左側が温かい 13冠は忙しい。新米ともなれば、あちこちに顔を出して挨拶をしたり、愛想も振りまく。もちろん、面倒にならない範囲で、だけど。
そうやって忙しくするのも嫌いじゃない。でも、そのぶん彼女との時間が減ってしまう。
それでも今日はなんとか早めに切り上げられて、彼女も勤め先近くのショッピングモールで待ち合わせた。
「この辺りかな」
彼女からはもう着いたと連絡があった。待ち合わせの場所であたりを見回す呂と、いた。
駆け寄ろうとしたとき、別の男が彼女に声をかけた。
「……」
思わず足が止まる。
彼女は笑顔で何かを答えている。
羽管と尻尾の付け根が、ずしりと重くなった。
拳を握ると、爪が手のひらに食い込んだ。
男の手が彼女に伸びるのが見えた瞬間、足が動いた。
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