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    なかた

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    なかた

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    出オチ

    #綴至
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    ##A3!

    茅ヶ崎至は足に何か挟んで寝たい!「綴、ちょっとこっちに来て」
     地方公演中の滞在先として、監督が押さえてくれたホテルの一室。ベッドの上に寝転がった至さんは、俺に背を向けたままそう言った。移動中の新幹線の中では、手から離れることのなかった携帯用ゲーム機も今は充電ケーブルに繋がれて、サイドテーブルに置かれている。小さく聞こえる音楽は、至さんが現在進行形でプレイしているスマホゲームのBGMだろう。
    「ちょっとって、これくらいですか」
     明日はマチネ公演があるので、夜更かしは避けたい。そう思いつつも、公演の後はいつも高揚感が残ってなかなか寝付けなかった。至さんと同じようにベッドに横なり、手持ち無沙汰に台本のページをめくっていた俺はシーツの上を這い進んだ。
    「それは言葉をそのまま受け取りすぎ」
     元の場所に台本だけを残して、ベッドの端までたどり着くと、振り向いた至さんは口元を緩ませる。
    「ツッコミ疲れで、たまには綴もボケたくなった?」
    「至さんも俺を疲れさせるボケのうちの一人っすよ」
    「てへぺろ」
     至さんがすっとぼけるのとほぼ同時に、流れていた軽やかなメロディが止まる。至さんの手元のスマホがスリープ状態になって、アプリが落ちてしまったせいだろう。急に静まり返った部屋で、俺はいつもの調子で言い返すタイミングを失った。
    「俺の隣、来てよ」
     平な水面をひとなでして波を立てるように、無音の空間に柔らかな声が響く。ひらひらと手招きされ、今度は至さんの意図を理解することができた。だからこそ、すぐには身体が動かなかった。
     
     俺が至さんと二人きりの部屋で、夜を過ごすのは今日が初めてだった。日頃、寮の二人部屋で寝起きしている。そんな俺たちはホテルの部屋割りを決める時も、自然に慣れた組み合わせに収まることが多かった。もちろん、例はある。ガチャの代打を頼みたい至さんが咲也に声をかけたり、漫才のネタ合わせがしたいという俺シトロンさんに俺が強制連行された時だ。それでも、他が先に決まって、俺と至さんだけが残ることるようなことは一度もなかった。
     なぜ今回、至さんと俺のペアになったのか。きっかけは数時間前。珍しく真っ先にカード型のルームキーを手に取った至さんと目が合ったことだった。その瞬間、何か言われたわけではないけれど、気づけば「俺もその部屋で」と意思を口にしていた。今まで、俺は部屋決めの時に自分から何か希望を伝えたことがない。だから、ホテルに到着した時点で眠そうな真澄以外は少し驚いた顔をしていた。しかし、目を離すと立ったままでも船をこぐ真澄を心配した咲也がルームメイト立候補すると、特に揉めるようなこともなく期間限定の部屋割りが決まった。
     至さんが選んだ部屋は、他の四人が泊まる部屋よりひとつ上の階にあった。ホテルのロビーで、空きがなくて全員同じ階を予約できなくてごめんねと監督に謝罪されたけれど、特に不便はなさそうだ。強いて言えば、至さんがどうしてみんなと離れたがったのか個人的に気になるくらいだった。
    「あの、至さん。なんで一番にその部屋を選んだんですか?」
     咲也に腕を引かれながらエレベーターを降りた真澄の背中がドアの向こうに消えると、かごの中に残るのは俺は俺たちだけになった。そこで俺は至さんに疑問をぶつける。
    「なんとなく」
     至さんは長い指で、ルームナンバーが記されたカードをくるくると回す。千景さんからマジックを教わった経験があるおかげか、その仕草も様になっている。
    「じゃあ、俺を選んでくれたのは?」
    「俺、あの時何か言ったっけ?」
     軽い気持ちで質問を重ねたことを後悔した。そっけない返事だが、至さんの主張に間違いはない。
    「いや……」
     言い淀む俺に代わって、エレベーターが目的の階についたことを知らせる音が間を繋いでくれた。
    「何も言ってないのに、気づいてくれて嬉しかったよ」
     ふっと微笑んで、至さんはドアの向こうへと歩き出す。先程の後悔を一瞬にして断ち切る優しい言葉をかけられ、俺は動揺してしまった。思考がストップして立ち止まっているうちにドアに挟まれかけ、俺は慌てて外に飛び出す。そのままの勢いで至さんの後を追うとあっという間に先程見たルームキーに記されていた番号と同じ番号が刻まれた扉の前についた。

