5/31azm夏の終わりの話 爪隊に配属された初日の夕方、なんとか日報を書いてキマリス様に提出した。
「初日お疲れさま。疲れたでしょ。早めに休みなよ」
「はい! そうします!」
「あと、体調はどう? 試験のときにやりすぎて、アミィくんに怒られちゃったからさ」
……怒られちゃったのか。アミィ様は、やりすぎたキマリス様に怒ったんだ。……それって、私としてはどう受け止めればいいの?
「大丈夫です。私がへなちょこだっただけです」
「そんなことないって、アミィくんにも言われたでしょう? 強情だな」
キマリス様が苦笑した。
だって、悔しいもの。ていうか、相手が強かったから仕方ないなんて言いたくない。
……そういうところを強情だと言われているのかもしれない。
「じゃあ、お詫びに、どれくらいアミィくんが狼狽えてたか、教えてあげる」
「……それが、何のお詫びになるんですか?」
「俺が魔術を使った途端に怒鳴られたんだよ。やりすぎだってさ。待機してた他の試験官呼んで、君の様子を見させて。で、他の悪魔に任せられないって、自分で担いで行っちゃって」
「……はあ」
「戻ってきたときなんて、そりゃもう機嫌最悪でさ。アミィくんが担当した研修生だけ、ほとんど成績つかなかったんだよ。一瞬でふっ飛ばしちゃって」
……何やってるんですか、アミィ様。で、私はそれについてどう思えばいいのか、やっぱり全然分からなかった。
「でもそれ、私関係ないですよね? 相手が誰でも、研修生を気絶させちゃダメです」
「もちろん、そうだけど。でも君じゃなかったら、アミィくんはあそこまで怒らなかったと俺は思ってるよ」
「……なんでですか」
「さあ? 胸に手を当てて、よ〜く考えてみなよ。アミィくんはけっこう君に甘いし、君もけっこうアミィくんにだけ甘えてるよ」
そんなことは! ない!! ……って、きっぱりは言いきれなかった。つまり、私はアミィ様にちょっとは甘えてる自覚がある。……でも、ちょっとだし……。
「別にいいんじゃない。アミィくん、嬉しそうだし。その分、俺が厳しくしてあげるから」
やっとサインされた日報が返ってきた。
キマリス様、厳しすぎるんだよな。もうちょっと優しくしてくれてもいいのに。
アミィ様と足して二で割ればちょうどいいのに……いや、割らなくていい。私は、今のままアミィ様がいい。