目を放棄し、絵を描き続けるその鉄屑を動かしているのは、ただの"欠陥"か、それとも、"人間"の意志か。

    「……戻るぞ。まだ、この鍵を鍵穴に適応させなきゃならねェ。見ててもこれが何かは分からねェんだ。時間の無駄だ」
    「あ!おい、待てワニ屋!おれが門まで送る!」
    「腕折れてんのに無茶すんなよ!ドフィに怒られる!おれが!」
    瓦礫の上からサラサラと降りたクロコダイルは、見てしまったこの世の禁忌に口元を歪めた。
    "歴史の本文"、"空白の100年"、その時代に存在していた"巨大な帝国"。
    懐に入れた、優秀な考古学者を脳裏に描き、クロコダイルは"二枚"の鍵をポケットの上から撫でた。

    ******

    「……ど、ドフラミンゴ中将?!何故ここに?!」
    「うるせェ!どけ!!」
    壁に囲まれた島の、簡素な船着き場に停泊していた軍艦の甲板に降り立ったドフラミンゴは、作戦の後始末に奔走する海兵達を押しやって、船室へと飛び込んだ。
    長い廊下を抜け、談話室に向かう。
    殺気立ったその大きな男に、恐れ慄く海兵達は青い顔で次々と道を開けていった。

    『……センゴク!作戦を中止しなかったのか!!鰐野郎はどこだ?!』
    『……それは、おれの口からは言えん』
    『……あ?』

    船着き場の簡易なテントの中で、妙に暗い顔をしたセンゴクや、ロシナンテ達と顔を合わせたドフラミンゴは、妙に寒くなる背筋に居ても立っても居られず、すぐに踵を返した。
    "談話室だ"と、その背中に声を掛けたのが、ローだったのか、ロシナンテだったのかはもう覚えてはいない。

    ("まただ")

    また、"奴ら"は、この破壊衝動に加担する。
    グラグラと揺れる視界の中、縺れるように談話室のノブを握った。

    『"人間嫌い"はどうした。なァ、フラミンゴ野郎』

    だから、嫌いなのだ。
    こうやって、自分に牙を剥くのは、いつだって人間だ。
    躊躇うように瞳を閉じて、息を吸い込み、ドフラミンゴは勢い良く扉を開ける。


    「クハハハ!君たち海兵諸君が怖くて行けないというから、このおれが遥々こんなところまで来てやったんだ。火ぐらい着けて貰わんとなァ……!」
    「は……ハイッ!!し……失礼します……!!」
    明るい部屋の中で、恐れ慄く新兵の頬を撫でる、手首から先の無い腕。
    その、見覚えのある動きに、ドフラミンゴは膝から力を失いその場に崩れ落ちた。
    「身内が厳し過ぎる。転職しようかな」
    「オイオイ、今更お出ましかドフラミンゴ君」
    あまりにも意気消沈しているドフラミンゴの背中に、ヒソヒソと新兵達が何か言うのも、既にその耳には入ってこない。
    談話室のソファにふんぞり返るクロコダイルは、優雅に葉巻の煙を吐き出した。
    「愛しいおれのピンチを、テメェ人任せにしやがっただろう。その罰だぜ」
    「……ハイ」
    「あれ?オイオイドフィ、何してんだよ。邪魔だぞ」
    「ワニ屋!センゴクさんがワインくれたぞ!帰り道飲んでくれってさ」
    パンクハザードに寄っていたなどと言えるわけもなく、ただただ項垂れるドフラミンゴを跨ぎ、弟二人が顔を覗かせる。
    ふらりと立ち上がったドフラミンゴは、クロコダイルの座るソファに近寄ると、その黒い髪を一度撫でた。
    「……何だ。気色悪ィな」
    「いや、」
    何か言おうとした筈の口元が僅かに震え、その後、結局何も言わなかったドフラミンゴはくるりと踵を返す。
    そして、困った時に見せる"癖"で、額を一度撫でるとそのまま静かに談話室を出て行った。

    (……馬鹿な男だ)

    その後ろ姿に、シニカルな笑みを浮かべたクロコダイルは、左腕の先で大きな手のひらが触れた髪を撫で付ける。
    "諦めれば"、それで、その苦悩は終わりだというのに。

    (……とっとと、辞めちまえ)

    ******

    (ああ、"駄目だ")

