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    BORA99_

    🦩関連の長い小説を上げます
    @BORA99_

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    BORA99_

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    ◆11月CPなしWEBオンリーにて頒布予定のDQ脱獄本のサンプルです◆
    ⚠全て捏造です
    ⚠原作程度の欠損表現あり
     若様が足を切って脱獄します。
    ⚠解釈違いにご注意ください

    プロローグ「海軍本部から通信です。ハンニャバル署長はどちらに?」
    「さぁ……?署長室じゃないのか」

    風の吹かない、帆船の墓場。
    凪の名を持つ海王類の巣窟に聳えるは、海底監獄インペルダウン。

    「まったく、この忙しい時に……」
    「そう言うな。あの人が署長になってからこの二年……この海は荒れに荒れた。たまには一人になりたくもなるさ」

    開いた地獄の釜の蓋は、いつも通りの陰鬱さを持って、阿鼻叫喚と死臭が五感を刺激する。
    ここは、地獄の入り口。
    時代に賛美されたミーハーの蛮行に作用する、武力とはまた別の抑止力。
    この場所に投げ込まれた悪党共に求められるのは、悔い改める事ではない。
    ただ、与えられる罰に嘆き、苦しむ事だけだ。

    「おい……」

    時代に反し呑気な空気が流れる管制室で、通信の取り次ぎ先を探す看守達は、突然飛び込んできた緊張感に怪訝そうに振り返る。
    視線の先では同じ装束に身を包んだ同僚が、青白い顔で管制室の入口に立ち尽くしていた。

    「大変な事になったぞ……」

    時代は既に、うねりを見せた。
    もう、誰にも止められない時代の移り変わりを表すように。

    「ドンキホーテ・ドフラミンゴが、」

    あるとも知れない、最下層の六番目。
    始まりは、置き去りにされた足首と血溜まり。

    「ドンキホーテ・ドフラミンゴが……消えた……!」

    ******

    「……う、嘘でしょう」

    この場所にとっては日常の、乱痴気騒ぎもなりを潜めた。
    鬼の袖引く終着点。
    レベル5.5番地。ニューカマーランドでひりつくような沈黙に、新女王ボン・クレーの零した声だけが響いた。
    いくつかある入口の一つから、転がり込んだ大きな体。
    殆ど血に染まった囚人服を眺め、ニューカマー達はただ、固唾を呑むだけだ。
    「……ミンちゃん!どういうことよーう?!足枷の鍵が手に入るのは三週間後……一体どうやってレベル6から出てきたの?!」
    大慌てで床に転がる男に駆け寄ったボン・クレーは、広がる血溜まりに少し、寒いような感覚を覚える。
    この男と、ボン・クレーが契約を交わしたのは一月と少し前。
    革命軍にいる恩人へ、何か良い情報を送りたいとレベル6に情報網を張り巡らせていた最中、放り込まれたのはかつての大物。
    「ハァ……ハァ……アァ……。三週間は長過ぎる。フフフフッ!朝も夜も四六時中耳元でがなりやがるんだ。気が狂いそうだったもんで……出てきちまったよ」
    「でも……まだ手枷の鍵しか渡していなかったのに……」
    接触したのは、ボン・クレーからだった。
    この海の裏で名を馳せたこの男は、しきりに神々が引きずり降ろされる様を捲し立てていた。
    その思想へ行き着く真意に興味が湧いたのは、それこそ引きずり降ろす側にいる恩人を支援したいという心意気である。
    「……!まさか」
    床に広がる血溜まりの中で、ボン・クレーの瞳に映る、有る筈なのに、無いその先端。
    その衝撃に思わず尻もちをついたボン・クレーはギラつくラメに塗れた眼球を開いた。
    「まさか……」
    渡していたのは、手枷の鍵と、檻を破る為の消火斧。
    どちらも足枷の鍵が手に入る三週間後に使わせる予定だった筈だ。
    狂気に怯えた男が下したその決断を、ボン・クレーは既に、狂っていると思う。
    震える唇は緩慢に動き、意味のない呼吸だけを吐き出した。

