不幸な少年×新米へっぽこマジシャン子どもたちの楽しげな声が聞こえる。
住宅街の中にある簡素な公園。すべり台やブランコなどの一般的な遊具がある他は、面積がやや広いくらいが特徴のない場所。もちろん、ご多分に漏れずサッカーや野球などのボール遊びは禁止だ。
休日に賑わう程度のそこに少年はいた。一人でベンチに座り、光のない瞳を景色に向けている。年の頃は十歳を過ぎたあたり。皺だらけのシャツに痩せこけた身体。一目見ただけで親の目が行き届いてないことが分かる風貌だ。
警戒心の強い動物のように鋭い目つきをしている。まるでこの世のすべてが敵だと言わんばかり。
ぐるる、と腹が寂しげな音を鳴らした。もう一週間もまともな食事を取っていない。
母親――という彼を産み落としただけの女は、昔から在宅しているより外へ出かけている方が多かった。働きに出ているとは言っていたが、香水をぷんぷんと匂わせて着飾って出かけるので、別の理由があるに違いなかった。
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