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    navy_konno

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    navy_konno

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    最近――使うの癖になってて、多用してしまう――

    諦めようにも「わたくしが、こどもたちの未来に投資する。その結果、こどもたちがわたくしを慕うことがあったとしても、それは『自然なこと』でしょう。けれど――そのこどもの一人と、親密な関係を持ってしまったら。それは、間違いなく罪に問われるだろうね」
     そんなこと、と言いかけて、ビートは声を詰まらせた。ローズの眼が、冷たく光っていたから。彼はひどく優しく、言葉を続ける。まるでこどもをあやすように。
    「恐らくは、他のこどもともそういった仲にあると疑われるでしょう。調査の中で、わたくしとの間柄を、間違ったかたちで公言してしまう子も出てくるかもしれない。そうなれば、もう――きみとこうして二人で話すことも、ままならないのですよ」
     ――それはきみも、本意ではないよね?
     言外に彼は微笑み、小さく首を傾げる。なんて残酷なんだろう。ビートは思う。自分は彼を独り占めしたいのに――そうしたら最後、委員長はビートだけのものではない、汚らわしい大人である、というメッセージが世間に発信されてしまう。いくらビートが自分のものだと言い張っても、誰も認めはしないだろう。
     世間が自分たちの交際を良しとしないのは、お似合いのぼくらに嫉妬しているから。なら堂々と見せつけてやれば、そのエリートぶりに文句は言えないはず――漠然と、そう思っていた。でも、違った。法も、社会も、少年の気持ちに応えてはくれないのだ。
     そしてそれは、ここまでの説明をした彼も同じ。なあなあにして、言葉を濁すこともできたろうに、彼はそうしてくれなかった。少年の理想に安易な相槌を打つこともない。ただ、この少年の、凡百の大人より自分は優れている、という自負のもと、感情論でなく論理で返す。理解できない、とは言わせないように。
     ローズは、ビートの肩にそっと手を置くと、至極残念そうに、困ったように、悲しそうに囁いた。
    「だから、えーっと……きみの気持ちは嬉しいのだけれど――先ほどの話は『保留』ということで、いいかな? 本当、申し訳ない!」
     大人の言葉に、少年は黙って頷くしかなかった。噛みしめた唇が痛む。それが、ビートからローズへの、告白の返事だった。
     なんて――なんて、悔しいのだろう!
     ローズが次の仕事のために部屋を出て行った途端、敗北の味が口いっぱいに広がり、溢れそうな感情が迸った。これがポケモンバトルだったなら、自分はものの数秒で状況を整理し、クールに次の手を考えられるはずなのに。委員長のこととなると、それができない自分がいる。
     ビートは、拳を握りしめる。皺ひとつない、やわらかなその手は、まだ挫折の一つも知らない。
     この黒星は、いつか必ず覆してやる。そう胸に誓っても、具体的な作戦は何一つ浮かばず、ビートの足は動かない。それでも視線は彼の居た場所を無意識に探し、カーペットに残る、革靴の微かな足跡に彼の名残を感じ取る。ここまでの敗北を喫したというのに、自分はまだ彼を追いかけていた。行かないで欲しかった。不毛だとしても、また厳しい現実を突きつけられるとしても、それでももっと話したかったとさえ思っている。
     それがおかしくて、どうしようもなく切なくて――ああ、やっぱりこれが恋慕なのだろう、と思うより外なかった。
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