今はここにないだけの何か。最低な始まり方だった。
ファンの女の子達に囲まれながらだらしのない面をした彼にどうにも自分の想いを抑え切れず、涙が溢れてしまった。
更に、ロナルド君に物申す、とジョンが意気込む姿を見て、私はこんなにも情けない主人だったのかと落胆もした。
いいんだよ、ジョン、これは私の気持ちなのだから彼は何も悪くない、ただ今日は事務所に帰りたくはないから何も言わずロナルド君の傍にいてあげて、ううん、私はいいんだ、ちょっと気持ちの整理をつけたい。
凄く、物凄く渋々承諾したジョンは何度も私を振り返りながらもロナルド君の元へ歩んで行った。
ごめんねジョン、聞こえないけれど心の中で謝罪を繰り返す。
1人になろうとも、慣れ過ぎてしまったこの街はどこもかしこも明るくて、見知った顔も多くて気付けば街灯もない裏路地に立ち尽くしていた。
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