天使の観察先 序章2創造主が話は聞いてやろうという顔で見つめてくる。
「選択肢か」
「創造主様!どうか俺からもお願い致します!ルシファーの堕天を止められなかった事や俺が使命を放棄していた事など、こちら側にも非があります故…」
「そうだな …マイケルという名の人の子よ 先ほど人を助けてルシファーを探すと言ったな?ならばそれを成しなさい 悪魔に困った人を助け悪しき悪魔を祓い、ルシファーを探すのならその子に選択肢をやろう…16年、期限はその歳だ」
「…!ありがとうございます!必ずや成し遂げましょう!」
「なら俺は16までミカの守護天使になろう!お許しいただけますか創造主様!」
「良い、良い あとはガブリエルを置いておく…報告はそちらに済ませよ。だが罰が何もないのも良くない マイケル お前の目を約束の日まで預かるぞ」
「……え?」
ずっと発言出来ず呆然としていたガーレンがようやく言葉を発した。
なぜ?うまく対話ができてたと思っていたのに 僕にも何か罰が下るのか?ならマイケルさんの罪も僕に被せて欲しい。あの天才から視力を奪うなんて!そんな事を考えてるのもお見通しなのか、創造主の沢山の目がチラリとガーレンを見る
「お前からは何も貰わぬ 精々マイケルに助力すると良い」
「待っ…!」ガーレンが発言するのを遮るように創造主が光に包まれ、研究所が静寂を取り戻した。
今度はマイケルがガーレンに話しかける。
「ガーレン、ミカをお願いできないかな?…目が見えない私が抱いていたら危ないからね」
〜13年後〜
「ミカももう13歳か…お誕生日おめでとう」
父と同じミントグリーンの髪を2つに束ね、ぱちくりと丸い月のような瞳の少女はお礼を言い質問する
「うん!ありがとう父様!…それで話って何?」
「ミカにはね、これから会う人と2人で私の教団の社宅に暮らしてほしいんだ」
ミカと呼ばれた少女の父は優雅に指を組み 目を閉じていながらもミカの方に向かい答えた。
「えっ…どうして?今の私はなんにも不自由もないし1人の時間だって平気だよ?相手は私も知ってる人なの?」
急に誰かと暮らせと言われ色んな不安が駆け巡ってくる 私どこかに預けられちゃうの?
「そうだね…直接は会ってないけどミカの母様の遠い親戚なんだ それとよくガーレンからクッキーなどのお菓子を貰っていただろう?あれはテオくんという彼が作ったお菓子でこれから一緒に住む相手だよ。彼は少し物静かだけれど誠実で優しいとガーレンも信用しているんだ。」
「あのお菓子…」確かにガーレンさんから沢山あるのでミカくんもどうぞ。と貰った事がある。美味しくて優しい味でどこのお店?と聞いた事もあったっけ 部下の子だよとしか聞いた事なかったけどまさかこんな事で会うなんて …少し気になってきたかも
「少しは気になってきたかい?どうしても嫌なら断っても構わないよ ミカ」
「うん大丈夫 父様の言う事だもん…とりあえず会ってみようかな」
「そうだね!まずは会ってみようか テオくん、部屋に入ってくれるかい?」
父様がそう言うとドアの近くに立っていた父様のボディガード兼お世話係のタロンさんが扉を開け…その人は入ってきた
「失礼します」
スラっとした体型にベストがよく似合っていてふわふわとしたオレンジ色の髪、頭のてっぺんには一房が可愛くぴょんと跳ねていてその下には長い睫毛に縁どられた綺麗な緑の瞳の彼が私の方を見た
……どうしよう 凄くドキドキする!こんな美しい人だなんて知らなかった!でも目が見えない父様に容姿なんて聞けないし…!
父譲りの知性と冷静さに加え不思議な雰囲気で一目置かれている少女は中々のロマンチストであった。
そんな少女が自分にときめいてるなんてつゆ知らず青年は上品な物腰でミカにお辞儀をする
「初めましてミカさん …君さえ嫌でなければどうぞこれからよろしくお願い致します」
明らかに業務的だけど綺麗な笑みを浮かべて差し伸べた手に触れるのが少し恥ずかしい…私の顔…赤くなってないかな?と考えながらゆっくりと差し伸べられた手の上にそっと手を重ねた。断るかもしれない考えはもうどこかに飛んで行ってしまった。
「こちらこそ…よ、よろしくお願いします」