身に纏うもの一つで。ロナルド君が持ってきた企画書。
ふぅん、と覗き込めば期間限定、撮影、グッズ、軍服、と面白そうな文字がつらつらと並んでいる。
「軍服?いいじゃないかっこよくて!私ター●ャちゃんとかゼート●ーア閣下好きだし」
「海軍だっつってんだろ。んで白銀の名を舐めるなよ。お前デグ●チャフ少佐の眼力だけで殺されるわ」
「ファー!ロナルド君はまず魔道大隊にも入れて貰えないでしょーね!魔力より暴力ぶぇー!!!無言で殺すな!もー!さぁさぁ!ジョンもかっこよくおめかししようね」
「ヌー!」
なんて意気込んで行ったら
「ジョンセーラーなの?私とお揃いじゃないの?」
ジョン用に用意されていたのはスカーフの付いたカラーと紺色の帽子。
可愛いよ、ジョンならなんだって似合うし可愛いんだけど
「一緒に軍服着て畏怖りたかっねぇジョン」
「ヌヌー」
ジョンを抱っこして一緒に首を傾げる。
軍服着用な私なんて超超超畏怖さが増し増しで、お揃いの飾緒とかサッシュをジョンが身に付けたらさぞ見ものだろうと思っていたのに。
まぁ企画だから仕方ない、ジョンの衣装を付けてあげて一足先に私とロナルド君だけでジョンの撮影会が始まる。
満足のいく写真が撮れた所で私達も衣装室へ呼ばれる。
そこに架かっていたのは黒の軍服。
へぇ、いい趣味してるね。
金色の飾緒が黒に映えてキラキラと輝いて見えた。
「これ俺んだって」
かちゃり、とその軍服をロナルド君が持っていく。
ほぅ、尚の事いい感性をお持ちのスタッフがいるものだ。
ざまぁwwwと笑うロナルド君に右ストレートをかまして反作用で死んだ。
さて、メインの私の軍服は、と視線を動かすと白の軍服、マント、そしてもう一着同色の軍服が目に入ってきた。
ロナルド君とお揃い、それもいいな、少しだけ耳が熱くなるのが分かったがそれは気付かないふり。
それに手を伸ばそうとして、スタッフに手渡されたのは
「セーラー??」
「それヒナイチのじゃね?」
これで合ってます、とスタッフ。
「…」
「おいドラ公…その、それも似合「可愛い!!」
セーラーを広げまじまじと眺めていた私に何か言おうとしてたロナルド君。
軍服じゃないのは些か残念であるが、それはそれだ。
自分にセーラーを合わせてロナルド君に向き合うと
「可愛くない?ジョンとお揃い!嬉しい!可愛い!」
くるり、と回ってもう一度セーラーを見つめる。
「可愛さ天井無しの私にぴったり!ここのスタッフ、やはりいい腕の持ち主だな、なぁ若造」スナァ
同意を求めただけなのになんで私殺された?
「全くまだ感性なるものを会得出来ないようだな若造。ここのスタッフの爪の垢でも煎じて、ってなんで君ちょっと泣いてるの?」
砂から戻りつつロナルド君をからかおうとしたら、何故か涙目のロナルド君。
なんで?意味が分からん。
「俺もお揃いが良かった…」
声ちっちゃ!
ロナルド君の銀髪を撫でながら私も君とお揃い楽しみだったよ、と伝えると嬉しそうに笑って鼻水を啜った。
可愛いなぁ、全くもう。
「因みにもう一着は…あ、お父様…」
うーん、この2人…いや、やめておこう。
ロナルド君も着替えに向かった所でジョンに向き合う。
「ヌヌヌイ!」
「そうだね、お揃い」
私とジョンの可愛さを存分に引き立ててくれるセーラーを持ってジョンと更衣室に向かう。
素早く着替えを済ませ、スカーフを綺麗に結んで更衣室を出る。
なんだ、まだロナルド君来てないじゃないか。
せっかくこんなに可愛い私を早く拝ませてあげたいのに。
ねぇ、とフラッグを持つジョンの頬を撫でる。
ヌヒヌヒと笑う私の可愛い使い魔にキスを落とすのと同時にかつん、と靴音が響く。
私を待たせるとはいい度胸だ若造め。
軍服着るのに手間取ったんでちゅか、と笑ってやろうと思ったのに。
「…っ」
「…おいクソ水兵なんか言えよコラ」
白と黒の正帽、黒の引き締まった軍服、帽子と制服にあしらわれる金の細工。
帽子から覗く煌めく銀色と空色。
制服には肩から深紅のラインも引かれ、より彼の端正な顔立ちが際立って見える。
着用している白の手袋から覗く手首。
白いベルトはラインを引き締める所か逞しい体を主張しているよう。
なにこれ聞いてない。
こんなにかっこいいなんて、聞いてない!
「ヌヌヌヌヌンヌヌッヌヌ!」
(ロナルド君似合ってる!)
「えぇ〜ジョンありがとう〜」
ジョンが褒めた事で表情をどろりと崩し近寄ってジョンは何着ても可愛いなぁ、と宣う。
ジョンに近付くという事は私にもゼロ距離だと言うこと。
間近で見るロナルド君。
いつもは纏わない正装に私の心臓がより早く鼓動を打つ。
「馬子にも衣装とは正にこの事」スナァ
悟られないようにと口走った台詞に飛んできた拳、即座に砂った。
上手い事ジョンをキャッチしたロナルド君は私を見下ろしながら少しだけ拗ねたように唇を尖らせた。
「…似合ってる…かっこいいよ。私のロナルド君」
「!!!」
砂のまま、正確には恥ずか死を繰り返しながら、ロナルド君へ賛辞を述べれば、みるみる顔を真っ赤に染めてロナルド君はへにゃりと笑った。
姿を戻しながら乱れたスカーフを直す私に影が重なる。
するりと、腰に手を回され引き寄せられた。
目の前には目を泳がせるロナルド君。
「その、あの、ドラ公も似合ってる、可愛い」
素直に向けられた言葉に若干砂りそうになったが、何とか耐えた。
だってこんなにも嬉しい。
「ありがと、ロナルド君」
伸ばした腕をロナルド君の首に絡めて顔を近付ける。
ちゅ、と軽い音を立てて彼の唇を奪ってやった。
硬直するロナルド君の腕の中で、私の可愛い使い魔がヌヤン、と顔を覆った。
(細っ…長っ)
(何それ褒めてるの貶してるの?)
(いやいやだってドラ公さんよ)
(何よゴリラ少佐)
(腰どした?)
(いつも通りだが?)
(足長くね?ブーツのせい?)
(いつも通りだが??)
(え、ちょ、鎖骨見えてんじゃんダメだろ)
(畏怖可愛いだろうが)
(お前のえっちなとこ見られるのやだです)
(突然の独占欲にドラちゃんちょっときゅんとしちゃうだろうが)
(お前…似合うな)
(どうした急に)
(…)
(黙るな)
(…)
(おい若造)
(…)
(今すぐ!その思考を!捨てろ!)
(ドラ公…)
(その!甘い声を!やめろ!)
(衣装買い取るから)
(脳内花畑め!)
(あとでしよ?)
(…)
(ドラ公…)
(…)
(…)
(…一回だけだからな)
(やった!)
ぐっちょぐちょになるまでシた。