初めてのキスは林檎味りぃん、と鈴の音が聞こえたと思ったら、祠?って言うの?そんな埃っぽい場所に居て、祭事をする時みたいな着物を着たお爺さん達が、鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしていた。
それから何やかんやあって、カムラっていう里で世話になって暫く経った。
物凄く大きいモンスターがワラワラ出てくる所だけど、ハンターって職業の狩人が倒してくれている。
そんなおっかない世界で里の人にお世話になりながらも、有難い事に、割と平和に暮らしている。
「やあ!何してるんだい?」
好きな人も出来た。
アイルーとガルクという猫と犬を撫でていると、快活な声が響いた。
明るく優しく強い、この里の教官職の人。
モテモテで想いは届きそうにないから、誰にも秘密の恋だ。
ぼんやりとしてました、と答えると彼は隣に座る。
「よっこいしょ」
ちょっとおじさんくさいなぁ、なんて思ってると、ガルクが鼻にキスをした。
くすぐったくて、ちょっと冷たい。
「初めてのキスはレモンの味ってね」
クスリと笑ってガルクにお返しのキスをする。
湿った鼻が冷たい。
「それ何だい?」
「私のいた世界で言われてた言葉です」
にゅっと目の前に差し出された紅い色。
コミツちゃんのリンゴ飴だ。
ウツシ教官にお礼を言って、ペロリと飴を舐める。
甘い味が口に広がって頬が緩む。
隣のウツシ教官はガリッと林檎を齧っていた。
硬い飴と林檎をよく齧れるなぁと、また飴をペロリ。
「初めての口づけはレモンって果物の味がするように甘酸っぱいって」
「ふぅん?」
フッと影が差して、ちゅ、と小さなリップ音を響かせた初めてのキスは、甘い甘い飴と少し酸っぱい林檎の味がした。
レモン味ではなかったけれど、
あ、本当に甘酸っぱいんだ。
なんて、全身に響く鼓動の音を聞きながら、ぼんやり思った。
ちなみに、セカンドキスは、うさ団子の味だった。