おれの作ったカツカレーが、風間さんの口の中へ次から次へと吸い込まれていく。「おいしい?」と聞けばリスとかハムスターみたいにほっぺたをめいっぱい膨らませ、こくこくと頷く。かわいい。
おいしいものを食べてる時の風間さんはいつもこうだ。ただでさえ寡黙な人なのに、食べてる時は一言も声を発さなくなってしまう。
「あ、ついてる」
「……っ、!」
口元についた米粒を取り、腕を引っ込めようとしたところでがっちりと掴まれる手首。そして指をぱくりと口に含む風間さん。米粒を奪い返したざらついた舌が肌をするりと撫でたところで、ようやく解放される。
「──ッ!」
「全部俺のものだ。米粒ひとつもやるつもりはない」
「……〜〜〜〜ッ……、」
敢えなく右手の行き場を失い突っ伏したおれに、勝ち誇ったような風間さんの声が降りかかった。
「なんだ、この未来は予知してなかったのか」
「いや、してた、してたけどさぁ……実際にやられるとやっぱり……こう、破壊力が段違い、っていうか……?」
「ならば俺の勝ちということでいいな」
「……そういうことにしといてください」
「うむ。おかわり」
たぶんおれは、一生かかってもこの人のこういうところには勝てそうにない、気がする。
風間さんの謎の勝利宣言に白旗をあげたおれは、空になった器を手にキッチンへと舞い戻った。