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    fuki_yagen

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    ハロウィンのみっぴきです🎃 あとちょっとロナドラ

    #ロナドラ
    Rona x Dra
    #みっぴき
    threeDays

    みっぴきハロウィンとロナドラ「あ、そこもっときつく……そうそう」
    「大丈夫か? あまりきつくするとお前死ぬだろう」
    「でも解けてきちゃうからねえ」
     ただいま、とリビングへの扉を開けた瞬間目に飛び込んできた躯のラインも露わに包帯ぐるぐる巻きの吸血鬼と床に跪いてその腿に包帯を巻き付けているコウモリ羽根の赤毛の少女に、ロナルドはノータイムで跳び蹴りを食らわせた。勿論吸血鬼のほうにだ。
    「帰って来るなりなんだこのバカ!!」
    「バカはテメーだロリコンおじさん!! ヒナイチになにさせてんだ!!」
    「なにって」
    「ドラルクはミイラ男の仮装だからな。巻くのに苦戦していたから私が手伝おうと言ったんだ」
    「オメーもオッサンのこか……足に触ってんじゃねーよこいつが捕まるだろうが!!」
     アーハン、と崩れた包帯と混じった砂の山が訳知り顔にバカにした声を上げた。顔はないが。
    「股間にまで巻かせたと思ってるんだろこれだから童貞は」
    「童貞関係ねーわ!!」
    「え、ロナルド、彼女いないのか。いや今までいなかったのか」
    「うるせえどうせモテねえんだよ!!」
    「股間はどう考えても巻けないだろ。ショートパンツはいてたんだよ」
     え、と砂の山をじろじろと見、包帯の塊のような布地を見付けてロナルドはつまみ上げた。
    「あっ、おいこら!」
    「なにこれどうなってんの?」
    「薄手のショートパンツにそれっぽく包帯縫い付けてあるんだよ。ていうかそれ返してくれないと私復活したらパンイチなんだが」
    「パンツも履いてんのかよ」
    「いや履くだろ包帯オンリーなわけねえだろとんだ変態だわ。ていうかロナルド君、昨日私はミイラ男をやる、って教えてからずっと真っ裸に包帯だけだと思ってたの? うわ」
    「引くな!!」
     べし、と包帯と砂の山に仮装用のショートパンツを投げ付けるとドラルクはようやくやれやれと復活した。見ればパンツどころかTシャツまで着ている。ポンチどもに会ったときのほうがよほど露出がでかい。
    「あー……包帯はやり直しだなこれは」
    「これで解けるようだとお前外に出たら一歩目でダメになるんじゃないか、ドラルク」
    「一歩外に出ただけでは死なないが!? いや日によってはその前に死ぬけど」
    「やっぱりだめじゃないか」
    「ちゃんと巻き終わればロナルド君みたいに塵を掻き混ぜるバカがいなけりゃそのまま復活するよ」
    「ロナルド、そんなことするのか……」
     やや引きと憐憫の籠もった目で見たヒナイチに別に性癖じゃねえんだよ、と頭を抱えて溜息を吐き、ロナルドは用意していた自分の衣装をクローゼットから出した。
    「俺も着替えるわ」
    「ここで着替えるなよ、レディがいるんだぞ」
    「洗面所で着替えるわ!」
     つうかオメーがそのレディに手伝わせてんじゃねーか、とぶつぶつと言いながら洗面所へと向かい、簡単な衣装に着替え鏡を見ながら首輪を巻き、すぽ、と狼耳のカチューシャを付け、スナップボタンになっているしっぽも付けた。着替えやすいように、退治になったときにも外しやすいようにとドラルクが作った機能性を残しつつ見た目もハロウィンに相応しく仕立てられた衣装だ。
     ブーツになっている狼足と狼の手のグローブを持って戻ると包帯男はまだヒナイチと共に苦戦していた。
    「まーだやってんのかよ」
    「せっかくあと少しだったのに誰かさんが崩しちゃってくれたからな。パンツ盗られなきゃそれでもある程度巻き付いた形で復活出来たんだが」
    「おい今悪意のある漢字当てたろ。それにパンツじゃなくてショートパンツだろうが」
     手を貸そうとしたがドラルクとヒナイチふたり共に気持ちだけで! と強めに断られ、ロナルドは仕方なくダイニングチェアに座り頬杖を突いた。テーブルの上から眺めていたジョンが、ちょん、と魔女の帽子を被る。傍らには小さなマントと箒だ。
    「ジョンは魔女?」
    「ヌン!」
     かっわいいなぁ、とデレデレとして、ジョンの衣装も、そういやヒナイチのも作ってるとこ見たな、何人分作ったんだこいつ、となんとか形になってきたミイラ男を眺める。
    「なあ。俺らの衣装作るついでに、自分のも長袖Tシャツとズボンに包帯縫い付けるとかできなかったのか?」
    「あー、それでもよかったんだけど、ちょっと崩れたカンジも出したかったし、腕や足の肌がチラッと見えるのもマミーっぽいじゃないか」
    「オッサンの素肌にときめくのは変態なんだよ」
    「すーぐ下品な話に持ってくな君は。まあ頭の中すけべばっかりなんだろうな」
    「おい殺すぞ」
    「バカ殺すなロナルド! せっかく巻き直したのに!」
    「よし、あとは首のとこをリボン結びして……」
    「ヌン!」
    「おや、じゃあジョンに結んでもらおうかな」
     包帯でぐるぐるになった、よく見ると白手袋をはめたドラルクがテーブルに屈みジョンにリボン結びをしてもらっている。ふわ、と薄く香った土塊のような香りに、いつものにおいと近いけど違う、とロナルドはすんと鼻を鳴らした。
    「なんだね、ひとのにおい嗅がないでくれたまえよ」
    「えっ、いや、なんか……香水? いつもと違うかなって……」
    「ああ、土のような香りだろ」
    「墨汁かカビた木みてえなにおいがする」
    「君の語彙はほんっとモテの真逆だな」
     ぎゅ、と拳を握ったロナルドからジョンを抱いて慌てて離れ、まったく、とドラルクは憮然とした。ヒナイチが苦笑している。
    「さてふたりとも、ジョンも準備は万端だな?」
    「おう」
    「ありがとね、ヒナイチ君。手伝わせようと思ってたのに若造帰って来ないし、間に合わないかと思っちゃった」
    「人をあてにすんな」
     ちらと時間を確認し、ヒナイチに抱かれたジョンにマントを着けてやっているミイラ男を横目にして、ロナルドは玄関へと向かった。
    「ヒナイチは吸対に合流か?」
    「後半のシフトだから、最初はドラルクと一緒にあちこち見て回るつもりだぞ」
    「ロナルド君はギルドのひとたちと合流してパトロールだよね? ヒナイチ君と別れたらそっちに合流するから、スマホ忘れないように」
    「はいはい」
     シンヨコハロウィン、と銘打たれたイベントは最初駅周辺に仮装をした人々が集まるというだけの話だったのに、そこに吸血鬼集会の連中が乗っかったせいで町を挙げたイベントになってしまった。大イベント、というほどではないが、各々が屋台を出したりハロウィンメニューを作ったりと楽しげで、吸血鬼が出るなら吸対とギルドも出ないわけにはいかないと腐っていた退治人たちも、楽しげな人々の姿にまあいいか、と気持ちを切り換えたところだ。
     始めは退治人服自体が仮装みたいなものだし、と仮装の予定はなかったのに、あれよあれよという間にドラルクがロナルドの分の衣装を作り上げてしまったから、結局他のメンツも仮装をすることにしたはずだ。何人かはドラルクが作ったのだろう。メドキも普段は退治人服を作っているその手で、仮装の衣装を作ったらしい。勝手が違って大変だったとぼやいていた。
    「んーじゃ、またあとでな。楽しんでこいよ。ヒナイチいるから大丈夫だとは思うけど、暗いとこはいくなよ。この機に乗じてぜってーろくでもねえコトしようとするポンチどもはいるからな」
    「この機に乗じるならメイン会場のシンヨコ駅回りでやるんじゃないかね。人が多いのはあそこだし、その方が愉しいからな」
    「さすが吸血鬼のことはよくわかってんだなドラ公」
    「そりゃ吸血鬼だからな」
     ふん、と軽く顎を上げ、ドラルクはいつの間にか用意していたお菓子の詰まった籠を片手に革靴を履いた。
    「ドラ公、靴と手袋はいつものなんだな。完璧主義じゃねえのかよ」
    「なんだと、完璧だろうが。このよさがわからんのか君は」
    「わかんねえ」
    「私は素敵だと思うぞ、ドラルク。墓から蘇ったマミーではなくて、もっとこう……うん、高貴な感じがするぞ。吸血鬼らしいな」
    「ヒナイチ君はさすがわかってるねえ。そう、吸血鬼は墓からは蘇らない。清潔な棺から這い出てくるものさ」
     得意げなドラルクと同じポーズで肩の上で胸を張っているジョンにわからん、とぼやき、ロナルドはビルを出て踵を返す。
    「んじゃ、俺はまずギルド行くから」
    「ああ、パトロールをよろしく頼むぞ」
    「そっちもへんな騒ぎに巻き込まれんなよ。特にドラ公! 余計な事はすんなよな!」
    「私は好きなように愉しむだけですー」
     プーン、と生意気に言ったドラルクにイラ、と青筋を立てながら、とにかく、あとでな、と軽く手を上げロナルドはギルドへと足を向けた。






