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    dn13ll

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    dn13ll

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    書いたら前書きを大幅に加筆修正することになりました。私は一体何を書いて……?(ここで正気に戻る)

    ##キラ新書
    ##神か悪魔か

    《前書き》
     近年、めっきりとキラの名を聞かなくなった。それも当然で、不審死などここ一、二年報道されていない。もうずっと、ずっとだ。永遠に続くと思われた神の世界は、突如として消え去った。一体誰が今日を迎えることを想像できただろう?
     いや、いや。そもそも不審死など、そうそうあるものではない。なかったのだ、キラが世界に君臨するまでは、人の死はどこか遠いものでしかなかった。画面の向こう側で起こる不幸。自分とは切り離された世界の出来事。そういうものであった。少なくとも、ここ日本では、間違いなくそういったものであった。戦争も死も、他人事だった。それが、他人事の死が、いつしか日常のものとなり、ついには他人事ではなくなった。キラが姿を消す少し前のことだ。罪人でなくとも、みなが平等に死を与えられる恐怖を己がものとした。怠け者に生きる価値はなく。優れた才を発揮しない者を生かす意味はなく。善良なる人々こそ生きる価値のある、至高のものである。そういう風に、キラは世界を作り替えた。その意識が人々に完全に根付く前に、キラの世界は崩れ去ったのだが。
     管理された完全な社会の閉塞感を、いつ裁きが下るとも分からぬ息もつけぬ日々を、人々が監視し合う空気を、昨日のことのように思い出せる人が今どれだけいることだろう。
     ──話が少々、脱線した。感情的になってしまうのは、どうか許してほしい。
     キラの不在についてだ。毎日のように報道される犯罪者の死。異常は通常に、非日常が日常に。キラが裁きを下すようになってからというもの、世界は塗り替えられた。そして今、キラの不在によって世界はまた色を変え──あるいは虚構の平和を取り戻そうとしているのだろうか──気楽な暴力と安易な平穏に満ち始めている。
     窮屈な秩序はもはやなく、悪意なき悪意が弱者を襲う。理不尽な悪は今まで抑圧されてきた分を回収するかのように溢れ出す。ここまでがキラの思い通りであるならば、なるほど、ヒトはどうしたって醜悪な生き物であると認めざるを得ない。ヒトの善性に期待などできない。ヒトの悪性こそが、人間のあるがままの姿だと、受け入れるしかない。
     キラが根付いた生活の中、善行をこそ推奨され、悪は死ぬべきだと植え付けられてさえこうなのだ。キラを神と崇拝し、信仰する団体は世界各地に存在するが、全く持って皮肉じみたものを感じる。人の性根は変わらない。人間の悪性はどうやっても贖えない。だからこそ神が必要だというならば、全くその通りと言うほかない。人間は自らのみでは正しい道を選べない。正しく生きることができない。超常的な存在と恐怖があって初めて理性と知性を持つヒト足り得る。神のいない人間など、言葉を持つけだものと変わりない。抑えつける存在があってこそというのは、すでに現状がそれを証明している。無論、個人として善良なる人々がいることは理解している。だが、ヒトという種で見たとき、社会という枠組みで見たとき、残念ながらそうした人々は少数派であると言わざるを得ないだろう。
     ところで、私は今この本が本当に出版されるのか疑心暗鬼でいる。まるで日記のように好き勝手書いた文章はそのためだ。何故って、キラがかのキリストのように復活するのであれば、こんな本はとうてい出せないからだ。著者たる私だけでなく、下手をすれば出版社諸共裁きが下る。この感覚は、キラが現れるまでの日常を僅かばかりでも恋しく思ったことのないものには分からないだろう。キラを恐れず、キラを当たり前としたものには理解できまい。
