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    昨日上げたかった礼音おたおめSSのなゆれお。
    2人は付き合ってる設定。

    昼間に上がったあの呟き見て、しばらくスペース猫になったあと、んなもん書かなあかんやんてなった結果。

    ##なゆれお

    礼音おたおめSS☕️🥢(今年もたくさん祝われたな…)
    明日提出するレポートやテスト範囲を確認して、家族から送られてきた誕生日メッセージに返事を送り終えると、ベッドで一息つく。
    あと1時間と少しで、誕生日である今日が終わる。今日はテスト期間中だったのもあって、あまりゆっくりは出来なかったけど、お昼に結人達から学食でお祝いされた。俺の誕生日を覚えていたことに驚いたし、嬉しかった。けど一番驚いたのは…。

    (あいつが来たの、ちょっと意外だったな。でも、……)

    てっきり結人と的場と七星くんだけかと思ったら、七星くんに手を引かれながら、那由多までお祝いのテーブルに来てくれた。終始機嫌悪そうだったけど、それでも途中で帰ったりせずに最後までいてくれた。

    あいつなりに、祝ってくれたのかなと自惚れてみる。だって本当にそうだったら…、なんか…。

    顔の熱が少し上がったけど、すぐにハッとしてそんなんじゃないと考えてたことを必死に打ち消す。

    (いやいや、別に嬉しかったとかじゃないし!その後の練習だって、特にいつもと変わらなかったんだから…)
    きっと、あいつはなんとも思ってないのかな。俺にとっては驚いたことだけど、練習でも結局何も話せないまま終わったし。何か話せば良かったのか。たとえば、そう。

    「お礼とか、言えばよかった…?
    いや、いらないか。うざがられるのがオチだし。あはは、は…」

    悪い癖だと自分でも思ってるけど、一度考えてしまったら、まあいいかで置いとけなかった。


    「うぅ…、明日だってテストあるのに…。」
    気付けば俺の足は那由多の部屋の前まで来ていた。他のメンバーも寝てしまってるのもあって、廊下は暗く寝静まっている。部屋からは何も音が聞こえてこなかった。

    (寝てるかな…。あいつだってテストやレポートあるし。それとも作曲してる…?)
    別に明日にしてもいいかなとも思ったけど、後に回したらずっと言わないままになりそうで俺が嫌だった。だが、せっかく部屋の前まで来たのに、ノックしようと上げた俺の手はなかなかドアを叩かない。
    (ああもう…!一言ありがとうって言うだけだろ!さっさと言って、さっさと寝る!)


    「人の部屋の前で何やってんだ。」
    「うわあっ!」

    うじうじする自分を鼓舞しながら、いざノックしようとした時、突然後ろから聞こえてきた声に間抜けな声が出る。うるさく脈打つ胸を押さえながら振り向くと、那由多が呆れたような目で俺を見て立っていた。
    「お、お前、なんで…っ」
    「コーヒー飲んでた。そういうてめえは何してる。用件あるなら手短に話せ。」
    「……」

    相変わらずむかつく態度に怒りたくなるのを抑えて、言おうとしていた言葉を伝えようと顔を上げて那由多を見る。本人を目の前にした瞬間気恥ずかしくなるのを、自分の手を握りしめて紛らわした。

    「あ、その…、ぁ、…ありがとう。」
    「…あ? 何がだ?」
    「だから…っ、…祝ってくれただろ。七星くん達と一緒に。」
    俺の感謝の言葉が何を指す事か理解すると、那由多は小さく舌打ちして俺から目を逸らした。
    「……授業終わりに突然七星に無理矢理連れ回されただけだ。」
    「あはは…、容易に想像できる。でも、俺はびっくりしたけど、嬉しかったから。

    ……、え…?」
    「あ?」

    あれ?俺、今、何て言った…? 嬉しかったって…、言っちゃった…?
    震える口に手を当てながら、那由多の方を見ると、那由多は少し目を見開いて俺を見ていた。

    何言っちゃってんだよ俺!お礼だけ言ってさっさと戻るはずだったろ!
    那由多を前に少し気が抜けた自分が不意に言ってしまったことにパニクりながら、那由多に今のは違うと訂正しようとした。
    「い、いや!違う!今のは、間違えて…っ!」

