鎖骨に咲いた赤 人非る存在であれど、青き兄弟は人に近しい姿をしていた。殊に、弟は一層。
「貴方の口、俺は好きだけどちょっと勿体ない気持ちはある」
己を抱く兄の――人であれば"口元"と表現する部位で輝く三日月に触れ、青髪のナホビノは僅かに唇を尖らせる。
「どういう意味だ?」
「所有印、的な」
皆まで言わせないでよ、と拗ねた表情に切り替わった弟を暫し見つめた後、すっと月の神は己の人差し指で青髪のナホビノの鎖骨に触れた。
「目に見える証が欲しいのか?」
――私の腕の中に収まっているというのに。
疑問を含む、しかし、真っ直ぐな言葉。
「お前が望むならば、何かしら考えるが」
純粋な提案、翳りのない情愛。
頬を紅潮させるしかない弟神は、兄神の腕の中でただただ顔を覆うしか出来なかったのであった。