    「絶対出ると思ったけどやっぱりいたんだな、吸血鬼ハロウィン大好き」
    「吸血鬼トリックオアトリートと吸血鬼コスプレマニアまで出てくるのはちょっと出過ぎじゃねえのか」
     まあみんな能力使うまでもなく満足して帰ったしよかったんじゃない、と言いながら空になった籠を置いたドラルクを、おい、とロナルドは呼んだ。
    「俺の菓子は?」
    「ハー? マジで五歳児なのか君は。これは子供達のためのお菓子だったんだよ!」
    「ヒナイチも食ってたじゃねーか」
    「あの子未成年だろうが。それとこの日のためにやってきたみんなのためのお菓子だからな。生者で大人の君に食わせるもんはねえわ」
    「なんでだよ作っとけよハロウィンだろうが!! …………いや、お前なんか変なこと言ってない?」
    「ハロウィンが何の日か知らんのかバカルド」
    「にににに日本だろうが!!」
    「盆なら日本式の墓に埋葬されてるひとたちが戻るんだろうけど、日本にだって今は外国人墓地たくさんあるだろ。彼らは盆には出てこんわ」
    「嘘だろ!? え、冗談だよな……?」
     さてね、とべろりと赤くて長い舌を覗かせにやりと嗤ったマミーを殴って殺し、包帯と砂の山になった中からふと思い立ってロナルドはショートパンツとTシャツと下着のパンツを拾いぽいぽいと投げ捨てた。
    「おわっ、このバカ!!」
    「早く復活しろよ。靴下は残してやったろ」
    「なに? 君も靴下コレクションになっちゃったの?」
    「残してやったろ!」
     ナスナスナス、と這いつくばったまま憮然とした顔でドラルクは、靴下に手袋だけを身に付け、ほとんど解けた包帯を纏った姿で復活した。垂れた耳の先がうっすらと赤らんでいる。
    「あのなあ……辱めて愉しいのか、このモラハラセクハラ痴漢ルド」
    「思い付く限りの悪口を言うな」
    「思い付く限りならもっと言ってるわ。なんなの。なにがしたいんだ」
     ロナルドはしゃがみ込み這いつくばったままのドラルクの顔を真顔で覗き込んだ。
    「おばけってえっちなことすると逃げるんだって」
    「………ア?」
    「えっちなことをします。童貞ではないので」
    「ハ? 冗談だろもうじき夜明けだしケチルドがケチるからカーテンもめっちゃ陽が通るしって担ぐな!! ウワーッ助けてジョン!!」
    「予備室ならテメーが勝手に遮光カーテン付けてただろうが」
    「予備室をヤリ部屋にするな!! ゴリラが暴れたら機材壊したり汚したりするだろうがお前自分がどれだけエッチのたびにソファなりシーツなりカーペットなり汚してんのかしらんだろ片付けてるの私なんだからな!!」
     絡まった包帯のせいでばたばたと陸に上がった魚のように暴れているドラルクを担ぎ、助けを求められたジョンをちらと見るとはしゃぎ疲れた使い魔は自分のベッドに潜り込んですでにすやすやと眠っていた。
     おし、とロナルドは頷く。
    「俺が怖くなくなるまで付き合ってもらうからな……!」
    「もう朝なのに怖がるなビビルド!! ヤダーッ私ももう寝たい!!」
     わーん、と泣き叫ぶドラルクに、怖い話をするお前が悪い、と決めつけて、結局日が高くなるまで抱き潰し、ロナルドはその後怒り狂ったドラルクによって二ヶ月ほど禁欲生活を強いられたので、付き合って初めてのクリスマスも年越しもベッドでいちゃいちゃなど一切できず、新年早々土下座で謝ることになった。
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    🎃
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    fuki_yagen