    談話室の喧騒を背中で聞いて、ドフラミンゴは閉じた扉を背にズルズルと廊下に座り込む。
    顔を覆う長い指に弾かれて、板張りの床にサングラスが落ちた。

    『人間を、虫けら以下に扱いやがって……!』

    『"苦しい"って……!"悲しい"って……!"辛い"って、何だか知ってるか!!?』

    『なァ……、』

    『人間ですよ、昔から』

    『兄上やめてーッ!!!!』

    ああ、ずっと、耳元でがなる声が煩い。
    いつまでも、醒めない悪夢の中で、這いずり回っているようだ。

    ("人間"に焦がれると、"不幸"になる)

    それは、ドフラミンゴが堕ちた地獄で積み上げた価値観。
    胃酸が喉に逆流する、焼かれるような感覚に、目の前が朦朧と揺れた。
    その時、床に落ちた水滴の正体を、この男は知らない。

    (……生きて、帰って来たのか)

    明日を知れないこの海で、他人にそれを思うこと自体、人間に齎された最も"厄介"な感情の動き。
    "死なれるのが怖い"、その怖れを、人は恋と呼ぶのだ。

    ******

    「……"中将"ドンキホーテ・ドフラミンゴが鍵の複製を回収した為、我々は一人たりとも壁の中へは入っていない」
    「……そのような言い訳が通用するとでも?サー・クロコダイルは満身創痍と聞いたぞ」
    「帰還する船の中で新兵をからかい、酒を飲んでいたが……。どう見ても、奴はピンピンしている」

    聖地"マリージョア"。パンゲア城内"権力の間"。
    いつだって小綺麗なその広間に、足を踏み入れた"元帥"センゴクを迎えた五名の老人は、予想とはまるで違う報告に僅かに色めき立っていた。
    「今後鍵はドフラミンゴに管理を任せ、他にも複製が無いか調査を進める。報告は以上だ」
    深く話せば、ボロが出る。
    内心穏やかでは無いセンゴクは、足早に踵を返した。
    「……センゴク、貴様、奴にあの島を任せて良いと思っておるのか」
    その背中に、呟かれた低い台詞に足を止めたセンゴクは、仏とは名ばかりの、鋭い眼球だけを向ける。

    『……だったら!あんたが今日捨てるのはその"枷"の方だ!!』

    何を"棄てる"か、そればかり考えて生きてきた。
    その後ろを付いてきて、棄てた物を拾い集めるような男が現れるまでは。
    その瞳の奥で、静かに燃える炎の在り処を、この老人たちが見つける事は無い。
    「信頼できる部下に、あの島を任せて何が悪い。そして、鍵の管理はドフラミンゴの要望でもある。……それを五老星に伝えろと言ったのはドフラミンゴ本人だ。この意味を、わたしが深く聞くのはマズいんだろう。だったら……お互い口を噤むのが得策だとは思わんかね」
    「……"智将"めが、あの男まで飼い慣らしたか」
    この海を統べる、"正義"の頂点。
    言葉を違えば、今ここでこの首は文字通り飛ぶのだろう。
    それでも、自分の正義を通すために、"棄てる"のは、たった一つの"執着"。

    「わたしはあの男の、"共犯"だ」

    この日センゴクは、自分の中で身勝手に作り出した"父親面"を呆気なく棄てた。
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    kgkgjyujyu

    INFOマロ返信(03/26)
    ※禪院恵の野薔薇ちゃんについて
    このお話の野薔薇ちゃんは、禪院家の圧により高専には通わず、地元の高校に通っている設定なので、呪術師界隈のどす黒い風習や御三家の存在を知らぬまま、知らない男の嫁になりました。(恵との約束を思い出すのは暫く先です)

    最初の数ヶ月はおそらく死ぬほど暴れたし、離れからの脱走も何度も実行しておりましたが、離れの周りには恵が待機させた式神が野薔薇ちゃんの存在を感知した際に、即座に知らせる為、野薔薇ちゃんが離れから逃げられた試しはないです。
    なので、恵が訪ねてきても口はきかないし、おそらく目も合わせなかったとは思います。
    恵は、自分が愛を与え続けていれば、いずれは伝わるものと、思っている為、まったく動じません。

    ★幽閉〜1年くらいは
    恵に対する愛はない。けれど、野薔薇ちゃんが顔を合わせるのは恵だけなので、次第にどんどん諦めが生まれていきます。ちなみにRのやつは4年後なのでこの段階では身体に触れてすらいない。毎日、任務のない日は顔を見せて一緒に過ごす。最低限の会話もするし、寝る場所は一緒です。時間があるときは必ず野薔薇ちゃんの傍を離れません。


    2回目の春を迎えても、変わらない状況に野薔薇ちゃん 1202