    「ニューヨークに行くヨー!」
    「入浴っすね」
     入室するなり、スマホやゲームの充電器の設置に取り掛かる至さん横目で見ながら荷物を下ろしていると、咲也を連れたシトロンさんが大浴場に行こうと誘いにやってきた。チェックインする前に見つけたご当地メニューが食べられるお店で既に夕食をとっているので、湯船に浸かって長距離移動の疲れをとるというのは正しい判断だと思う。
    「俺はいつも通り朝、シャワー浴びるから。ほかてらー」
     そう宣言する至さんを残して俺は入浴を済ませ、枕元に置いていたリュックから台本を取り出した。ぴっちりと整えられたシーツに背中を預け、見慣れない天井を眺める。それにもすぐ飽きて、もう何度も読み込んだ台本のページを開いた。
     自分が書いた脚本なので、意識して文字を追わなくてもセリフは頭に入ってくる。それに加えて、登場人物の動きや表情まではっきりとイメージできるのは地道に稽古を繰り返したおかげだ。そうやって色々な場面を思い出していると、眠気はやってこなかった。こういう時だけは異常に寝付きがいい真澄が羨ましくなる。
     至さんにこっちに来てと声をかけられたのは、そうやって俺が時間を浪費していた時だった。

    「隣にって本当に隣に?」
     俺と至さんは一ヶ月前から付き合っている。キスも済ませた。だから、二人で一つのベッドに収まるのもおかしなことではない。おかしくはないんだけど、
    「さっきみたいに言葉通り受け取ってよ。はよはよ」
     躊躇する俺の気を知ってか知らずか、至さんはぽんぽんと空いたスペースを叩く。
     待て待て。恋人との同士、一つのベッドでって……つまりそういうことだろ?
     明日は寝坊できないとか、知った顔じゃないとはいえ隣室には人がいるとか、断る理由はいくつか思いついた。にも関わらず、首を横に触れなかったのは、エレベーターでの至さんとのやりとりを思い出したからだ。
    「……行きます」
    平均より背の高い男二人がシングルベッドから落ちないように並ぶと、自然と距離が近くなる。端正な顔立ちは間近で見ても隙がなかった。
    「おk。じゃあこっちに片足出して」
    「は?」
     至さんの予想外の指示に、自分でも予想外に裏返った声が出た。
    「寝る時、何か足に挟んでると落ち着くんだよね。寮では三番くじで当たったえんたくナイトくんBIGダイカットクッション使ってたんだけど」
    「あのクッション、変な潰れ方してるから枕にでもしてるのかと思ったら、そういう使い方してたんすね」
    「今夜は綴の足挟ませて」
    「なんでもいいなら、丸めた毛布とかで代用したらいいじゃないっすか」
     建設的な提案をしたつもりだった。けれど、至さんは納得してくれなかった。
    「試しに挟ませてよ。ここに足があるんだから」
    「そんな、そこに山があるからみたいな理屈で……」
     呆れる俺をよそに至さんはつま先を器用に使ってこちらの片足を引き寄せる。抵抗せずにいると、至さんとさらに密着する格好になった。
    「綴の足、あったか。いつものクッションよりいいかも」
     満足そうにそう言った至さんは瞼を閉じた。長いまつ毛が羽ばたくように揺れる。
    「おやすみ」
    「えっ、このまま寝るんっすか?」
    「ん、」
     至さんの答えは曖昧だが、少なくとも肯定なのか否定なのか、もう聞きだせるような状態でないのは確かだ。
     明日は寝坊できないし、知った顔じゃないとはいえ隣室には人がいるし、一瞬でやらしいことを想像した俺が悪い。それはわかっているんだけど。
    「このままじゃ寝れね~~!!」

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    TIRED綴至/ゴミ捨て場で見知らぬ男を拾うリーマン出不精な至にとって部屋から一歩も出ずに買い物ができるネット通販は渡に船、日照りに雨といえるようなサービスだった。しかし、困ったことが一つだけある。頻繁に注文すれば、その分だけ梱包用の段ボールが溜まっていく。そしてそれらの存在は、物が多く散らかった部屋をさらに無秩序にするのだ。ピザソースがついた口を拭くのに使ったティシュや飲み終わったコーラのボトルのように簡単には捨てられない分、面倒だが流石にいつまでも見て見ぬ振りはできない。同じ大手通販サイトのロゴが入った段ボールを解体し、紐でまとめるとそれを脇に抱えて至はマンションのエレベーターに乗り込んだ。
     ゴミ出しの曜日は確認した。あとは手にした段ボールをゴミ捨て場に置き、部屋に戻ればいい。その頃にはケトルに入れた水も沸騰して熱いお湯になっているだろう。食べ慣れた味のカップ麺で腹ごしらえを済ませたらあとは好きなだけゲームができる。そんなことを考えながらエレベーターを降り、マンションを出たところで至は我が目を疑った。ゴミ捨て場に人が捨てられているのだ。思わず、意識的に瞬きしてみたがコンタクトに異常はなく、目に見える景色にも変化はなかった。相変わら 1510