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    怪物jwds⑬

    ##怪物
    #怪物
    monster
    #jwds
    #ジュウォンシク
    jewish

    普通「それって、結局ドンシクも所長と同じことしたがってるってことじゃない?」
     ジファに実家をリノベーションすることを伝え、ジュウォンに手伝ってもらうのだと説明したら、腕を組んで熟考した後、そう疑問を投げかけられた。
    「あー……そうなるのか」
     定年後はきれいな空気の場所で過ごすと言って、ドンシクと自分のための家を買った男。
     親代わりのような、師弟関係のようなまま、ドンシクを見守ってくれていた。
     ドンシクを犯人だと疑い、連行したのを悔いていたのはわかる。ドンシクも恨みが全く無いわけではないし、ナム所長が自分を監視するために面倒を見てくれているような気にもならなくはなかった。それを他人から指摘されることもあったが、二人の関係を変えようとは思わなかった。
     言われてみれば、ジュウォンとの関係は特殊なようで、所長との関係が引き継がれたようなものだ。
     無意識に、所長がしてくれたことを同じようにジュウォンと続けたいのかもしれない。
     ジュウォンとそうするための予行演習のようなものだったとも思える。自分を逮捕した男と暮らすのは、ドンシクには慣れ切った生活だと、今、ジファに言われている。
    「自分が死んでも、帰る場所を作ってあげたいってことなのかな。それとも、死んでも忘れて欲しくないから、家を残すのかな」
     逮捕云々ではなく、単に情の話として、そう問われる。
     ジファはジュウォンと親密な関係を続けていることには疑問を持っていないが、ドンシクの行為の動機は気になるようだ。ドンシクが人を遠ざけたり、手を差し伸べたりする理由を分析している。
     それはドンシクがどんなに自暴自棄になっても、頭脳はブレず、無意識でも行動には絶対に理に適った動機があるとわかっているからだ。
     どれほどの憎悪を押し殺したか。
     どれほどの絶望を振り払ったか。
    「俺――欲がない方かと思ってたけど、それはずいぶん、欲張りだな」
     自分のしていることが少し恥ずかしくなる。物を欲しがるより、もっと大事なものでやりとりしようとしているだけだ。
    「普通の幸せってそういうものだよ。ずっと普通に暮らせてる間は気付かないし、気付かなくていいことが幸せだから。そういう暮らしを守るために、あたしたちがいるわけだ」
     ドンシクが奪われた『普通』を望んでいるだけで、それを望むことは、欲張りじゃないと言いたいようだ。
    「ジファは幸せ?」
     虚を突かれた顔をして、またジファは腕を組んだ。
     とんでもない男と結婚して、離婚、挙句に逮捕だ。
     一般的にはかなり大変な人生だが、本人は平常心に見える。
    「そうだね。大変だったけど、今は普通だよ。普通だと思えるから、多分幸せ」
     浮かれるのも絶望するのも、長くは続かない。それでもしっかり覚えていて、誰よりも悔いている。冷静なのは過ちを繰り返さないためだ。
     潔くて美しくて、熱い女だと思う。
    「俺も独りならそのぐらいの幸福で足りると思うんだけど、あの人にはもっとあげたくなる」
     ドンシクの方が不幸だと人は思うかも知れないが、ドンシクには大事な人たちに愛された記憶が、彼よりずっと多くあるのだ。
     自分一人なら、ナム所長の家でだらだらと変化の少ない生活をして、可もなく不可もなく暮らすつもりだった。
     ジュウォンが関わりたいと言ってくれたから、ジュウォンの分の可能性が足された。
    「イ・ドンシク。それがまさに愛というやつだよ。あげるものが間違っていなければなお良し」
    「そっか」
     依存か親心みたいなものかと思っていたが、『愛』と言い切られる。
     彼と一緒なら、自分も幸福でいないと心配や面倒をかけてしまうし、彼の未来はもっと幸福でなければいけないと思った。その要因にドンシクが含まれていると知ってしまったから、自然とそうなるように行動してしまっている。
    「その人がくれるもの全部嬉しいのも愛だよ」
     小さいジフンやミンジョンに、ユヨンに、何をもらっても嬉しくなったあの気持ち。
     自分を大事にしてくれる誰かから、何かを受け取った時のあの気持ち。
     職務でした親切に、心からの礼をもらった時の気持ち。
     ジファには恋愛かどうかなんて小さいことで、全部が『愛』だと言い切れるのだ。
    「高い物は……少しだけ困るかな」
     そう言ってははっと笑ったら、信じられないという顔で覗き込まれた。
    「土地付きの家より高い物なんてそうそうないでしょ。あんたにはタダ同然でもさぁ」
     怒りに近い驚きを感じて、自分の鈍さを知る。
    「……アイゴー」
    「気付いてなかったわけ?」
     金銭的な価値には気付いていなかった。相続や維持にかかる金は、土地と家を自分で買うと思えばタダみたいなものだ。現に今、大した仕事もせずいられるのもそのおかげだ。
     普通の幸せか。それは充分、贅沢だ。
    「意味の重さとか、いわく付きなのが迷惑かは意識してたけど、確かに……そっか。いつも、あの人ずいぶん浮かれて馬鹿になってると思ったけど、俺の方が――ヤバいな」
     眉間に皺を寄せ焼酎をあおったジファを横目に、ドンシクは小さくなってそう呟いた。
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