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    BORA99_

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    BORA99_

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    ◆11月CPなしWEBオンリーにて頒布予定のDQ脱獄本のサンプルです◆
    第一話:脱獄して街を目指すDQファミリー
    ⚠全て捏造です
    ⚠原作程度の欠損表現あり
    ⚠解釈違いにご注意ください

    再装填(……風は、南西から)
    風力としてはさして気にする程でも無い。
    己の呼吸を隠すように、細く息を吐き出したグラディウスは、枝葉を積み重ねて作ったドームの中で風の動きを追っていた。
    (デカいな……幸運だ。二頭もいれば全員食える)
    視線の先の穏やかな川で水を飲む、カモシカのような偶蹄類が数頭。
    グラディウスは長い間覗き込んでいるスコープから目は離さずに、抱えた狙撃銃を構え直した。

    『退屈で……気が狂いそうでなァ。フフフフッ……!お前はどうだ……グラディウス』

    インペルダウンのゴミを集積している島に潜伏して、二日が経った。
    十二人もの囚人が姿を消した海底監獄で、一体どういう騒ぎが起きているのかは分からない。
    しかし、二ヶ月掛けて一人ずつ袖を引き、ニューカマーランドに全員集合した後、玩具に扮して脱獄するという作戦は今のところ成功しているようだ。
    追手の気配も無く、ゴミ捨て場の先に広がっていた森の中で、ドンキホーテ・ファミリーは呑気にキャンプを張る事ができている。

    「……」

    枝葉を揺らす風が一瞬弱まった隙に、何の感慨もなく引き金を引く。この引き金は、いつだって軽い。だから、悪党だと呼ばれるのだ。
    空気を震わす銃声が二発。
    弾かれたように走り出した数頭が消え、被弾した二頭は何度か痙攣するように足を震わせた後、水辺に倒れ、二度と動かなくなった。
    「マズいな。バッファローを連れてくれば良かった」
    予想外に大きな獲物を手にしてしまったグラディウスは、思わず独り言を漏らす。
    未だ全容の見えないこの森に、大型の動物が居るとは知らなかったのだ。
    水辺に集まる鳥でも撃てれば、多少は食料の足しになるだろうとラフに考えていたグラディウスは、手持ち無沙汰に後頭部を掻く。
    (久しぶりに撃ったが……。良かった……鈍ってはいない)
    監獄暮らしは辛くも無かった。もっと、辛くて悲しい事を知っている。
    ただ、たった一つだけ、あの海の底でグラディウスを悩ませたのは、気が狂う程鮮明な悪夢。
    選べる立場のあの男が、自分を選ばない夢。

    『シャバに出るなら……お前も一緒だ』

    しかし、その夢か現かも判別できない映像は、あの瞬間、紛れもなく夢となったのだ。
    (若は、おれを選んだ)
    彼にとって必要な生命というカテゴリでは、足元で血を流す偶蹄類も自分も同じ。
    しかし、あの男はグラディウスという一個体を選び、まるで神様のように拾い上げたのだ。
    (報いなければ……若を監獄に入れるようなヘマは二度としない)
    この男は、自分の生命の使い道を知っている。
    だから、再び選ばれたのだと自覚していた。

    「グラディウスー!」

    その時、草木を掻き分け顔を出したのは、見慣れた二本角だった。
    絶対に獲物を一緒に持ってはくれないであろう人物、デリンジャーの登場にグラディウスはツイていない、とばかりにため息を吐く。
    「いつまでやってんのよーッ!早く戻ってきて!完成したのよ!」
    「完成……?何がだ」
    「何って……」
    奪い返した王座。その席に、相応しい男。あの日の引き金と、全て壊した麦わらの少年。
    その目まぐるしくも屈辱的な記憶は未だ鮮烈だが、それすら薄れさせる程の平穏は、悔い改める為の時間か、それともただのヴァカンスか。

    「何って……家!」
    「……は?」

    どちらも結局気の持ちようで、そもそも悔い改める事ができるなら、海賊になどなりはしない。
    兎に角、今この瞬間、ドンキホーテ・ファミリーはシャバの空気を最大限に謳歌しているのだ。

