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    shi_na_17

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    セロ花2当日企画【吸血セロリを探せ!】景品
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    皆様ご参加ありがとうございました!!

    #半ロナ
    half-lona

    吸血セロリを探せ!景品コーナー【椎名編】
     リズミカルに鳴り響く太鼓の音と、祭囃子。昨日事前点検で見てきた櫓から聞こえてきているのだろうとは思うが、今日は見に行ってないので正確なところはわからない。
    「あ、半田」
     横の歩くアホ若しくは悪友、及び恋人に、くっと浴衣の袖を引かれた。
    「なんだ」
     視線を向けた先のロナルドも俺と同じく浴衣で、食いしん坊万歳よろしく綿菓子とかき氷とを両手に持っている。早く食え。綿菓子は特に。湿気ってべたべたになるぞ。というより、そのスタイルでどう食べるつもりなのだ。かき氷は片手では食べられんだろうが。齧り付くのか?
    「なぁ、あれさ……お前こないだ見てたやつ?」
     顎と視線とで指し示されたのは、白くてむくむくした犬とも熊ともつかないぬいぐるみ。瞳は透き通った青空のような色合いだった。先日こいつとのデート中に通りかかった店のショーウィンドウに飾ってあったものと同じものだ。
     こいつに似ている。なんとなくそう思って、少しばかり見てしまったのだが、まさか気付かれていたとは。
    「む…………そのようだな」
     気まずさというか、気恥ずかしさというか。まさか貴様に似てると思ったから、などと言えるはずもない。が、だからと言ってただ単に可愛いと思ったなどと言ってしまえば、まるでロナルドが可愛いと言っているようで、自分自身が居た堪れない。ロナルドには伝わらないとしても……いや、だからこそ。自分自身が恥ずかし過ぎて、悶絶する未来しか見えない。
    「だよな。じゃあ任せとけ!」
     何がだ。
    「こっちは任せた!!」
     何をどう、と理解するより前に、俺の両手にそれぞれ綿菓子とかき氷を握らせて、ロナルドはあっという間に射的の屋台に走り、一言二言交わして射的のライフル銃の模造品を受け取っていた。
    「貴様、狙撃も得意だったか?」
     記憶にある限り、こいつが狙撃という狙撃をした覚えはない。だが、存外努力家のこいつの事だ。銃を扱うについて、射撃も狙撃も早撃ちも全て一応練習しているに違いない。
    「出来なくはないレベル、かなぁ……。実はあんまり得意ってほどでもない。純粋に狙撃だけで言えば、サギョウ君の方がよっぽど腕良いぜ」
     そんな事を言いつつ、コルク弾を装填し、浴衣の袖を捲って腰を落とし、たところで裾が邪魔だったのか捲り上げたのが少しばかりドキドキしたし、そんなところ誰か他の奴が見える格好をするなと思ったが、そんな事を言ったらまたもや自分が恥ずかしくなりそうで言えなかった。よく考えたらマイクロビキニになるのも厭わない(厭んではいるのか?)男なので、そのくらい気にならないのかも知れないが、それにしても何故布面積が広い浴衣の方がいけないように見えるのか。
     そんな事を考えている内に膝の少し上まで見えるくらいまで退かして気が済んだのか、ロナルドはそのまま肘をつき、台尻を肩に付けてスコープ部分を覗き込むロナルドの射撃姿勢は、板についているように見えた。……見えただけ、かも知らんが。
     パンッ。
     1発目。
    「ん〜…………」
     僅かに動いたぬいぐるみを見て唸る事数秒。
     2発目、3発目。
     こちらが呼吸を忘れる程、研ぎ澄まされた空気があたりを包む。
    「も、ちょい…………」
     呟き、流れるような動作でコルク弾を装填し、ライフル銃を構える。
     澄んだ蒼い瞳。無表情に近い横顔は、集中している時のロナルドのそれである。
     よく笑い、よく泣くロナルドが、感情を排して、ただ標的を狙うその横顔。まるでこの世のものではないほどに────。
    「っしゃあ!!」
     ぽとり、と落ちた音。元々は5発あった弾は、いつのまに全て打ち終えたのか。ロナルドの手元の球はゼロになり、その代わりに白いぬいぐるみはロナルドに手渡される。
    「お兄ちゃんうまいね〜! まさか取れるとはね」
    「いや、たまたまちょっと良いところに当たっただけですよ」
     射的屋の店主はここらの人ではないのか、ロナルドの事を知らないらしい。これだけ目立つ容姿の男を知らないなど、まぁ……地方の人ならあるかもしれないが。
    「半田!! これとれた!!」
     とれたのは見てわかるわアホルドめ。なんて言おうとして、ふと気付く。
     手に持っていた綿菓子が解けて手にくっついている。というか、俺はさっき綿菓子に気付かないほど、何を考えていた?
    「半田?! なんか手ェベタベタになってるけど?!」
    「貴様が湿気った綿菓子をずっと持ってるからこのタイミングで溶けたのだバカめ!!!」
     自分がぼーっとしていた事は棚に上げ、とりあえず肩にかけていた鞄にぬいぐるみを入れるように指し示すと、ロナルドはからりと笑う。
    「丁度良かった。これさ、半田にあげたかったんだ。そのまま持って帰ってくれよ」
     心底嬉しそうに、幸せそうに笑うロナルドの衝撃に、一瞬にして意識が遠くなりかける。なんだこいつは。両手が食い物で塞がってなければ、セロリで対処出来たものを。
    「っ………………覚悟しておけ……!!」
     あまりの衝撃に顔が真っ赤に熱くなるのを自覚しつつ、腹の底からなんとか搾り出す。
    「何を?! 俺なんかした?!」
     うわーん!! と泣き出すロナルドが付いてきているのを気にしつつ、ずんずんと歩を進める。
     果たしてどこにいったら二人きりになれるだろうか。そんな事を、考えながら。
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