    「…間違いなのか。」
    「……え?」

    「訂正するほど、てめえは嬉しくなかったのか。そう聞いてる」
    「…──」

    静かにそう訊いてきた那由多は真剣な眼差しを俺に向けていた。向けられたその瞳に俺は少し身体の熱が上がるのを感じる。それは、俺が苦手な赤い色をしていた。苦手といっても嫌いという意味ではない。
    だって、その深い赤に見つめられたら。

    「…っ、おれ…、部屋にもど…、…っ!」
    「答えろ」
    その場を去ろうとする俺をドアに押し付け、互いの距離が近くなる。目を逸らせなくなる。瞑ることも許してもらえなくて、ちらりと那由多を見れば、あいつの深い赤とばちんと目が合う。

    苦手だ、やっぱり。だって見つめられたら、全部溢れてしまうから。

    那由多に言いたいことも、好きって、気持ちも。
    どうにかなってしまったんじゃないかってくらい溢れて、止まらなくなる。


    「…ほんと、は、…」
    「……」
    「…嬉しかった。すごく。だって…、来るって、思わなかった、から…。」

    少しずつ言葉を零すにつれて、赤くなっていく顔を隠すように俯いていく。
    ああもう!どうとでもなれ!そんなので喜んでるのか、みたいな呆れ顔を向けられようが知ったことか!
    そんな目で見てきた那由多のせいにしてやる!

    だが、那由多からは何も返事がなくてふと顔を上げる。

    「…ふっ、そうか。」
    (え、笑っ…──)

    小さくだけど、…笑った顔、久しぶりに見た。
    そう気づいて、思った事を口に出そうとした瞬間、キスで唇を塞がれる。
    「んぅ…っ」

    止めようと小さく開いたら舌が入ってきて、短いキスはさらに深くなる。熱くて、次第に甘くなって、小さな抵抗とばかりに相手の服の裾を掴むのが精一杯。
    俺の後頭部に置かれた那由多の手が、遊ぶように時々俺の髪を撫でて、それがくすぐったくて、ひくりと身体を震わしながらその刺激も受け入れる。

    ずるいんだよな、ほんと。
    人のこと言えないけど、好きだとか嫌いだとか言葉にはしないくせに、強引にしてくるキスも、撫でてくる手も優しくて。考える度に、おかしくなりそう。
    那由多しか、考えられなくなる。

    口付けから解放されて、那由多が少し離れれば互いの間を銀糸が伝う。
    「は…ぁ…っ」
    「……テスト終わるまで待ってろ」
    「…へ……?」
    「その欲しがってるツラ、朝にはどうにかしろ」
    少し濡れた俺の唇を撫でながらそう囁くと、那由多は動かなくなった俺を放置して、自分の部屋へと消えていった。
    那由多が言ってきた言葉をようやく理解し、顔を真っ赤にした俺は、那由多が入っていった後ろのドアに向かって悪態ついてやった。
    (誰が欲求不満だよ!!)


    「ったく、誰のせいだと…!」
    自分の部屋に戻ると、そのままベッドに突っ伏して横になる。那由多にお礼だけ言って戻ってくるつもりが思ったより時間が経ってしまった。明日の為にも早く寝てしまおうと身を捩らせた時だった。
    「あれ…? 何かポケットに…」
    パンツのポケットに何か固いものが入っている。取り出してみると、それは質の良さそうな布で作られたダークレッドの巾着で、開けてみたらシルバーのブレスレットが入っていた。
    「これ、俺が気になってたシルバーアクセ…!なんで…、」
    そのアクセサリーが気になってると話してたのは、確か練習帰りで、店の前に飾られていたそのブレスレットを見ていた時だ。近くには皆がいた。那由多も、その場に。

    思い返してみればあいつは、コーヒーを飲んでたと言ってたから両手空いてたし、片方の手はずっと上着のポケットに入ってた。あのキスの後には、その手はポケットから出ていた。

    全部分かってしまった俺は、ブレスレットを握り締めたまま布団に突っ伏す。
    「なんなんだよあいつ、ほんと…っ」
    那由多のくせに、なにかっこつけたことしてんだよ。
    翌朝どんな顔で会えって言うのさ。

    「ほんと…こんなの心臓に悪い…。」
    胸の奥も、身体も、何もかもが熱くて、唯一手の中で輝くプレゼントだけが、熱を逃がしてくれるように冷たかった。
    決めた。試験が終わったら、あいつの知らない所で着けてやる。こんな事してくれたんだから、そのくらいのお返しがあったっていいだろ。
    身につけるその時を楽しみにしながら、ベッドサイドにブレスレットを置いて、俺は布団の中へと入っていった。
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