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    shi_na_17

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    滑り込みセーフ!なバレンタイン2024ヒヨロナver.

    #ヒヨロナ
    henbane

    ヒヨロナバレンタイン2024 バレンタイン、のひ、って、あいてる……?

     そんな可愛い事を、可愛い弟兼恋人に電話口で言われたのは確か一ヶ月くらい前の事だ。それも、辿々しい口調で。空いてる。そりゃもうめっちゃ空いてる。これ以上ないくらい空いてる。
     なんて事を勢いよく言いながらめちゃくちゃ頷きそうだったのを、俺はなんとか耐えた。
     バレンタイン? そうじゃな……まぁ、特別な予定はにゃあで。
     休憩時間にかけ直した電話に対し、虚構の余裕たっぷりに、そう言った。と思う。側から見てどうだったかは知らないが。そう、その時点では確実に空いていた。
     じゃあその日は出勤な。
     なんて言われたのは、その直後。っつーか、それを本部長のバカが聞いてるなんて思わんじゃろ。なんだその、それなら出でって。それならってなんだ。張っ倒すぞ。
     とまぁ、そんなこんなで出になったが、幸いな事に日勤だったので夜は空いている。しかし、吸対の日勤など宿直みたいなもので、主な事件は夜に起こるが故に昼間は電話番みたいなものなのだ。しかし出は出なので、仕事はしないといけない。要は、電話番を。細かく言えば書類仕事だとか他部署とのあれやこれやだとかなんか色々、無くはない。無くはないのだが、夜間より遥かに仕事が少ない。
     暇なので、書類に目を通してハンコを押したり、他部署とのやり取りなんかをなんとなしにこなしながら、考える訳だ。
     バレンタインって指定されたからには、きっとバレンタインらしい何かがあるのだろう。しかしうちのヒデは昔から料理は出来ない方だった。調理実習で食べ物を盛大に焦がし、真っ黒になったエプロンを恥ずかしそうにランドセルの中に1週間ほど熟成させたりした。あんなんで一人暮らしなんか、と思ったが、今やコンビニのある時代である。コンビニ弁当とか一人用の惣菜だとか、たまにマスターの料理だとか食べてると人伝に聞いて安心したのは、数年前の話だろうか。それから転がり込んできた吸血鬼が何故か家事全般を担うようになり、食の心配をしなくなって……多分、今のあいつはレンジに触る事すら少ないだろう。もしかしたら一人暮らししていた時は米くらい炊いていたかもしれないが、今果たしてやれと言われて出来るだろうか。
     そんなレベルの相手なので、おそらく手作りはないだろう。と思っていたのだが、2週間くらい前にドラルクから手作りを画策しているとリークがあった。事務所が吹き飛ぶかもしれない、というおまけ情報付きで。
     なんで生菓子作ってて事務所が吹き飛ぶんじゃ。
     そんな事を思いつつ、謝らないといけない気配を感じて謝った。あれから果たしてどうなっただろう。
     もしかしたら安全を考えて、既製品の購入になったかもしれない。あいつの事だから、やけに高いものを買うとか息巻いたりするかもしれない。俺はそんなに高く無くて良いんだけれども、なんて意見は、多分通らないだろう。
     じゃが、もしかしたらそのまま、手作り路線で行っている可能性もゼロではない。その時は多分悔しいがドラルクが手伝うか、もしくは教えるかするに違いない。あんまりドラルクの気配がヒデの生活から滲み出すのは楽しくないが、あいつのおかげでヒデは健康な生活を送れている。そう考えると複雑なところである。
     とにかく、手作りのチョコ味のなにかをヒデは一人では作れないだろう。俺は99.9%くらいドラルクが作った料理を食べるのか? いや、せめて……そう、湯煎くらいは、ヒデに任せてやってくれ……ちゃんと説明したら出来るから。多分。
     今日のデートの場所は、あいつの事務所だ。ドラルクは多分その時間までには何処かに行くのだろう。いくら享楽主義といえども、同居人のイチャコラする姿を眺めている趣味はないらしく、デートだと言えばドラルクは素直に家を空け、次の夜までは帰ってこない。一度、夜明け前に帰ってきた時にシャワーを浴びた完全に事後の俺に鉢合わせてからは特に。いや、半分俺のせいじゃにゃあか。今度何かお詫びの品を買って渡そう。
     しかし、そんな訳なので、多分ヒデは俺に何かバレンタインらしいものをくれる予定、だと思うのだ。チョコを例えば作っているとして……ドラルクはあれでかなりめんどくさがりの所があるので、もしかしたら途中で投げ出して去っているかもしれない。ヒデは多分失敗するじゃろ。そうなると……そうなると、だ。
    ────あにき、ごめん。失敗、しちゃった。
     妄想の中のヒデが、チョコまみれのおっぱいを寄せている。
    ────気にするんでにゃあ。ここにくっついとるチョコも甘くて美味しいぞ。
     きっとヒデの肌は柔らかくて、温かくて。おっぱいは柔らかく、乳首がつんと立って可愛くなって。ちゅうちゅう吸い付いて、つぅと肌をなぞれば、きっとヒデはきゅうんと可愛く鳴いて、喉を逸らすのだ。その喉元にキスをして、かぷりと噛みついて…………。
    「お疲れ様です、隊長」
    「お〜、おつかれ」
     いつのまにか定時30分だ。今日の一番乗りはモエギと半田だった。
    「今日は何かありましたか?」
     こっちを見ながら問いかけるモエギに、首を横に振る。
    「いや? お偉いさんが威張りに来ただけじゃ」
     他部署から覗きに来たおっさんの事を思い出す。いやぁ、腹立たしい限りだった。今日はヒデとのデートの日だというのに。
    「あと30分はいてくださいよ」
    「当たり前じゃろうが。まさかバックれるとでも思ったんか?」
     肩を竦めて、くすりと笑う。そんな俺に、半田はなんとも言い難い顔で、言った。
    「バックれかねない顔してましたんで」
     そんな事する訳がないのに。だって、あいつはそれを、許したりはしないから。

    「兄貴!! その、これ!!」
     差し出された皿に載っていたのは、黒い手のひらサイズのチョコケーキ。
    「お……おお!! おみゃあが作ったんか」
     おっぱいチョコレートじゃなかった。
    「え、あ、う……ん…………。ごめん、あんまり美味しそうじゃなくて……」
     しゅん、としたヒデの持つそれは、形も良くはないが、焦げてはないし、食べ物の体は成している。俺とした事が、自分の妄想と外れて少しがっかりしてしまった。折角あのヒデが、俺の為にケーキを作ってくれたのに。
     苦手だろうに、自分の為に頑張ってくれたのだ。嬉しくない訳がない。
    「そんな事はにゃあで」
     とはいえ、えっちも諦めた訳ではない。それはそれ、これはこれ。美味しいかはわからんが好きな人が作ってくれたものはありがたくいただくし、バレンタインという特別な日のえっちも楽しむ。密かにそれを目標にしつつ、フォークを握りしめた。
    「ありがとな」
     バレンタインの夜はまだ、始まったばかりだから。
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