     だが、もしもこの本が無事出版されるのであれば、キラが不在のまま最低でも三年の月日は経っているはずだ。その頃世間はどうなっているだろう。今のように、すっかりとキラの存在を忘れたかのように振舞っているのだろうか。こんなことを考えるのは、キラを畏れながらもキラの作った社会に染まってしまったからだ。敢えて晩年、とつけるが、キラの晩年に至るより前までは、確かに私はキラの社会を容認し、歓迎していた。社会の秩序を、平穏を、平和を尊んだ。当時裁きが下っていたのは──キラを追う警察関係者を除けば──いずれも世界の凶悪犯たちばかりで、先に述べたように死が他人事であったからだ。痛ましい事件や事故でさえ、数日もすれば忘れてしまう。どころかまたこのニュースか、なんて不謹慎にもうんざりとする気持ちが少しばかり湧く。それが凶悪犯の命であれば、当然の報いだと、いい気味だと、そう思った傍ら忘却の彼方へと追いやるのだ。ましてやそうした犯罪者の命で世界が良くなるのであれば、そんな人間でも世のためになることがあるのかなんて、皮肉気に笑っていたくらいだ。こうして思い返してみると、私もいずれはキラの裁きを受けていたのではないかと今更ながらに恐怖に駆られる心地だ。 
     ここ一、二年ほど──冒頭でも一、二年、と述べたが、本の執筆にあたり記憶が少々曖昧であるため、正確な期間については勘弁願いたい──犯罪者や警察、あるいはメディアの人間が突然の心臓発作で亡くなったというニュースはどこを見ても存在しない。これが何を意味するのかは分からない。だが、少なくとも今現在、キラは不在であるということだ。改めて言うことでもないとは思うが、敢えてそう書き記そう。
     キラは歪でありながら秩序をもたらし、その上で人間の愚かさ、醜悪さを思い知らせるための存在であったのか。もしくは少なくない考察──果敢にもキラ否定派を真っ向から掲げた人々によるものだ。中身の是非はさておき──にあったように、キラが一個人ないし団体であり、Lとの対決に敗北したのか。それは私が知ることではない。
     私が本書にて記すのは、『キラ』が人々にとってどのような存在であったかだ。
     人々にもたらした変化、変遷、キラが築き上げた一時代。そうした中においてどのようにキラを見るか。
     神としてのキラ。
     悪魔としてのキラ。
     キラの君臨がノアの箱舟のような人類の救いであったのか、人間を管理下に置く誘惑の蛇であったのか。
     キラを受け容れ、キラが不在の今、人々がキラをどのように受け止め、変化するのか。以前のように戻るのか、停滞したままを選ぶのか。それらすべてを含め、私は命知らずにもキラを観測しようと試みた。といっても、私が本文に着手した元はLとキラの対立を一種のパフォーマンスかの如く面白がられていた頃に書いたメモ、走り書きだ。そのため正確さに欠ける部分が多々あるが、そこは有能な編集者の腕を期待してほしい。全くもって、新世界では淘汰されてもおかしくない人間である。
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    dn13ll

    PROGRESS書いたら前書きを大幅に加筆修正することになりました。私は一体何を書いて……?(ここで正気に戻る)
    《前書き》
     近年、めっきりとキラの名を聞かなくなった。それも当然で、不審死などここ一、二年報道されていない。もうずっと、ずっとだ。永遠に続くと思われた神の世界は、突如として消え去った。一体誰が今日を迎えることを想像できただろう?
     いや、いや。そもそも不審死など、そうそうあるものではない。なかったのだ、キラが世界に君臨するまでは、人の死はどこか遠いものでしかなかった。画面の向こう側で起こる不幸。自分とは切り離された世界の出来事。そういうものであった。少なくとも、ここ日本では、間違いなくそういったものであった。戦争も死も、他人事だった。それが、他人事の死が、いつしか日常のものとなり、ついには他人事ではなくなった。キラが姿を消す少し前のことだ。罪人でなくとも、みなが平等に死を与えられる恐怖を己がものとした。怠け者に生きる価値はなく。優れた才を発揮しない者を生かす意味はなく。善良なる人々こそ生きる価値のある、至高のものである。そういう風に、キラは世界を作り替えた。その意識が人々に完全に根付く前に、キラの世界は崩れ去ったのだが。
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