    PROGRESS7/30の新刊の冒頭です。前に準備号として出した部分だけなのでイベント前にはまた別にサンプルが出せたらいいなと思うけどわかんない…時間があるかによる…。
    取り敢えず応援してくれるとうれしいです。
    つるみか準備号だった部分 とんとんと床暖房の張り巡らされた温かな階段を素足で踏んで降りてくると、のんびりとした鼻歌が聞こえた。いい匂いが漂う、というほどではないが、玉ねぎやスパイスの香りがする。
     鶴丸は階段を降りきり、リビングと一続きになった対面式キッチンをひょいを覗いた。ボウルの中に手を入れて、恋刀が何かを捏ねている。
    「何作ってるんだい? 肉種?」
    「ハンバーグだぞ。大侵寇のあとしばらく出陣も止められて暇だっただろう。あのとき燭台切にな、教えてもらった」
    「きみ、和食ならいくつかレパートリーがあるだろう。わざわざ洋食を? そんなに好んでいたか?」
    「美味いものならなんでも好きだ。それにな、」
     三日月は調理用の使い捨て手袋をぴちりと嵌めた手をテレビドラマで見た執刀医のように示してなんだか得意げな顔をした。さらさらと落ちてくる長い横髪は、乱にもらったという可愛らしい髪留めで止めてある。淡い水色のリボンの形をした、きっと乱とお揃いなのだろうな、と察せられる代物だ。
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