    ******

    国土の凡そ半分を覆う人喰いの森は、事前に入手した真贋定かでは無い地図によれば全長約300キロメートルにも及ぶ。
    単純に直線距離を歩くだけでも、この森を抜けるには一週間程掛かる計算だった。
    『装備はゴミに紛れさせ、できるだけ持ち出す予定だ。正確さは保証できんが、地図も手に入れた』
    レベル5.5番地などというふざけた場所に存在する、ハイカラな悪夢のような国にファミリーが再集結したところで、相変わらず不敵な笑みを浮かべ、船長はそう言った。
    その言葉通り、銃と弾丸、食料や燃料など、避けては通れない巨大な森を抜ける為の装備はゴミと共に十分持ち出す事に成功している。
    「……それにしても、」
    それにしても、揃い過ぎである。
    デリンジャーに連れられ、森の入口付近のキャンプ地に戻ったグラディウスは素直に思った。
    グラディウスが早朝、狙撃銃を抱え拠点を後にした時は、簡易的に雨除けの布を張っていただけであったが、同じ場所には立派なログハウスが建っている。
    「丸太を若様の糸で繋げて作ったの。凄いでしょ」
    「お前は何もしていないんだろう、どうせ」
    「ヒドーイ!木切ったりしたわよ!若様に上手って褒められたんだから」
    その瞬間、突然膝から崩れ落ちたグラディウスは地面に手のひらを付き、この世の終わりのような顔をした。
    彼の感情の起伏に生まれた時から付き合っているデリンジャーは特に驚いた様子も見せず、ただ「どうしたの」とだけ言う。
    「若とクラフト……普通に羨ましい」
    「勝手にどっか行っちゃうからじゃない」
    「次はもっと早く呼びに来い」
    何の意味もない問答を繰り返していると、唐突に丸太で作られた扉が開き、ドフラミンゴの大きな体躯が現れた。
    「おう、グラディウス、おかえり。何か採れたか」
    「戻りました。鹿のような動物を二頭撃ったので、後でバッファローと運びます。……ところで、」
    「……ああ、イイだろう。木の家ってのも趣がある」
    「ハイ!素敵です!」
    「フフフフッ!本当かよ!……とりあえず入れ。今後の予定を話す」
    それだけ言って踵を返したドフラミンゴの背中を眺め、グラディウスは思わず霞んだ両目をゴーグルを取って拭う。
    「ヤダ……何で泣くの」
    「若……良かった……また会えて……」
    「まだその境地なの?!」
    既にドフラミンゴとグラディウスが再会して一ヶ月以上経つが、若の事となると相変わらずこの男の情緒は不安定である。
    再会の喜びを永遠に噛み締めているグラディウスは、涙を拭きながら築半日のログハウスへ向かって歩き出した。
    (……若さえ、いれば)
    あの男さえいれば、どうにでもなる。あの男について行けば間違いは無い。
    何があろうと揺るがない、長い年月を経て積み上げられた価値観は、この敗走すら悲観的には見なかった。
    いつまでも、あの男の糸に引かれ踊る。
    その信仰にも似た幸福の形を、やっと、取り戻したのだ。

    ******

    「……インペルダウンで手に入れた地図によれば、街は西の方角だ」

    地獄の釜からまんまと逃げ仰せて約二日。
    ボン・クレー率いる、無い筈の王国で二ヶ月余りを過ごしたせいで、森の中はやけに静かに感じた。
    『麦ちゃんと、ゼロちゃんによろしくね』
    革命軍にいる恩人が、万が一捕まりここに収監された時、助太刀できるよう地獄の中の楽園を離れないと言ったボン・クレーが、脱獄を手伝う代わりに提示した条件は二つ。
    一つは、人工悪魔の実とワノ国の武器について教える事。
    もう一つの条件である封筒を二枚、ポケットの中で撫でたドフラミンゴは思い出したくも無い少年と、久しく顔を見ていない同業者を脳裏に浮かべた。
    彼らと何らかの縁があるらしいボン・クレーに託された手紙を、一応届けるつもりはあるが、それは今では無い。
    ログハウスと同様、丸太を組み合わせて糸で繋いだだけのテーブルを囲んだファミリーを見回し、ドフラミンゴは口を開いた。
    「西の街を目指し、そこで船を奪い海へ出る。そのまま北西へ、リヴァースマウンテンを超えるぞ」
    「ウハハハハ……!二度目のリヴァースマウンテン越えか!懐かしいぜ」
    「しかし……ドフィ。この森を無事に抜けられるのかァ?数多の冒険家が消息を絶ったと聞いた」
    相変わらず小心のトレーボルに若干の懐かしさを感じつつ、ドフラミンゴはこの島の地図をテーブルに置く。
    森の中の詳細は未だ不明だが、噂や伝聞、僅かに残された資料や文献をニューカマーランドに掻き集めたドフラミンゴは、ある一つの仮説を導き出していた。
    「あくまで仮説だが……その噂自体、おれァデマじゃァねェかと思っている」
    「……デマ?」
    小さな地図を全員で覗き込み、その中心でドフラミンゴは荒い紙質を確かめるように撫でる。
    横長の島は点線で三分割にされ、ゴミ捨て場と森、街に分けられていた。
    「この森で遭難した事が確定している冒険家はたったの二名だ。その二名以外に森へ入った記録も、向かった記録も見つからない。そもそも、平凡な港町とインペルダウンのゴミ捨て場しかないこの島に、態々冒険家が集まる理由は何だ」
    「しかし、インペルダウンの看守達も、この森の噂を信じていたようだぞ」
    「フフフフッ……!ああ、そうだ。だから、思ったのさ」
    ひとり歩きを始める噂話。火のない所に煙は立たない、この海の不文律。いつだって、真理も真相も容易く海底へ沈んでしまうのだ。

