ほんとうに大切なもの まだ春だというのに、日中は太陽が燦々と輝いてちょっと汗ばむ陽気だった。
なんだか夏みたいですね、なんて話して苦笑いするスタイリストさんに何度も汗を拭ってもらいながら撮影を終えたのに、帰路に着く頃にはどんよりと暗い雲が空を覆ってふるりと身震いする肌寒さになっていた。
"夜から明け方にかけて雨が降るでしょう"なんて言ってた天気予報を思い出して、春ってなんだっけとぼんやり考えた。肩を少しさする。あーあ、寒くなってきた。半袖はまだ早かったなぁ。
すんっと鼻を鳴らして息を吸えばほんのりと雨の匂いがした。葉桜の中にまだ少しだけ咲いているのんびり屋な桜も、雨に降られたら落ちてしまうかもしれない。
3800