Anubis 一体、自分はこんなところで何をやっているのか。
自問すれど、紛れもなく自分の感情に動かされ、選択し進んで来たつもりだった。
それなのに、ここに着くまで散々、頭で考えても出なかった答えを、身体と心がはっきり示した。
憎むべき相手に救われるのは、罰か。
救うべき相手を追うことは、罪か。
強い感情と熱を傾けていたのは確かだが、愛しいなどと思うわけがない。
そんな疑念は、ウォノを信じると言った彼の瞳を見つめ返す度に霧散した。
ラクから向けられる感情によって、長い間忘れていた感覚が呼び起こされる。
いつしか、謎を追うこと自体を生きる理由にしていた自分を読み解かれていく。
事件でも罪でもなく、ラクただ一人を追って来たのだと。
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