すり減るあの子に注ぐ 四月も後半のある日。私、アミィ・アザミは書類を手に爪隊の執務室へ向った。
「キマリスはいるか?」
「いるよー」
部屋の奥でヒラヒラと手を振るキマリスに、書類を渡す。
室内に幼馴染の彼女の姿はなかった。定時も近いため、いるものと思ったが。
「先日、バビルスから受け入れた研修生の成績だ。座学は問題ないが、体力に難がある」
「レビアロンとジャポカも同じだね。今年はそういう傾向なのかな。基礎訓練に体力増強のメニューを追加しようか……」
研修生の成績を広げて相談していると、執務室の扉がガラガラと開き、彼女が入ってきた。――顔色は蒼白で、口はへの字に歪み、肩を落として背中を丸めている。おまけに、その背後には爪隊の若手が付きまとい、「話聞くよ? 飯奢るからさ」「もうあんな奴のところに行かなくていいようにキマリス様に言おうか?」「大変だったよね」としきりに言い立てている。
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