    「よっぽど、この森の中に隠したい物があるらしい」

    どう見ても、広いだけの森。
    実際に入ってみても、その印象は変わらなかった。
    そうなれば、およそ人払いにしか見えぬ人喰いの渾名。
    突破口紛いの仮説に賭けた、その勝敗は未だ不明だ。
    「上の馬鹿共がよく使う手口じゃねェか。資料が無さ過ぎるのも些か不自然だ」
    「確かに、地図で見る限り変わった地形でも無さそうだ。こりゃァ本当にデマかも知れねェなァ」
    「ああ。しかし、念の為何かあった時に後戻りができるよう、いくつか拠点を設置しながら進むぞ」
    「だが……世界政府絡みとなれば、面倒だな」
    セニョールの言葉に、ドフラミンゴは喉を震わせ笑い声を上げる。
    面倒は面倒であるが、それは、好機でもあるのだ。
    「フフフフッ……!所詮、引き摺り下ろす予定の敗者共さ。奴らが後生大事に何を隠してやがるのか興味もある」
    ドフラミンゴの口角が上機嫌に上がった。
    インペルダウンで四六時中、耳元でがなり続けていた声は、そういえばパタリと消え失せている。
    (あの、声は、)
    一体、誰の物だったのか。
    報復をがなるあの声の主は、動き出したこの状況に満足したということなのか。
    (まァ……良い)
    どうせ、許せないのは、ドフラミンゴも同じなのだ。
    体の中で延々と燃えるこの炎を、あのガキ共や地獄の釜も消す事はできなかった。
    燃え尽きていないなら、ドフラミンゴの歩みが止まる事は無い。
    それを許さないのは、他でもないこの男自身だ。
    (どうせ、誰にも消せやしない)
    ドフラミンゴの瞳がファミリーの顔を順繰りに眺め、やがてサングラスの奥で閉じる。
    消えない、怒りと憎悪で燃える衝動。装填されゆく弾丸。再始動は図らずも、再びゴミ山の上だった。

    「また会えて良かった。相変わらず、おれにはお前達しかいない」

    「ドンキホーテ・ファミリー、再結成だ……!」

    ******

    日が完全に落ちた森の中は、随分と静かだった。
    ログハウスの中で各々毛布に包まるドンキホーテ・ファミリーは、得体の知れない森の中にしては、かなり安らかに熟睡している。
    (……寒い)
    そんな中、不寝番のグラディウスは日中よりも格段に下がった気温に身震いをしながらウッドデッキで見事な星空を眺めていた。
    不安要素は今のところ無い。あの男はこの森を脅威ではないと言った。
    それならば、それは、そうなのだろう。
    思考停止にも見えるその従順さを、この男は自覚はしても疑問視はしない。
    何故ならグラディウスの望む立ち位置は、あの男の駒だからだ。
    (あの人は、おれ達とは違う)
    王に相応しき、聡明で力ある逸材。
    彼に必要なのはその指示を狂いなく実行できる傀儡だ。

