おやすみなさい、いい夢を「左馬刻くんは、髪を伸ばしたりしないのかい」
白銀の髪に、寂雷の長い指がするりと滑る。
「もう少し伸ばして、後ろで結ぶのも似合いそうだけど」
数日ぶりに枕を並べた夜。眠りにつく前に声を聞きたいためだけの、たわいもない会話。その擽ったさに、左馬刻が軽く返す。
「先生が結んでくれんなら、それもいいな」
寂雷は目尻の皺を深め、襟足のあたりを触っていた手を左馬刻の後頭部に回した。硬めの髪を軽く掴み、そのまま、胸元に引き寄せる。
「うん、任せて」
左馬刻も寂雷の背に腕を回し、柔らかく抱きしめた。子供をあやすように、とん、とん、と広い背中を叩いていると、左馬刻の髪を撫でていた手の力が抜けていき、そっとシーツに転がった。
「おやすみ、せんせ」
とく、とく、と、規則的に刻まれる寂雷の鼓動の音が聞こえてくる。穏やかな幸せに包まれながら、左馬刻も静かに瞳を閉じた。