    「まさか……自分で切断したの?!ねェ!……ミンちゃん!!」

    ドンキホーテ・ファミリー脱獄まで、あと、二ヶ月。

    ******

    「……うわ、何だコレ。何でこんなに玩具が入っているんだ」
    「知らん。どうせゴミだ。捨てとけ」
    カームベルトを抜けたすぐ先。
    南の海に属するこの島は、インペルダウン専用のゴミ捨て場だ。
    カームベルト上にポツリと聳えるインペルダウンでは、ゴミの処理も少々厄介である。
    ゴミ捨て当番の看守は、ビニール袋いっぱいに詰まった玩具を怪訝そうに見つめ、やがて興味を失ったようにゴミ山の中に投げ捨てた。
    捨てなければならないゴミは、まだまだ船に沢山積まれている。いちいち全てを疑問視していたら、いつまで経っても帰れないのだ。
    「……もし自分が脱獄するとしたら、ゴミに紛れるのが一番簡単だと思わないか?」
    「ハハハ。冗談だろう。こんなところに辿り着いて、一体どうするんだ。確かに島の反対側には街もあるが……そこに辿り着くには森を抜ける必要がある」
    「ああ……」
    うず高く積まれたゴミ山の奥。
    この島の中央部分には巨大な森が広がっていた。
    怪しい風がざわざわと木々を揺らし、太陽の光も届かない深い森の先は伺い知れない。
    数々の探検家達がこの森に入り、全員が消息を断ったという、人類未踏の地。
    人食いの名を持つその森を抜けた先には街も存在するが、島民すらその中には決して入らないのだ。
    「囚人がゴミに紛れてここに辿り着いたとしても、ここにはゴミしか無いんだ。船がなければあの森を抜けるしか街に辿り着く術は無い。そんな芸当、着の身着のまま脱獄した奴らには不可能さ。じゃなきゃこんな緩いチェックでゴミを持ち出す事はしないだろう」
    「それもそうか」
    その時、さっきゴミ山に投げ捨てた、玩具の詰まった袋の方で妙な金属音がする。
    不審な顔でそちらに顔を向けた看守を、同僚は咎めるように振り返った。
    「オイ、こっち手伝ってくれ。随分重たいな。何だコレ」
    「生ゴミだろ」
    大きな木箱を持ち上げようとした同僚に呼ばれるまま、さっきの物音を忘れ去った看守はそちらに足を踏み出す。
    二人がかりでようやく木箱をゴミ山に降ろすと、僅かに暗くなった空を揃って見上げた。
    「一雨来そうだな。早く戻った方が良い」
    「そうだな。カームベルトに居ると、嵐の怖さを忘れてしまう」
    湿り気を帯びた空気に急かされ、二人分の足音が遠ざかる。
    別の場所で作業をしていた看守達を呼び寄せながら、足早に船へと向かうその背後で、木箱が僅かに揺れた。
    (……?)
    看守の一人は妙な空気を察知し振り返るが、みるみるうちに食われていく晴天へ興味は奪われる。

    このゴミ捨て場を利用した脱獄犯は、インペルダウンの歴史上でただの一人も居ない。
    長きに渡る探検の歴史が結論付けた、たった一つの揺るぎない現実。

    この島に存在する森は、確かに人を喰らうのだ。

    ******

    インペルダウンのゴミを輸送してきた船が、滑るように走り出してから数分後。
    ビニール袋に入れられていた玩具達が、まるで、おとぎ話のように起き上がる。
    その視線の先では放置されていた木箱の蓋を破り、エメラルドグリーンの髪を揺らす少女が這い出した。
    「ハァ……うぇ……うぐっ……」
    生ゴミと一緒にゴミ山に崩れた少女は、えづくように噎せた後、逆流してきた胃液を吐き出しながらゆっくりと立ち上がる。
    酷く、薄汚れてしまったエメラルドグリーンを目標に、玩具達は次々と袋から飛び出した。

    何も、分からない。

    何故玩具の体になってしまったのか。
    自分が一体誰なのか。
    そして、此処は一体どこなのか。
    十二体の玩具達が把握している事は一つも無い。
    ただ、彼らは一つの契約だけを、その脳裏に浮かべていた。

    『ゴミ捨て場に辿り着いたら、必ず私を気絶させる事。それができるまで、絶対に倒れてはダメ』

    幼い声で、他でもないあの緑髪の少女が言った、抗えない契約事項。
    それだけを遂行する為に、玩具達は捨てられていた廃材を手に立ち上がる。
    「……!」
    自分以外の動く気配に気付いた少女が息を呑み、くるりと踵を返して走り出した。
    彼女が誰かも知らないが、耳元でがなり続ける契約事項に取り憑かれた玩具達は、その小さな背中を追いかける。
    「ハァ……、ハァ、何よ……!何で追ってくるの?!」
    怯えたように言った少女の足がぬかるみに嵌り、ゴミ山から垂れ流された得体の知れない液体の中に倒れ込んだ。
    少女の体を囲んだ玩具達は、塗装されただけの無表情で彼女の腕や足を抑え込む。
    「ヤダ……!誰よ!!やめて……!」
    激しく暴れる腕を身軽に避けた、ブリキの王様の冷たい手のひらが少女の首を掴んだ。
    圧迫するように力を込めると、一際激しく細い足が暴れ出す。
    空気を求めて無意味に開閉を繰り返した唇の上で、大きな瞳から一筋の涙が溢れた瞬間。
    彼女の瞳に映っていたのは、懐かしい、金色の髪だった。
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    kgkgjyujyu

    INFOマロ返信(03/26)
    ※禪院恵の野薔薇ちゃんについて
    このお話の野薔薇ちゃんは、禪院家の圧により高専には通わず、地元の高校に通っている設定なので、呪術師界隈のどす黒い風習や御三家の存在を知らぬまま、知らない男の嫁になりました。(恵との約束を思い出すのは暫く先です)

    最初の数ヶ月はおそらく死ぬほど暴れたし、離れからの脱走も何度も実行しておりましたが、離れの周りには恵が待機させた式神が野薔薇ちゃんの存在を感知した際に、即座に知らせる為、野薔薇ちゃんが離れから逃げられた試しはないです。
    なので、恵が訪ねてきても口はきかないし、おそらく目も合わせなかったとは思います。
    恵は、自分が愛を与え続けていれば、いずれは伝わるものと、思っている為、まったく動じません。

    ★幽閉〜1年くらいは
    恵に対する愛はない。けれど、野薔薇ちゃんが顔を合わせるのは恵だけなので、次第にどんどん諦めが生まれていきます。ちなみにRのやつは4年後なのでこの段階では身体に触れてすらいない。毎日、任務のない日は顔を見せて一緒に過ごす。最低限の会話もするし、寝る場所は一緒です。時間があるときは必ず野薔薇ちゃんの傍を離れません。


    2回目の春を迎えても、変わらない状況に野薔薇ちゃん 1202