    「……ッ、……ぅ」

    その時、グラディウスの耳に届いた、呻き声にも譫言にも聞こえるくぐもった声。
    訝しげに眉を顰めたグラディウスは暖かい毛布を抜け、立ち上がった。
    (……誰、)
    聞こえたその低い声を、グラディウスは知っている。それなのに、そんな事を思った。
    結びつかないのだ。その、助けを求めるような呻き声と、声の主が。
    「……」
    扉の前で、次の行動を考えあぐねるように動きを止めた。
    冷たい風が通り抜け木々を揺らした筈なのに、自分の呼吸音とログハウスの中の呻き声だけが鼓膜を揺らす。
    「あ……、わ……若、」
    ゆっくりと開いた扉の先を、明るい月明かりが照らした。
    突然の光を避けるように、大きな塊がもぞりと動く。
    毛布に包まったドフラミンゴは、額に脂汗を浮かべ、毛布の上から自分の足首あたりを握りしめていた。
    「……っ、あ、」
    グラディウスの口元から意味を成さない音が溢れ、普段見下ろす事の無い男を眼下にとらえる。
    痛いのか、苦しいのか定かではないが、ドフラミンゴはあえぐように小刻みな呼吸を繰り返していた。
    (もしかしたら、)
    そして、グラディウスはそんな風に思う。
    (もしかしたら、この人は、)
    毛布の下を確かめようと、ゆっくりと手のひらを伸ばす。
    足首の先が、妙に存在感を主張しない。その違和感に、囚われたら最後だ。
    ゆっくり、ゆっくりと自らの手のひらがドフラミンゴの手の甲の上を通過する。
    その瞬間、朦朧と揺れていたドフラミンゴの裸の眼球がピタリとその動きを止めた。
    「……ッ!」
    緩慢に伸びたグラディウスの手のひらを、一回り大きい手のひらが掴む。
    唐突に我に返ったグラディウスの瞳を覗く、殆ど見たことの無い眼球。
    「……若、」
    まるで、怯えたように喉を震わすグラディウスを見て、ドフラミンゴは脂汗に塗れた額を手のひらで拭う。
    そして、立てた人差し指を自分の唇に押し付けて、いつもより少しだけ、控えめに口角を上げた。
    (アァ、見ては、)
    いけない物を、見てしまったのか。
    グラディウスの脳裏をそんな後悔が駆け巡り、次の瞬間には踵を返して、逃げ出すように扉の外へ飛び出していた。
    扉が完全に閉まるまでの、僅かな沈黙の間で盗み見たドフラミンゴは、取り繕ったように笑っている。
    (……もしかしたら)
    思ってしまった、その時点で既に取り返しはつかない事態。
    グラディウスは閉めた扉を背に、ズルズルとしゃがみ込んだ。
    (もしかしたら、あの人は、)

    同じ、人間なのかもしれない。

    足元へ跪き、その指示を狂いなく実行していたら、あの人は、勝手に王の座へ着くものだとばかり思っていた。
    それが、仮に、そうでは無いとしたら。
    あの時瓦解した全ての原因が、そこだとしたのなら、

    (……おれは、)

    この先、一体、何に成れば良いのだろうか。



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    kgkgjyujyu

    INFOマロ返信(03/26)
    ※禪院恵の野薔薇ちゃんについて
    このお話の野薔薇ちゃんは、禪院家の圧により高専には通わず、地元の高校に通っている設定なので、呪術師界隈のどす黒い風習や御三家の存在を知らぬまま、知らない男の嫁になりました。(恵との約束を思い出すのは暫く先です)

    最初の数ヶ月はおそらく死ぬほど暴れたし、離れからの脱走も何度も実行しておりましたが、離れの周りには恵が待機させた式神が野薔薇ちゃんの存在を感知した際に、即座に知らせる為、野薔薇ちゃんが離れから逃げられた試しはないです。
    なので、恵が訪ねてきても口はきかないし、おそらく目も合わせなかったとは思います。
    恵は、自分が愛を与え続けていれば、いずれは伝わるものと、思っている為、まったく動じません。

    ★幽閉〜1年くらいは
    恵に対する愛はない。けれど、野薔薇ちゃんが顔を合わせるのは恵だけなので、次第にどんどん諦めが生まれていきます。ちなみにRのやつは4年後なのでこの段階では身体に触れてすらいない。毎日、任務のない日は顔を見せて一緒に過ごす。最低限の会話もするし、寝る場所は一緒です。時間があるときは必ず野薔薇ちゃんの傍を離れません。


    2回目の春を迎えても、変わらない状況に野薔薇ちゃん 1202