いけにえの白羊は純白の夢を描けるか? エスパーはヒトではない。
いくら国連の条約やらエスパー人権団体やらがお綺麗なお題目を掲げてくれたところで、この国の、そして研究施設の中ではそれが現実だ。
エスパーとノーマルの間に横たわる境界線を埋めるのは並大抵のことではない。あるものを持たない。ないものを持つ。有史以来、人間同士が争ってきた原始的な理由。
それでも互いに手と手を取り合う努力を諦めてはいけない、と。繰り返し説いていたのはエスパーの戦災孤児たちが暮らす施設を運営するノーマルの老婦人で。けれど。彼女の言葉は現実に響くことはなかった。政府による検査で高レベルの能力の発現が確認されたライデンに突きつけられたのは言葉どころか銃口だ。
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