舌先寸分「…公子殿、本当に大丈夫なのかい?」
行秋は普段こそあまり動揺を見せることのない筈の顔を僅かに歪めながら、目の前の男にそう問うた。
「ハハッ、心配しなくても、これでも俺は料理だって結構得意なんだよ。」
不安そうな行秋をよそに、問われた方の男といえば「楽しみにしていてくれ」などと言ってからりと笑う。
手には持参した調理用のお玉を持ち、さらにその目の前、行秋との間にはグツグツと小気味の良い音をたてる鍋がある。
眉を歪めたままの行秋が恐々と身を乗り出し鍋の中を覗き込めば、良く煮立った鍋の中にはあらゆる食材が見え隠れしていた。
「獣肉、玉ねぎ、トマト…と、この見え隠れしている水色のものは…ミントかい?」
「あぁ。モンドや璃月でも料理に良く使うだろう?本当は違う香草があれば良いんだけどね、無いなら代用するしかない。」
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