タイトル未定重雲は常日頃から璃月を起点とした各地を妖怪退治という大義を持って練り歩いているために、その道中で老若男女、見知らぬ他人と出会うことが多い。
また、幼い頃からその家業のために生家に何人もの人間が出入りしていたこともあって、故に人見知りをするということ自体あまり彼にとって縁のないものだった。
しかし人見知りをしないからといって重雲自身の弁が立つかといえばそれは全く別の問題であり、そのため自身と同じくあまり口数の多くないものと対自した際には困ってしまうことも多々である。
「………。」
「……。」
「…あの…」
「…ん?なんだい?」
荻花洲から僅かの、誰が残したか分からぬ野営地のこれまたその誰かが何処かから転がしてきたのだろう丸太に腰掛けた重雲は眼前で静かに座り込む赤髪の男の顔を気まずそうに見つめた。
「えーと…旅人たち、遅いですね。」
「あぁ、そうだね。きっと依頼人と話し込んでいるんだろう。」
「思ったよりも早く片付きましたからね。」
「そうだね。」
「……。」
短い会話を交わし、再び訪れる沈黙。
重雲は口元を微妙に歪ませながら、所在なさげに視線を彷徨わせた。
ーーー
旅人に討伐の手伝いを頼まれたのは昨日のことだ。
普段彼には世話になっているしと、二つ返事で引き受けた重雲だったが、彼にとって予想外だったのは翌日になって約束の場に訪れた重雲の目に入ったのは、旅人とパイモンの他に、見知らぬ男性がもう一人いたことである。
「重雲、この人はディルックさん。今日の討伐、彼にも手伝ってもらうことになったんだ。」
のほほんとした面持ちでそう男性を紹介する旅人に、重雲は軽く会釈すると同じようにそのディルックという惰性も重雲に挨拶を返す。
別に、知らない人間が増えること自体は重雲にとって些細なことではあるし、彼の参加によって今日の討伐が容易になるならそれに越したことはない。
感情のあまり感じ取れないその表情こそ気になるが、それは自分も同じ様なものだと、「それじゃあ行こうか。」と前を歩き出す旅人の後ろを揃って歩き出した。
討伐の内容は、水と氷元素をそれぞれ操るアビスを相手にしたものだという。
「ディルックさんは、炎元素が使えるから。急遽きてもらったんだよ。」
なるほど。重雲は頷く。前者なら未だしも、後者の氷アビスは自分の力からすると確かに部が悪い。
元素を使わずに力技で殴り倒すという手段もあるが、その隙に水アビスの魔術で凍結でもされたら溜まったものではないだろう。旅人の言う通り、自分が水アビスをいなしている間に炎元素を持つ彼に氷の方を相手にしてもらえれば効率は大分良い。
「まぁ、そうでなくとも相手がアビスって時点で旦那にとっては因縁の相手だもんなぁ。」
旅人の横を浮遊していたパイモンが茶化したように此方を
(※タイムアップ)